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第76話 Happy Days!

ハッピーバレンタインデー!

そして拓人君誕生日おめでとう!

テストもすべて終え、ステイシーの家族とともに観光をしたりと1月の後半から2月の頭まで結構忙しかった。そして、テストをすべて終えてようやく俺も春休みを迎える。正直この期間はバイト以外そんなにやることがないから結構暇な時でもある。まあ、去年に限っては時々留学生アシスタントの説明会に行っていたくらいか。あの時はいろいろ覚えることがあって大変だなと思ったけど、こうして寶藍やステイシーに会えたし良かったと思っている。2月もちょうど半分になるこの日、俺はいつも通り家で暇を潰していた。とはいっても全く予定がないわけではない。今日は特別なのだ。ピンポーン!

「あら、誰か来たわね。」

「早いな。誰だろう?」

家のインターホンが鳴ったので俺が出てみると…。

「やっほー、タク兄!」

「春香!来たのか!」

「だってぇ、従兄の大事な日なんだよ!来ない訳ないでしょ!」

「まあ、寒いからとりあえず上がれ。」

俺は春香を家に上げ、リビングに案内する。ニコニコしながら入ってきた春香を見てお袋も笑顔になる。

「おばさん、ヤッホー!」

「春香ちゃん、久しぶり!遠くから態々ありがとうね!」

「いえいえ、これもタク兄のためですから!」

エッヘンと胸を張る春香に俺は少し気になっていたことを聞いた。

「所でお前、勉強大丈夫か?国公立の二次試験もうすぐだろ?」

「大丈夫大丈夫!あんなの楽勝よ!勉強したし!」

「センターがまあまあだったのは聞いたけどさ、油断するなよ。」

「もう、タク兄ったら心配し過ぎ!あたしはそこまで馬鹿じゃないし!」

ぷぅ、と頬を膨らませた春香。そこまで言うなら信じてやるよ。従妹の自信というものを。それから数分後、またインターホンが鳴った。

「はーい!」

俺は再び玄関に向かい、ドアを開ける。すると大勢の見慣れた面子が現れた。

「モリタク殿、お待たせでござる!」

「タクちゃん!来たよー!」

「タクト、この間はありがとう!」

「拓人先輩!私の自信作、ぜひ味わってください!」

幹夫に寶藍、ステイシーに春菜ちゃんと言ったサブカル研究会の面々が現れた。俺はみんなを家に入れて座らせる。

「あ、皆さん久しぶりです!ボラムさんにステイシーさん相変わらず綺麗ですね!どうですか?タク兄とはその後進展はありましたか?」

「いや、特には…。」

「ない…わね。」

春香がいきなり寶藍とステイシーにそう聞いて、二人は残念そうにそう答えた。

「もう、タク兄ったら草食すぎ!すみませんねぇ、うちの従兄が。」

「それはこっちのセリフだぞ春香!いきなりなに聞いてんだ!」

「だって、せっかくカッコよくてこんな美人な女子留学生と仲いいのに色々もったいなすぎるのよタク兄は!」

「お前は何を言ってんだ…。」

「相変わらず仲がいいでござるね。」

俺と春香のやり取りを横で見ていた幹夫が笑顔でそう言った。それから高校の仲良しグループだった宏、健太郎、裕也が来た。

「お待たせ!」

「モリタク!」

「来てやったぜ!」

こうして大勢が家にやってきた所で、幹夫が口を開く。

「えー、全員がそろい、準備が整いましたので始めたいでござる。」

そう言うと、俺はテーブルに案内されてみんなが一斉に声を出した。

「「「「ハッピーバースデー、Dear森拓人!」」」」

そうしてみんながパンパーンとクラッカーを爆発させた。そう、今日2月14日は俺の誕生日でもあるのだ。そう言うわけで寶藍が是非誕生会をやろうと提案し、参加メンバーを集めたのだった。来ていない人からもメッセージをいっぱいもらった。健介先輩は「おめでとう、俺の卒業後のサブカル研は任せた!」というメッセージが来て、双子からは「おめでとうございます。今年こそ僕達の区別が出来るようになってください」と来た。はい、すいません。覚えます。

「拓人先輩!私がケーキ作ってきました!バレンタインデーでもあるのでチョコケーキですよ!」

春菜ちゃんは作ってきたというケーキを箱から取り出した。

「おお…!」

全員がそのあまりの完成度に息を飲んだ。スポンジとケーキの間には様々な果物が入っており、ケーキ全体を褐色のチョコクリームがムラなく包んでいる。そして、その上にはチョコレートで『Happy Birthday!』と綺麗な筆記体で書かれている。春菜ちゃん、君は絶対今すぐパティシエになった方がいいんじゃないか?

