第7話 アメリカっ娘の気持ち
今回はステイシーの回です!
ご覧下さい!
「ステイシー。今日のお前はまるで天使みたいだ。」
「本当?嬉しい!タクトもすごくかっこいいよ!」
お互いに褒め合う俺とステイシー。今日の俺達はいつもと違う。なぜかって?答えは目の前の扉の向こうにある。その扉が開くと…
「タクー!最高に似合っているぞ!」
「ステイシーちゃんもなんてキレイなんでしょう!惚れ惚れしちゃう!」
そんな言葉を叫ぶ俺の両親と同様、他の大勢の人たちの祝福の言葉と共に俺達は二人並んでその真ん中を歩く。因みに服装は俺が正装、ステイシーは白いドレスだ。
そう、今日は俺とステイシーの一生に一度の結婚式である。
教会のバージンロードをゆっくりと歩きながら、俺達は牧師さんのいる祭壇に到達した。
「森拓人。貴方はステイシー・バーネットを妻とし、家族として幸福にすることを誓いますか?」
「誓います。」
俺がそう言い、今度はステイシーに牧師さんが語りかけた。
「ステイシー・バーネット。貴女は森拓人の妻として、家族として最善を尽くすことを誓いますか?」
「誓います。」
ステイシーがそう言い、教会内は拍手と歓声が沸き起こった。
「それでは、指輪の交換後、誓いの口付けをお願いします。」
俺達はお互いの指輪を交換し、互いに少し見つめ合いながら唇を重ねた。
そして拍手と歓声は更に大きくなる。
「ありがとうステイシー。俺、お前と結婚できて本当に良かったと思う。」
「私こそありがとう、タクト。タクトみたいな素敵な人と一緒になれて、この子も喜んでいると思うわ。」
そう言ってステイシーは自分のお腹をさする。そう、彼女のお腹の中には新しい命、俺達の子供がいるのだ。きっと俺達よりもずっと可愛い子になるだろう。
ステイシーの手を取り、俺達がもう一度バージンロードを歩こうとしたその時だった。
バァン!!!!
突然教会の入り口のドアが開き、誰かが入ってきた。そこにいたのは…
「ボ、寶藍?!」
寶藍は息を切らせながら、怒りと悲しみに満ちた表情で俺達を見ていた。教会がざわつく中、寶藍は俺達の所に詰め寄ってきて言った。
「どうして?どうしてステイシーと結婚することになっているの?あんまりだよタクちゃん!」
俺は困惑し、ステイシーは寶藍を睨みつけ、寶藍の目には涙が溢れている。
「私のお腹には…タクちゃんの子供がいるのに!」
「な、何ぃ!」
俺は思わず叫んでしまった。そしてざわつき始めた教会の客席から次第に野次と罵声が俺の所に飛んできた。しかもゴミや空き缶まで飛んできやがる。や、やめてくれえ!
「うわっ、痛い!待ってください皆さん!これは何かの間違いです!」
俺は叫びながら色んな物をぶつけられ、教会から逃走を図った。しかし…
「待ちなさいタクト!アタシとの幸せな生活はどうなるのよ!」
「このまま二人で幸せになるなんて許さないわ!お腹の子の責任取ってよ!」
ステイシーと寶藍に追いかけられる!どうしよう?もう逃げられない!すると…
「え…?」
突然地面に黒い影が現れて、俺を見る見る飲み込んでいく!
「な、何だこれは?くそっ、抜けない!」
どんなに藻掻いてもどんどん俺を飲み込んでいく影。
「うわぁっ!助けてくれぇ!許してくれぇ!」
最後にそう叫び、俺は影に飲み込まれてしまった。
「死にたくなーい!」
そう叫んだ俺は気が付くとベッドの上にいた。夢だったようだ。
「生きてる、生きてるよな、俺…?」
あたりを見回し、体を確認してみると、どこも変わったところは無かった。
「はぁ、また変な夢を見ちまった。」
この前の夢にしろ、今日にしろ、最近変な夢見すぎだろ俺。
この間夕方のニュースで国際結婚の特集をやっていたのを見たが、まさかその影響じゃないだろうな?
