第64話 突撃、隣のイケメン!
こんにちわ、11月最後の投稿です!
「義和さん、早くしないと始まっちゃうわよ!」
「まあ、そう焦るな!タク、お前も早く来い!」
「分かったよ!」
ある日の晩、親父とお袋が楽しそうにしている。俺も呼ばれてリビングに向かい、早速テレビを点けた。二人が張り切っているのには今から見るテレビ番組が大いに関係していた。
『突撃、隣のイケメン!』
そのタイトルコールで盛大に番組が始まる。これはあるバラエティ番組の人気コーナーなのだが、内容は番組が視聴者の身近にいるイケメンを探し、紹介するもので主に女性ファンが多い。
「さあ、今日もこの人気コーナーが始まりました!」
「大好評につき、既に第5弾目ですよ!」
MCの男性タレントとアシスタントの女性アナウンサーが軽快に進行を進める。
「今回はどのようなイケメンを紹介するんですか?」
「今回はハイレベルですよ!女性のみなさん必見です、どうぞ!」
ばぁん、とモニターに表示されたのは『八王子で発見、完全無欠の国際派イケメン大学生!』という文字だった。そして、VTRへと移行したのだった。
『私は今、東京都八王子市にある西東京国際大学に来ております!いやぁ、紅葉が綺麗ですね!こんな綺麗な景色をイケメンと見れるなんて楽しみで仕方ありません!』
俺がいつもに慣れている学校の風景をバックに、レポーターの女性タレントが楽しそうにトークを進めている。
「早速、そのイケメンに会いに行ってみましょう!」
女性は足早に大学の奥へと入って行き、近くにいた学生にインタビューをしながら回る。
「カッコいいですよ!」
「まぁ、凄いです!」
「会えばきっと惚れますね、あれは。」
「おお、そうですか!これは期待大です!」
学生達のインタビューを聞いた女性はさらに嬉しそうに中へと足を踏み入れる。そして、ある教室へと足を踏み入れた。
「あ、あの方でしょうか?」
教室に入った補正は何やら見覚えのある集団へ近づき、インタビューをした。
「あ、あの。あなたが森君ですか。」
「そうですが!」
「わぁぁ!いたぁぁ!凄いイケメンですよぉ!素敵ぃ!」
女性は黄色い声を上げながらはしゃいでいた。その頃うちのリビングでも…。
「タクよ!タクがテレビに出たぁ!」
「凄い!うちの息子がお茶の間に流れる感動的瞬間だ!」
「あんまりはしゃぐなよ、恥ずかしい。」
俺はため息をつきながら両親にそう言った。そう、今回紹介されるのはよりによってこの俺だったのだ。ことの発端は1か月くらい前に遡る。
ー11月上旬午後、大学内のとある教室ー
「お願モリタク!テレビに出てくれ!」
「藪から棒に何だよ、橋本?」
教室で幹夫と翔太と雑談していた所に橋本がそう言ってきた。
「突撃、隣のイケメンは知ってるよな?」
「知ってるけど。」
「俺、応募しようと思ってるんだけどお前に出てほしいんだ。」
「何で俺なんだよ?」
俺は橋本に不満げにそう言った。
「だってお前どう見てもカッコいいし、前回や前々回のは雰囲気イケメン的な部分もあったから真のイケメンであるお前が出たら絶対受けると思ったんだ。」
「持ち上げすぎだろ。つーか恥ずかしいわ!」
いきなりそんなこと言われても正直困るんだけどなぁ。全国のお茶の間に俺の顔がさらされるのも嫌だし。
「頼む!採用されたら投稿者、紹介されたイケメンに2万づづ入るから!お願い!」
橋本は手を合わせて頼み込んでいる。すると横にいた幹夫が俺に言う。
「良いではないかモリタク殿。ここは一肌脱いでみるのもいいでござるよ、大学のPRにもなるでござる。」
そして翔太も…。
「そうだぜモリタク!お前も2万もらえるんだからいいじゃないかよ。」
俺の事を説得してきた。こうして悩んだ末に折れた俺は番組への出演を決めたのだった。
『本日ご紹介するイケメンは西東京国際大学人文学部国際教養学科2年、森拓人君(19)です。早速彼の日常に密着してみましょう!』
そう言ったナレーションが入り、VTRは俺の普段の学生生活を紹介し始めた。まずは1限の英会話の授業からだった。俺は普段通り授業を受けていたつもりだったが…。
「凄いです…。ネイティブ並みの発音でカッコいい!イケメンで英語ペラペラなんてもう女性が放っておかないでしょう!」
女性はやたらハイテンションで授業をレポートした。少し恥ずかしかったが、特に授業に差し障りはなく、午前のレポートは終了して舞台は学食へと移った。
「いやぁ、森君。凄いですね!」
「そんなことないですよ。」
お昼を食べながら取材を受ける俺。横には幹夫と翔太と言ったいつものメンバーがいる。
「元々外国語は得意だったんですか?帰国子女とか?」
「いや、そうではないですね。高校の時、シカゴにホームステイしたことがあって。まぁ、英語は得意だったんですけど。」
俺は恥ずかしさから少しグダグダに応えてしまった。すると、横から幹夫が口をはさむ。
「モリタク殿は英語だけでなく、中国語と韓国語も得意でござる。」