「さあ、モリタク殿。火を消すでござる!」

「おう。分かった。」

幹夫に言われて、俺はゆっくりふーっと火を消した。そして、みんなから拍手と共に「おめでとう!」と祝福を受ける。

「よし!そろそろみんなで食べようぜ!」

そう言ったのは宏だ。みんな席に着き、お袋の手作り料理に手が伸びる。うん、美味い。参加人数が多いこともあって結構豪華だ。ありがとうお袋。

「タクちゃーん!はい、これあげる!」

「おう、サンキュー!」

寶藍は俺にピンク色の綺麗に梱包された箱を渡してきた。なんだろう?

「開けてみて!」

「分かった!」

そう言って開けてみると黒地に赤いラインが入った手袋が出てきた。うん、なかなかかっこいいな。

「どう?赤と黒でツインズカラーよ!」

「ありがとう!洒落たデザインだし、使わせてもらうよ!」

俺は寶藍に礼を言った。そして次はステイシーからだった。

「タクト、私からもプレゼントよ!」

「ありがとな!」

ステイシーから受け取った水色のに梱包された箱を開ける。すると…。

「おお、これは!」

「前にいいなって言ったのがあったでしょ?だからプレゼント!」

「うん!これも使わせてもらうわ!」

ステイシーからのプレゼントは黒いハットだった。前に八王子のショッピングモールに行った時服屋で見つけたやつだったが、まさかプレゼントされるとは思わなかった。

「カッコいいタクトがさらにカッコよくなるわよ♡」

「ありが…ってオワッ!狭いんだから抱きつくなよ!」

「いいじゃない!今日はタクトの誕生日と同時にバレンタインデーよ!愛情表現しなきゃ!」

「なんか、色々勘違してないか?」

ステイシーからきつくかぐされて身動きがとりづらくなっている俺。その状況に寶藍が黙っているわけがなかった。

「ステイシー!特別な日に何破廉恥なことやってんのよ!」

「破廉恥なんかじゃないわ!バレンタインデー何だからこういう愛情表現も必要でしょ!」

「うっさいわね!あんたの下品さは最後までなおらなそうね!」

「ガサツで短気なあなたには言われたくないわ!」

「誰がガサツよ!淫乱!」

「お黙りなさい!ケバ嬢!」

俺が解放されたのはいいが、寶藍とステイシーはまたもや言い争いを始める。何かもう…いいや。

「まぁ、いつも通りでござるな。」

「ああ。やれやれった感じだし。」

「おめでとうでござる。プレゼントを差し上げよう!」

「おお、ありがとう!」

幹夫からのプレゼントは何だろう?そう言って開けてみると…。

「すげえ!」

「そうでござろう!仮面ライダークウガ、アルティメットフォームのフィギュアでござる!再現率は高かろう!」

「ああ、すげえよ幹夫!お前と友達でよかった!」

「何の何の!このくらい雑作もないでござる!」

俺は幹夫に感謝した。やっぱ平成ライダーと言えばクウガだよな!そして従妹の春香が声をかける。

「タク兄!私からはこれ!」

「おう、なんだろう?」

箱を開けてみるとそこには銀色のブレスレットが入っていた。

「綺麗だな、ありがと!」

「えへへ!占いグッズ屋さんで見つけたんだけどそれには縁結びの効果があるんだって!

「へえ。」

「早くどっちと付き合うか決めちゃいなよ!もし自分で決められなかったらブレスレットが選んでくれるわ!」

「だからなんでそうなるんだよ!」

「じれったくて見てられないからよ!タク兄は優柔不断すぎるのよ!」

「うるせぇ、おまえはしっかり勉強しろ!じゃないと大学落ちるぞ!」

「あー、受験生に落ちるって言った!いーけないんだ、いけないんだー!」

はやし立てる春香。そして、その後ろには調子こいて酒を飲み過ぎた結果酔っぱらった宏、健太郎、裕也(3人は俺よりも先に成人しているので飲んで大丈夫。俺だけ早生まれで今まで酒が飲めなかった)が俺を野次っている。

「よう、羨ましいぞ色男!」

「付き合っちゃえよー、もう!」

「これどようやく俺達に追いつけるな!イケメン!」

勝手なことを言う3人。お前らマジで今度覚えていろ!お袋は止めるどころか「あら、あら。うふふ♡」と笑ってこっちを見ているだけ。はぁ…。

「騒がしいけど、こういう誕生会もありか。」

俺はそう呟いた。寶藍とステイシーと日本で過ごせる時間はもう長くない。1年間という留学期間の終わりまであっという間に迫ってきていた。だから、最後まで楽しくみんなで過ごしたい。20の誕生日にそう俺は誓ったのだった。

こんばんわ!

タイムリーなバレンタインネタをかけて良かったです!

拓人君がバレンタイン生まれという設定にも生かすことが出来ました。

なんだかんだで連載を始めて1年以上経ちましたね。

最終回もだんだんと近付いてますが、最後まで応援よろしくお願いいたします!

それではまた次回!

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