第71話 驚きはテストの後で!
こんばんわ!
大学生の皆さん、テスト勉強頑張ってますか?
年が明け、満喫した正月を過ごせた俺。餅食ったり箱根駅伝見たり、親戚の集まりに参加したりとそこそこ充実した日々を送っていた。だが、そんな日ももう終焉を迎えてしまった。
「はぁ…。」
「憂鬱でござる。」
早朝雪が降る中、ため息をつきながら俺と幹夫は教室を目指してキャンパス内を歩いていた。そう、休み明けの大学生を待ちうける悲劇…期末テストである。
「何で新年早々テストなんか受けなきゃいけないんだよ。」
「全くでござる。そんな時にやっても実力なんて発揮できないでござろうに。」
愚痴愚痴言いながらも校舎に入る俺達。幸い校舎は暖房が効いているので暖かい。とりあえず凍死は免れそうだな。でも足取りは重い。
「モリタク殿ならテストは大丈夫でござろう。昨年もオールSでござる。」
「あれはたまたまだよ。2年生のテストだし、難易度上がってるだろうし。」
しかも今日のテストは必修科目で尚且つ落としたら留年確定だ。それだけは何としても避けたいからプレッシャーはあった。逃げるわけにもいかないので渋々登校し、教室に入る。既に何人か登校していたが、やはり雰囲気は完全に死んでいた。まぁ、そうだろうな。俺と幹夫も着席し、最後の悪あがきとしてお互いに教科書を読みながら確認作業をする。しかし、その時間が長く続く訳もなく…。
「よーし、みんな来てるな。じゃあ、テストを始めるぞ!」
先生が入ってきた。そして、早速テスト用紙が全生徒に配られる。
「はぁ、参ったな。」
俺は思わずそう呟いてしまった。もう、何でテストなんてものがこの世の中にあるんだろう?そんな疑問を抱いていても誰も答えてくれないし、テストがなくなるわけでもない。
「では、始め!」
新学期一発目、期末テストという戦いが始まったのだ。
テスト終了後。
「あ~…ようやく一日目が終わった。」
「これがまだ1カ月近く続くとは…酷でござる。」
何とかテスト初日を終えた俺と幹夫はくたびれた体を引きずって雪が降り積もっていたキャンパス内を歩いていた。はぁ、今日はこれで帰れるけどまたテスト勉強しなきゃ。
「1月の新作アニメも始まったでござろうに。」
「そうだな。録画したけど全然見てないや。帰ったら見よう。今日バイトないし。」
「たまにはこういう息抜きも必要でござる。」
幹夫とそんなことを話していると後ろから声がした。
「タークートー!」
走りながら雪を踏む音がどんどん近付いて来て、そして俺の背中に急に重みがのしかかってきた。
「うぁっ!ステイシー、急に乗るなよ!重いって!」
「失礼ね!女の子にそんなこと言うのはマナー違反よ!」
絹糸のような金髪をなびかせながらステイシーが俺におぶさってきた。やめて…。人によってはぎっくり腰の原因になるし。
「タクト、テスト終わったわ!難しかったけど…。」
「俺達もだよ。雪は降るしテストは難しいし、体力だけ吸い取られた1日だったわ。」
「某はもう空腹で目が回りそうでござる。寒すぎるし、このまま放置したら雪だるまになってしまうでござる。」
「「ププッ。雪だるま…。」」
幹夫の例えがあまりにも的確すぎたので俺とステイシーは思わず笑ってしまった。うん、言っちゃ悪いがお前雪だるまに似てるもんな。
「じゃあ、二郎行こう!二郎!」
「また?こないだも行ったじゃん!」
「賛成でござる。空腹と寒さにはうってつけでござる。」
ステイシーは立川にあるラーメン二郎へ行こうと提案した。健介先輩がラーメン二郎大好きで一度サブカル研究会のメンバー全員だ食べに行ったことがあるのだが、ステイシーが一番はまり、すっかりジロリアンになっていた。ちなみに完食したのは健介先輩、俺、ステイシー、幹夫と意外にも春菜ちゃん。寶藍は「こんなに食べられるわけないじゃない!」とぼやき、スープを残した。夏美先輩も半分くらいまで食べてギブアップ。そして下川の双子が少ししか食べられなかったのは言うまでもない。
「まあいいや。行こう!」
「さすがタクト!」
「急ぐでござる!このままでは凍死してしまう。」
寒いしお腹もすいているし、時間もまだ15時半だったので俺達3人は立川の二郎に行こうとした。その時、予期せぬことが起こった。
「おお、ステイシーじゃないか!会いたかったぞ!」
前から男性の声がしたのでその方向を振り向く。そこには大柄で中年の白人男性がしっかりと防寒着を着て立っていた。その隣には家族であろう中年の白人女性と高校生くらいの男の子がいた。ん、待てよ。どっかで見たことあるそ?
