第79話 送別会!
こんばんわ。
段々別れの時期が近づいてきましたね…。
3月ももう半分を過ぎ、春休みの終わりと新学期の開学が近付いてきた。この前春香の合格を知らされて、ホッと一安心したが、本当によくやったと思い普段お気楽モードのあいつを見なおしたよ。入学準備ちゃんとやってんのかなぁ、あいつ…。そんな時期のある晩、俺はある場所にいた。
「それでは、みんな揃ったみたいなので始めたいと思うでござる。」
幹夫がビール片手に前へと出てきた。そう、今は八王子駅近くの居酒屋にいるのだ。ただし、普通の飲み会でもサブカルチャー研究会の行事の打ち上げでもないもっと特別な意味を持っていた。
「ボラム殿とステイシー殿がもうすぐ帰国するでござる。だから、最後に日本での最高の思い出を残してもらいたいと思うので、みんなで楽しんでくだされ!」
そう、帰国間近の寶藍とステイシーの送別会だ。そう言うことなのでかなり多人数が参加している。健介先輩や夏美先輩と言ったサブカルチャー研究会のメンバー全員のほか、クラスメートの橋本や大沢に川口、英語科の沢村と井口、松山、あと俺のバイト仲間の秋本も来た。
「では、乾杯のあいさつをモリタク殿に行ってもらう。」
「俺かよ!」
幹夫の無茶ぶりに俺は思わず突っ込む!。
「こういうのはボラム殿とステイシー殿と一番仲が良かったお主が相応しかろう。」
「そんなぁ。まあいいけど。」
俺は立ち上がり、何とか言葉を絞り出す。いきなりすぎてグダグダ覚悟だが。そして本日の主役はやけにきらきらした目で俺を見てくるし。
「寶藍、ステイシー!一年間お疲れ様!最初会った時は久しぶりすぎてびっくりしたけど、俺はまた一緒に過ごせて楽しかったぜ。ありがとう!帰っても頑張れよ!それじゃあ、カンパーイ!」
「「カンパーイ!」」
一斉にみんな乾杯した。よし、上手くいったぞ。
「タクちゃーん!ありがとう!惚れ直しちゃったぁ♡」
「タクト!私も一緒になれて良かった!」
「ちょっとステイシー、くっつきすぎよ!」
「あなただってくっついてるじゃない!」
「私はボディタッチだけどあんたのは完全にハグよ!」
「悪い?」
「公共の場でふしだらよ!」
「私の愛情は中途半端じゃなくて本物よ!あなたと違ってね。」
「何ですってぇ!!!」
やれやれ、俺の背後でまた二人の口喧嘩が始まったよ。最後までぶれなかったな、この二人は。
「しかし、やっぱり寂しいよな。モリタク。」
健介先輩がハイボール片手に話しかけてきた。
「そうですね。俺らの中じゃ、いて当たり前の二人ですからね。」
「ああ。でも俺も最後の年に二人がうちの大学に入ってきてくれてよかったと思うよ。」
「健介先輩も卒業かぁ。寂しいです。」
「大丈夫だ。お前はうちの期待の星だ。頑張れよ、新副会長!」
健介先輩はそう労ってくれた。そんな先輩は4月から群馬のコンサルティング事務所に就職する。頑張ってほしい。
「「美味い!」」
「ちょっとあんた達、サラダしか食べてないじゃない!」
「「自分、あんまり重い物とか脂っこいものたくさん食べれなくて。」」
「だからそんなにヒョロヒョロなんでしょ!」
「ケーキ、それにパフェもおいしそう!」
「春菜ちゃん、いきなりケーキとパフェ頼むやつがあるか!」
「わぁっ!夏美先輩酒癖悪いですよ、もう!」
ウイスキーロックを一気飲みして暴走した夏美先輩が双子と春菜ちゃんに絡んでいた。ふぅ、絡まれると面倒なので別の席に逃げよう。
「よう、モリタク!」
「あいさつカッコよかったぜ、イケメン!」
橋本と大澤がいる席に来た俺。酒が少しは言っているのかやけにテンションが高かった。すると、川口が話し始める。
「尹ちゃんとお別れって寂しいわね。」
「ああ、時が早すぎた。」
川口と大澤が少しさびしさを交えた笑みを浮かべてそう言った。しかし橋本は…。
「だが、親衛隊は絶対に解散させない!体調である俺がいる限り不滅だ!ってなわけでモリタク!帰国しても尹ちゃんのことは頼んだぞ!」
「何をだよ?」
「連絡取ったり…たまに会いに行ってやれよ。」
「会いにいくのはともかく、連絡は取るつもりだ。」
フェイスブックやラインもあるしな。音信不通になることはないだろう。ふと横を見ると。
「「うぇぇぇぇん!」」
「な、何だ?」
横を見ると、女子3人が多泣きしている。英語科の沢村、井口、松山だ。
「ステイシーが帰っちゃうよぉ。」
「寂しいよぉ。」
「日本とアメリカ遠すぎるから簡単に会えないし…うわぁぁん!」
そうか、お前らステイシーと仲良かったもんな。やっぱり中がいい友達と離れ離れになるのは寂しいよな。
「森君!」
「どうした、沢村?」
「森君、あとはお願ね!」
「何をだよ?」
「決まってるでしょ!ステイシーを幸せにすんの!」
「スケールでかっ!」
酔っているのか?いきなりなにを言い出すんだ?更に井口と松山も続き…。
「そうよそうよ!二人は美男美女だから絶対お似合いだって!」
「ホストファミリーなんでしょ!だったらまた一緒に住めばいいじゃん!」
「待て。そんな簡単に言っていいもんじゃないぞ!」
男女の関係だしな。それに、そうなった場合はどちらかが母国を離れなきゃいけないし…あれ?俺は何を言っているんだろう?飲みすぎたかな?
