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電脳戦乙女ウイルスブレイカーズ  作者: ライナまさよし
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家にウイルスブレイカーズがやってくる!!

 「はあーー。今日も講義疲れた」

 

ここはごく普通の大学。

ここに通うごく普通のボブカットの学生が一人。一日の講義を終えて帰宅しようとしていた。

何の特別味もないステンレス製の通勤電車に乗り込み優先席になんの躊躇もなく座って大あくび。


「毎日毎日退屈すぎる」


ボソッと独り言を呟いて窓の中を流れていく景色をボーっと見つめながらもう一度大あくび。品性の欠片もない大口。しかし、乗客は気に留めないし本人も気にしない。


「なんか特別なことないかなあ。トラックに轢かれて異世界に行ってチートもらって無双するとか」


日常生活とは退屈だ。剣を振るうこともなければ魔法を使うこともない。そして、トラックに轢かれてもチートな能力はもらえない。ただ死ぬだけだ。地獄という異世界に行くことはできるかもしれないが。とにかく、現実は非情だ。


 そんなことを考えながら電車を降り、駅の改札を通って河川敷を歩く。

右に川。左に民家。今歩いているのは舗装されたアスファルトの道。

彼女の家の近所にあるこの道は二十年以上前からほとんど変わっていない。

変わったことといえば怖がりな父母たちによって河川敷にあった遊具がなくなったことくらいだった。


「昔はこの河川敷でヒーローごっことかやったんだよね。夏なのになっがいマフラー巻いて」


何を思ったのか彼女は道から河川敷に降りてベンチの上に立つとタッー!! と叫びながら飛び降りた。


「見つけたぞ! 悪の秘密結社の王、ワルキングめ!! ここで貴様を成敗してやる!!」


決まった!! と決めポーズを取ろうとしたその時、右足から違和感がした。生暖かいヌメッとした感触、悪臭。彼女は即座にわかった。それはまぎれもなく犬のアレだった。そう、犬の茶色い落とし物。


「きゃあああああああ」


叫んですっ転ぶとそこには先端に銀色の金属がついた長さ十センチ程度の黒いプラスチックの棒が目に入った。彼女はパソコンに明るくない。しかし、それが何であるか程度はわかった。


「USBメモリだ!! ラッキー! ちょうど切らしてたんだよね! これがケガの功名ってやつだよね」


さっきまで正義の味方ごっこをしていたと思えば、ねこばばに手を染める始末。悲しきかな、正義は無残に敗北したのだ。


 二十分ほど歩くとようやく家に着く。早速自分のマイクとカメラのついた自慢の最新型パソコンにUSBメモリを差し込み中身のデータを見た。パスワードはかかっていない、そんな杜撰なデータ管理。


「なにこれ?」


彼女はUSBメモリの中にamatherasu,zipというファイルを発見する。開くか、開かないか。いろいろな考えが頭の中を巡る。ウイルスではないか? もしかしてブラクラ? 有料サイトに登録されました、三十分以内に五億円払ってくださいみたいなのが出るのではないか? 


 しかし、彼女は好奇心に勝てない性格だった。ダブルクリックして解凍、そして完了すると同時にフォルダのウィンドウが閉じる。


「初めまして使用者ユーザー。私は弐式電子細菌除去用AI、通称ウイルスブレイカーズ。その壱号機

のアマテラス・ゼロよ。よろしく使用者ユーザー


突然パソコンから発せられる抑揚なき声、むしろ音、直後椅子から転げ落ちて人が床に倒れる音。無論、後者は彼女が発した音である。


「いきなり転ぶって私の使用者ユーザーはドジっ子なの? アホっ子なの?」


いきなり辛辣な発言である。のっけからこんな批判を受けるとは。しかし事実であることを彼女は理解している。だから否定はしない。


「ひどいなぁ、てかあなた誰よ!!?」


当然の質問である。いや、正確にはすでに自己紹介されているのだが、あれだけではあまりに難解だ。その言葉に対してパソコンの声の主は巨大なため息をしてから語り始める。


「私は使用者ユーザーのパソコンにいるウイルスソフトを駆逐するためにやってきたウイルス駆除AI

よ。あなたのパソコンの平和を守るためにやってきた正義の戦士なんだから」


「つまり、セキュリティソフトってこと? あと、私のことはミズキって呼んでいいよ。使用者って言うほどあなたより優れているとも思えないし」


イスを起て座りなおす。するとデスクトップ上に能で使いそうな鬼の仮面をかぶった黒髪ロングの少女がいた。着物、いや袴だろうか、腰に刀を付けた武士っぽい感じの子だった。


「わかったわミズキ。いきなりで悪いんだけど、ミズキのパソコンにウイルスがいるわよ。二十くらい」


「ええええ!!」


全然気が付かなかったと言わんばかりに驚くミズキだったがアマテラス・ゼロは黙って魔法陣を展開し呪文を唱える。


「不浄なるものよ、我が前に姿を現せ! ウイルスサーチ!!」


謎の呪文を唱えると展開した魔法陣がはじけ飛ぶ。


「コンピュータウイルス可視化の魔法よ。て、全部スパイウェアじゃない」


小型の昆虫のようなものが出てきたのを見て落胆のため息をつくアマテラス・ゼロ。腰につけた刀を抜ききれいな上段の構えを見せる。


「アマテラス・ゼロ! 推して参る!!」


ウイルスはほぼ無抵抗にズバズバ切り倒されていく。三十秒ほどですべてのウイルスが駆逐された。


「ふう、終わった」


全てのウイルスを駆除するとアマテラス・ゼロは刀を鞘に仕舞い座り込む。


「すごーい!!」


ミズキはただただ拍手。ふっふーんと鼻高々になるアマテラス・ゼロ。


「まあ、スパイウェアだったから無傷で切り倒せただけよ」


ニコニコうれしそうな顔で語るアマテラス・ゼロ。それに妹のような愛おしさを感じてしまうミズキなので

あった。

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