第67話 イブ…何それ美味しいの?
こんばんわ!
クリスマス編、書いてみました!
12月24日といえば、クリスマスイブである。クリスマス本番は25日だが、なぜか日本では24日の方を重要視する人が多い。特にどういう訳かカップルにとって大切な日として定着してしまっている。クリスマス商戦恐るべし。で、そんな日に俺はどうしているのかと言うと、幹夫と一緒に立川にいた。
「楽しみでござるな!」
「ああ、待望の劇場版だもんな!」
クリスマスイブの午前中、立川駅近くの映画館で俺たち二人はチケットを買うために並んでいた。日曜日というだけあって、短いとは言え列ができている。今日俺たちが見る映画は「劇場版ビーナス大戦 イシュタルの死闘」という映画だ。俺と幹夫が好きな漫画、ビーナス大戦は昨年テレビアニメ化されて人気を博し、今年の冬にようやく映画化されたのだ。原作やアニメでも語られなかった謎を明らかにするオリジナルストーリーなのでぜひ見たいと思い、二人で来たのだ。翔太も誘ったのだが、彼女とディズニーランドでデートするとかで断られてしまった。まぁ、向こうも楽しんでくれればそれでいいのだが。
「早くポップコーンを買うでござる!」
「そう焦るな。まだ時間あるぞ!」
チケットを買い、幹夫は真っ先に売店へ向かった。俺達はポップコーンとジュースをそれぞれ購入し、シアター内に入った。まぁ、このアニメもどちらかと言えばマニア層の支持が高いだけあって、満員ではなかったが。
「バクバクバク…」
「まだ始まってないのにそんな勢いで食うか、普通?」
「何を言うでござるか!ポップコーンは温かいうちに食べるからいいのでござるよ!」
「まぁ、どっちでもいいけどさ。」
ポップコーンにガッつく幹夫にため息をつきつつ、俺は映画が始まるのを待っていた。そして、明かりが消え、いよいよ本番の上映が始まったのだ。
「いやぁ、素晴らしかったでござる!」
「ああ、最高だったな!」
「ヒロインの涙には心打たれたでござるな!」
「うんうん!主人公の最後の戦いもカッコよすぎて惚れそうだったわ!」
映画を見終えた俺達は、内容に大満足した状態でお互いに感想を言い合っていた。映画館を出るとお昼になっていたので、俺達はフードコートエリアに移動していた。何食べようかな?
「幹夫、何食べる?」
「某はガッツリしたもの…揚げ物とかを希望するでござる!」
「揚げ物かぁ、そりゃあたくさんあるだろうけど。」
フードコートエリアにはたくさんの店があるが、年末のしかも日曜日というだけあってどこも混んでいる。何とか空いているところを探していると…。
「モリタク殿、あそこはあまり並んでいないでござるよ!」
「ん、ホントだ!じゃああそこにするか。」
少し離れた所にカレー屋があり、そこはあまり混んでいなかったので入ることにした。すると、店の前に何か張り紙がされているのを見た。
「ん、何か書かれているでござるよ。」
「ホントだ!どれどれ…。」
そこにはこう書かれていた。
『12/24、12/25はクリスマス期間の為、カップルの入店をお断りしております。ご不便をお掛けしますが、何卒ご納得をお願い致します。店長。』
「ああ、八王子と吉祥寺にカップル入店禁止の店があるのを知ってたけど、立川にもあったんだな。」
「そう言えば、今日はクリスマスイブでござるな。」
「そうか。映画のことで頭いっぱいだったから忘れていたよ。」
「よく見ると、周りにカップルがたくさんおるでござる。」
「確かに…。」
周りを見回すと、主に若い男女が手を繋ぐ、もしくは腕を組んだ状態で歩いているのをチラホラと見かける。クリスマスにデートをするとこってそんなに憧れるものなのだろうか?
「まぁいいや。入ろうぜ。」
そう言って俺は幹夫とともに中に入る。店内は少しこじんまりとしており、俺達以外のお客は中年男性と30代位の女性がまばらに座って食事をしていた。どうやらペアで来たのは俺達だけみたいだな。
「いらっしゃいませ。二名様ですね?」
「はい。」
「かしこまりました。こちらどうぞ。」
女性店員が俺達を奥のテーブル席に案内し、案内された所に二人で腰を掛けた。
「ちょっとトイレ行ってくるわ。」
荷物を幹夫に見てもらい、俺は立ち上がってトイレに向かった。用を足して席に戻ろうとした時、厨房の方から何やら女性店員の話し声が聞こえて来た。
「ねぇ、あの男の子超かっこいいんだけど。」
「ホント、何でこんな日に来たんだろう?」
「あんなイケメンでクリスマスフリーってどういうこと?」
「性格に難ありだとか…。」
「ああ…。」
「あーん!せっかくのクリスマスなのに何で働かきゃいけないの!彼氏もできないし!」
「私もカッコいい彼氏欲しいし、二人でイルミネーション見たい!」
おいおい、勝手に性格破綻者扱いされてるよ俺。まぁ、恋人欲しいか欲しくないかは別でして、みんないくらなんでもクリスマスを意識しすぎてないか?そう思いながら席に戻り、幹夫と一緒に注文をした。幹夫はカツカレー(中辛)、俺はシーフードカレー(激辛)をオーダー。料理が来たので二人で食べ始める。
「おお、上手いでござる!スパイスが効いて、カツもしっかり揚がっており、病み付きになりそうでござる!」
「そうだな。こんなに美味いのに、なんで今まで知らなかったんだろう?これからも行こうかな!」
カレーの美味しさに感心しつつ、俺と幹夫は雑談を楽しみながら味わった。すると、隣のテーブルにいた男性が話しかけてきた。歳は30歳くらいだろうか?