「ふっ切れたようね。」
「何だよ、秋本。」
秋本がカシスオレンジを飲みながら笑顔で俺に話しかけてきた。
「だって、この前まで少しネガティブでダークな感じだったけどなんかすっきりしたように見えたから。」
「俺はいつまでも言われたことを引きずるやつじゃないからな。」
この前秋本が俺に一喝したの思い出す。あの後真剣に考えて、俺は一つの感情が無意識に出ていたのにようやく気付くことが出来た。
「あの時はごめん。いきなり私がキレちゃってみっともなかったわね。」
「気にすんな。ウジウジ引きずってた俺が悪いんだから。」
「じゃあ気持ちは決まってるんだ。」
「ああ。整理してはっきり分かったよ。だから本音を言うさ。まだ少し時間は残ってるんだから。」
俺は恥ずかしがりやで、人見知りが激しくて、少しネガティブに考えちゃう悪い癖があるし自分でもそれは分かっている。でも気付いた。それで人に寂しい思いをさせたり、苛つかせたりしたことがあったということが。だからもう逃げない。そう決めたのだ。
「良かった。前向きになれて。」
「前を向かなきゃ、進歩しないさ。」
秋本のほほえみに俺も自然と笑みが出ていたような気がする。最後は笑わないとな。
「タクちゃーん!それに秋本!そんな子供みたいなの飲んでないで焼酎飲みなよ!ほら!」
「フフフ、じゃあ飲んでやる!ほら!」
寶藍のリクエストに対して調子に乗った俺は渡された焼酎を一気飲み干した。うん、美味い。だけどだんだん酔ってリミッターが外れてきたような気がする。
「あ、ちなみにさっき私が一口飲んだやつよ!」
「そうか、それはありがたい!お前の綺麗な肌が手に入りそうだ!」
おお、とうとう暴走モードに入ったぞ俺。自分でも何を言っているんだと思った。寶藍は酔っているのか頬を綺麗なピンク色に染めていた。
「ボラムずるい!タクト、私のバーボンウイスキーもどうぞ!」
「よおし、頂こう!」
ステイシーが差し出したバーボンウイスキー(ロック)も飲み干した俺。だんだん楽しくなってきたぞ。
「美味いぞ、ステイシー!」
「でしょう?」
「うん、まぁお前が選んでくれたから余計に美味く思えたのかな?サンキュー、ステイシー!」
俺がそう言うとステイシーは頬に手を当てながら目を細めて喜んだ。こちらも酔っているのか顔が真っ赤だ。にしても、今日の俺は我ながらなんてくさいセリフを吐くんだと思った。そして周りはそんな俺達のやり取りを見てキャーキャー騒ぎだした(特に女性陣)。でもまあいい。今は一緒にいるこの時間を精いっぱい楽しもう。だって、こうして寶藍、ステイシーと一緒にいられる日は残されていないんだから。
こんばんわ!
最終回が近いのもあってか、拓人くん暴走してましたね。
引いてしまった方、いたらごめんなさい!
書けば書くほどもう終わっちゃうんだなって感情が出てしまい、私も少し寂しくなってきました。
もう本当に残りわずか!
是非最後まで応援お願いします!
それではまた次回!