「まぁいいや!寝る!」
時間はまだ朝の4時だったので、気を取り直して再び眠りについた。
その日の午後。俺は午後の選択科目である欧米文化の授業ヘ向かった。この授業は同じ学部の違う学科の生徒と合同で受けるもなので、俺が所属する国際教養学科以外の生徒もいる。まぁ大半が英語科だが。俺が教室のドアを開けて中に入ると…
「ハロー、タクト♡」
英語科の女子と談笑していたステイシーが満面の笑みで俺に挨拶した。交換留学生は留学生向けの日本語の授業の他に俺たち学部生と同じ普通の授業も受けることができる。ステイシー曰く、日本でどの様な風に欧米文化を勉強するのか興味深いからという理由でこの授業を選択したそうだ。
「よぉ、ステイシー。」
俺も返事をし、隣に座る。昨晩の夢で若干恥ずかしくなったが、あれは夢だ!気にしてはいけない。
「タクト!さっきまでタクトに会えなくて寂しかったから元気なくなっちゃった!エネルギー頂戴!」
「うわっ!待てよ!どう見ても元気一杯じゃないか!」
ステイシーは俺をギューッと抱きしめてくる。こいつは俺に会うとなぜかすぐに抱きついてくる。最初は軽いハグ程度だったが、段々抱きしめる力が強くなっているのは気のせいだろうか?
「みんな見てる前で恥ずかしいよ、ステイシー。」
「見たけりゃ勝手に見てればいいじゃない。」
なんてことを言うステイシー。するとその横から英語学科の女子、沢村が話しかけてきた。
「本当に仲いいよね、二人!」
「まぁ、言うても元ホストファミリーだし。」
「でも二人を見てるだけで幸せになるわ。特にステイシーは森君の事が大好きだって伝わってくるし!」
「サワムラー、分かってる!アタシはタクトが大好き!」
大声でステイシーが叫ぶもんだから、周りの視線が自然と俺達に集中する。き、気まずい。すると沢村の友達の女子二人が…
「ステイシー、そんなに大好きなら…」
「森君にチューしちゃいな!」
はぁ!?お前ら何言ってんの!
「ば、バカ!お前ら状況わかってんのか?皆がいる前だぞ!授業前の教室だぞ!それに、ステイシーだってそんな無理矢理させられても…」
「アタシは構わないわ、タクト!」
「ス、ステイシー!」
「「「きゃぁ〜♡」」」
俺は頭が混乱し、女子三人は喜びながらこっちを見ている。ステイシーに限っては目を閉じ、ピンク色のキレイな唇を差し出してきた。どうすんのこの状況?
「森君早く!」
「男を見せて!」
「ステイシーにチュー!」
女子三人は俺達を煽る。みんなが見てる前で最高に恥ずかしかったが、黙らせるにはこれしかない!渋々ステイシーと唇を重ねようとした時…
「お待たせ!授業始めるから席に着いてね。」
絶妙なタイミングで先生が入って来て、俺は慌てて身を離した。間一髪セーフ。そして普段通り授業が始まったのだが、隣のステイシーは少し残念そうな顔で授業を受けていた。
授業終了後…
「あの先生本当に空気読めないわ…」
「まぁ、そう気を落とすなよ。」
教室を出て、俺の隣を歩くステイシーはブツブツと文句を言っている。
「家族だからもっと、一緒にいる時間が欲しいのに」
そう呟くステイシー。やれやれ、暫く機嫌戻りそうにないぞ。
「そうだ、ステイシー!」
「何?」
「今週の土日、どっか遊びに行くか!」
すると、ステイシーは青い目を輝かせて…
「ホント!行く!」
「分かった。賑やかなところと静かな所、どっちがいい?」
「そ~ねぇ。静かな所!」
「了解!」
何とかステイシーの機嫌を戻すために、楽しい所に連れてってやろう。そう思いながら、俺達は次の授業に向かった。
アメリカ人の女性はとても積極的と言いますね。
でも日本人男性にはそれを恥ずかしく思う人も多いんだとか。
次回はステイシーと拓人の心温まるお話にしようと思います。
お楽しみに!