「お、お父さん?!」
ステイシーが珍しく声を張り上げながら驚いていた。そうだ!ステイシーの家族だ!俺もかつてホームステイしたときにお世話になった。しかし、どうしてこの時期にこんな所に?
「何でこんな所にいるのよ!お父さん!」
「久々にお前の顔を見たくなったんだ。だから母さんとジョージと話し合ってサプライズしようと思ってね。」
そう上機嫌な様子で話したステイシーのお父さん。この人の名前はランディさん。仕事はトラックの運転手をしている。
「私もあなたがどんな生活しているかちょっと心配だったの。でも元気そうでよかったわ。」
ステイシーのお母さんが胸をなでおろしながら安どした様子で話す。この人の名前はクリスティナさん。明るく、面倒見がいい人で俺もホームステイ中も結構相談に乗ってもらったこともあった。
「しっかし、こんなに雪が降るなんて聞いてねぇよ。バスケできないじゃん!」
そうぼやいたのはステイシーの弟、ジョージだ。ステイシーの3歳年下で現在高校生の彼はバスケが大好きなスポーツ少年である。俺もよくジョージの友達を交えて一緒にバスケを楽しんだもんだ。因みに顔はステイシーに似ており。なかなかの美少年である。
「もう、いきなり来たらびっくりするじゃない!連絡くれれば空港まで迎えに行ったのに。」
「それじゃあサプライズの意味がないじゃないか!まあ、中年オヤジのわがままを1日だけ許してくれ。」
「そうだぜ姉ちゃん。少しは感謝しろよ。」
お義父さんとジョージは笑顔でステイシーにそう言う。そして、ステイシーの家族は俺に気付いたのかこっちを見ながら話しかけてきた。
「おお、君はタクトじゃないか!久しぶりだね!」
「あ、お久しぶりです。お義父さん!」
「もう、硬いよ!パパァ~って甘えてくれる反応が見たかったのに。
「できませんよ!」
うちの親父にもそんなことしたことがない俺は思わず突っ込んでしまった。隣にいたお義母さんも笑いながら話す。
「タクト、久しぶり。元気そうでよかった。ステイシー、迷惑掛けてない?」
「いえ、大丈夫です。仲良くやってますし毎日楽しんでます!」
お義母さんはご機嫌な様子でそう言ったが、なんだかんだでステイシーの事が心配だったんだなと思った。今度はジョージが俺に近づいてきた。
「タクト久しぶりじゃん!しばらく見ない間にまたデカくなった?まだ俺、身長追いつけないじゃん。まあいいや、またバスケやろうぜ!バスケ!」
「久しぶりだな、ジョージ。いいぜ。後、ちゃんと勉強しているか?」
「安心しろよ。バスケで推薦とって大学行くつもりだから。」
「相変わらずだな、お前は。」
笑いながらそう返した俺。テスト終えた後の帰りにまさかこんな形でこの人たちと再会するなんて思いもしなかった。寶藍の時は事前に連絡あったしな。正直びっくりしたが、久々にお世話になった人たちの元気な姿を直接見ることが出来たのは嬉しかったし、まあいいか。俺は雪景色に染まった寒いキャンパス内でそう思ったのだった。
こんばんわ。
バーネット家とまさかの再会を果たした拓人君。
寶藍の両親の対面をやったのでステイシーの家族ともぜひ再会させたいと思っておりました。
さあ、再会した拓人君達はどうなるのか?
また次回をお楽しみに!