翔太も続ける。
「勉強だけじゃなくて運動も凄いんすよこいつ!高校の時野球で国体出てますし!」
「お、おまえら。ハードル上げるなよ。プレッシャーで押しつぶされるわ。」
俺はそう言ったが、女性はさらに笑顔になって言った。
「ええ、凄いですね!ちょっと外国語で自己紹介してもらっていいですか?」
「う…じゃあ中国語で。」
俺はしぶしぶ自己紹介を始めた。
「大家好!我叫森拓人!现在在大学学习国际关系的事情!今天欢迎你来到我们的大学,还有我认识大家很高兴!谢谢!」
やりきった。そしてインタビュアーの女性は拍手しながら言った。
「きゃぁ!最高!こりゃぁもう非の打ちどころないですね!ウフフ…ラッキー!」
女性が嬉しそうにし、更にインタビューを続けた。
「何か趣味とかないんですか?」
「趣味ですか?まあ、アニメや漫画、特撮とか。」
「へえ、見かけによらすオタクなんですね。」
そして幹夫がスマホを出しながら言った。
「でも、コスプレもカッコいいでござるよ!モリタク殿、見せてもいいでござるか?」
「ああ、別にいいぜ。」
いまさら恥ずかしがることもないしな。幹夫はスマホに保存されている俺のコスプレ写真を見せた。
「おお、カッコいいです!やっぱりイケメンは何着ても似合いますね!」
そんなことを話していると、横から誰か来た。
「Hello,Everyone!」
ステイシーだった。ステイシーは俺の隣に座ると状況がよく理解できなかったのか俺に聞いてきた。
「タクト、これは何?」
「取材だよ、俺の。」
「モリタク殿はイケメンだからテレビの取材が来ているのでござる。」
「そうだぜ!わが友ながら尊敬するわ!」
すると、女性はステイシーにマイクを向けた。
「失礼ですが、留学生の方ですか?」
「そうです、アメリカから来ました。」
「森君とはお友達ですか?」
「はい、元ホストファミリーです!」
「さっき森君はシカゴでホームステイしてたって言ってましたけど…。」
「そうです!タクトが私の家にいたんですよ!」
ステイシーのその言葉で女性がさらに笑顔になる。
「ええ!ホストファミリーと留学先で再会して…しかもこんなイケメンが来てくれたんじゃ嬉しかったんじゃないですか?」
「もう最高です!タクトはすっごくカッコよくて優しいからもう大好きです!」
ステイシーは上機嫌でインタビューに答えた。すると、そこでナレーションが入る。
『このように、外国人留学生からもモテモテな森君。まさに、これこそグローバル級のイケメンということでしょう!』
少々オーバーな表現だが、まあいいや。こうして午後も順調に取材は続き、最後にマンツーマンのインタビューになった。
「どうですか森君?学校じゃモテるでしょう?」
「いいえ、モテません。女っ気ゼロです。」
「ええ、信じられない!じゃあ今彼女は?」
「いないです。いたこともないですし!」
「ちょっと私には理解できないんですけど…。」
「多分…原因はオタク趣味ですかね?」
「ええ、でもアニメ好きな女の子もいっぱいいますし、それにコスプレもすごくかっこいいのに…。」
不思議そうな女性に対し、俺はもう恥ずかしさに腹をくくりながらインタビューに答えて言った。
「最後に何か、将来の目標とかあれば教えてもらってもいいですか?」
「そうですね!将来は…世界に羽ばたけるような活躍が出来る男になりたいですね!」
「頼もしいお言葉ありがとうございます!以上、西東京国際大学からでした!」
こうしてVTRが終わり、画面はスタジオに戻った。
「いやあ、色々凄かったです。VTRの最中女性陣がみんなニヤニヤしてましたけどどうでした?」
MCの男性がゲストの女性タレント達に聞いた。
「これ、過去最高じゃないですか?」
「まだ19歳ですよね?将来楽しみです!」
「カッコいいからオタク趣味が余計残念に見えます。」
「私は友達になりたいですね!」
様々な意見があったけど、放送事故とかがなくてよかったと俺は思った。
「さあ、番組では皆さんの身近にいるイケメン大募集です!どんどんご応募ください!」
こうしてイケメンのコーナーが終わり、次のコーナーへと替った。
「いやあ、最高よタク!」
「流石は俺の息子だ!」
「まぁ、俺も失敗しなくてよかったよ。」
本当にそう思う。これで盛大にやらかしたら恥ずかしくて学校なんか行けるもんじゃない。
「これは永久保存版ね!」
「ああ、我が家の家宝にしよう!」
「だから、大袈裟すぎるっつーの!」
うからまくりの両親にきつい突っ込みを入れる俺。こうして俺のテレビ出演は賑やかかつ平和的に終わったのだった。
こんにちわ!
拓人君が言った中国語ですが「皆さんこんにちわ。森拓人です。大学で国際関係に関して学んでます。今日はうちの大学へようこそ、そしてお会いできて嬉しいです。ありがとうございました。」って言ってます。
さあ、もうすぐ12月です。
もっと面白くするんでこうご期待!
それではまた次回!