「ねぇ、君達。」
「はい。」
「何でござるか?」
色白で短髪、セーターとジーンズを着込んだ男性はどこか心妙な雰囲気で続けた。
「君達も恋人がいないのかい。」
「はい。」
「そうでござるが。」
「大学生?」
「そうです。」
何か色々聞かれているけど、どうしたんだろう?とりあえず、この人に何か悪いことがあったのは分かった。
「そうかぁ…。でも僕と違ってまだ若いからいくらでもチャンスはあるさ。」
「一体何があったでござるか?」
幹夫が聞くと、男性はさらに溜息をつきながら話を続けた。
「僕はね。靴メーカーに勤めているんだけど、仕事が忙しくて今まで恋愛する機会がなったんだ。ようやく落ち着いた頃には同級生はどんどん結婚するし、自分もしたいと思っていたけど全然出会いもないし…。今年こそクリスマスは恋人と過ごしたくって前からいいと思ってた人に告白をしたんだ。」
「それでどうなったんですか?」
俺は思い切って聞いてみた。すると男性は今にも泣きそうな表情になりながら口を開く。
「振られたよ。はぁ、今年もシングルだよ。寂しい。」
「だ、大丈夫でござるよ!某もシングルだが、困ったことは無いでござる!」
「そうですよ!俺も今まで彼女いたこと無いですけど、気にしてませんよ。」
「今は平気でもね。これから30、40歳になって独身だと寂しさがわかるようになるよ。だから、君達は頑張って今のうちにいい人見つけてね。じゃあ、僕は帰るよ。」
男性はそれだけ言うと伝票をもってレジへ向かった。
「う~ん、今は恋人はちょっと想像できないでござるよ。」
「俺もだ。全然イメージ沸かない。」
二人でそんな話をしていると俺のケータイが鳴った。
「もしもし?」
「ハロー、タクト!」
「ステイシーか。どうした?」
「タクトの声聞きたくなっちゃった!今何してる?」
「幹夫と立川で映画見て今昼飯食ってる。」
電話の向こうのステイシーの声はなぜかとても嬉しそうだった。そのままステイシーは続ける。
「明日放課後時間空いてる?」
「別に予定は無いけど。」
「良かったわ!じゃあ明日の夕方5時に留学生寮に来て!幹夫もね!」
「そりゃあ、いいけど何をやるんだ?」
「それはね…あっ!ちょっと!何すんのよ!」
何やら向こう側でガタガタと音が聞こえた。雑音が止むと、別の声が出た。
「やっほー、タクちゃん!」
「寶藍か!お前もいたのか。」
誰かと思えば寶藍だった。寶藍はそのまま続けた。
「さっき聞いたかもしれないけど、明日の5時に留学生寮に来て!絶対よ!あ、要件はまだ秘密だから!」
「分かった。」
「ホント?!楽しみ!じゃあまた明日ね!アニョン!」
そう言って寶藍は電話を切ってしまった。
「何でござるか、モリタク殿?」
「よく分かんないけど、明日の5時に留学生寮に来いだって。お前もな。」
「某は構わんが、一体何でござるか?」
「さあ、分かんないけど明日分かればいいんじゃね?」
そうとしか言えないもんな。一体何があるんだろう?まぁ、お楽しみってことにしておこう。俺達はカレーを食べ終え、そのまま店の外に出た。しばらく本屋やゲームショップを回ったあと、外に出てみると…。
「おお、モリタク殿!雪でござる!」
「ホントだ!すげえ!」
「ホワイトクリスマスでござるな!」
「ああ、明日の朝が楽しみだぜ!」
今日はやけに冷え込んでいると思ったが、まさかの降雪だった。クリスマスらしい雰囲気になって来たかもしれない。その後も俺たちは雪や周りのカップルなどを気にせず、イブの休日を二人で楽しく過ごしたのだった。
こんばんわ!
デート回かと思いきや…幹夫君と二人で遊ぶ回でした。
ヒロインとのデートだとよくありそうなので、裏をかいて見ようと思いました。
さぁ、ステイシーと寶藍はなぜ拓人君たちを読んだのでしょうか?
答えは次回で分かります!
お楽しみに!




