第56話 負けたくないわよ!
こんにちわ!
大変お待たせいたしました!
2週間ぶりの更新です!
「ええっ?勝負?」
「あの女、そんなこと言ってきたの?」
週明けの月曜日、授業前の教室でそう声を上げたのは寶藍とステイシーだった。俺と幹夫は先日川越で遊んでいたときに偶然、読者モデルの撮影の仕事で来ていた滝澤エレーヌ・ユリナに出くわし、そして絡まれてしまった。滝澤はそのファッション誌と同じ出版社の雑誌企画である『楽しい学園祭はどこだ?大学編』自信と俺達の大学の両方に取材が来ることを理由にどっちの方が格上か勝負を挑んできたのだった。無論、あいつは自分が絶対に勝つと超上から目線で言ってきたが。
「ああ、言われたよ。実にくだらない。」
「某もそう思うでござる。」
俺と幹夫はそう呟いた。正直勝ち負けなんてすごいどうでもいいし、挑んだ所で一体何のメリットがあるか分からないしな。
「何言ってんのよタクちゃん。なんとしても勝ちにいくわよ!」
寶藍は目を吊り上げながらそう言った。おいおい、そう簡単に挑発に乗るなよ。お前の悪い癖だぞ。
「しかし、そいつの言い分はずいぶん気に食わないのは確かだ。確かに慶洋大学は一流の私立大で人数も多く、学園祭の完成度も中々だ。だが、俺達を田舎呼ばわりしたのはちょっと許せないかもな。」
そう言ったのは翔太だった。確かに西東京国際大学はアクセスがいいとは言えない山の上にあり、イノシシやタヌキ、ハクビシンが校内にしょっちゅう出没するようなド田舎の公立大学だ。だが俺はそう言う部分も含めてこの学校が好きだし、今思い出しても腹は立つな。まぁ、あいつが気に入らないのはいつもの事だけど。
「でも勝つって言ってもなぁ、西東京国際と慶洋じゃ雰囲気が違いすぎて比べようがないだろ。」
俺はそう言う。そもそも大学なんて学校それぞれ個性があるから雰囲気だけじゃ比較しずらいところもあるだろ。もちろん学園祭が楽しいってことが重要なのは俺も分かっている。だからこそ、来る側もやる側も楽しくならなきゃいけない学園祭を自己満足のための勝負に使うことには否定的にしか考えられなかったのだ。
「タクト、このままあの生意気な女に言われっぱなしでいいの?私は絶対に嫌よ!」
「お前もあんまりムキになるなよステイシー。俺もあいつにボロクソ言われたままなのは嫌だけどさ。」
ステイシーをなだめつつ、俺も自分の気持ちを口に出していた。
「で、慶洋大学の学園祭はいつでござるか?」
「10月20日から三日間。つまり俺達と丸被りってわけ。」
「なんと!」
俺の返答に幹夫もびっくりしていた。よりによって同じ日か。その雑誌の取材班がどういう日程で両大学を回るのかは知らないけど、俺は誰が来ようとお客さんには最高に楽しんでも会えるような学園祭にしたいと思っていた。
「あんな女に絶対負けないわ!」
「私も叩きのめしてやりたいわ!」
「絶対うちが一番楽しいんだから!」
「That`s light!」
「あら、今日も珍しく気が合うじゃない、ステイシー!」
「とにかくあのムカつく女の泣き顔を見たいのはあんたと同じでしょ、ボラム。」
「ふふふ、じゃあ頑張りましょう!」
「OK!」
寶藍もステイシーもかなりヒートアップしていたので喧嘩になりそうと心配していたが、同じ目標が出来たことで意気投合していた。これからもこうしてくれていれば俺も仲裁で疲れなくて済むので助かるんだがな。
「お前らの気持ちは分かったよ。だけど、一つだけ言っておおきたいことがある。」
俺はみんなにそう言った。そして一番言いたかったことを続けた。
「確かに学園祭は学校をアピールする上で重要なイベントだって言うのは俺も分かる。だからみんな必死になるし、お客さんだって楽しければこの学校に通いたい、もしくはここに自分の子供を通わせたいって思うひともいるよな。だけど、これだけは言わせてくれ。」
俺は少し息を整えてから再び口を開いた。
「目先の勝ち負けだけにとらわれて自分達、そしてお客さん達も楽しくするってことだけは絶対に忘れるな。それを忘れちまったら、お客さんにも全然楽しい雰囲気が伝わってこないぞ。双方が心の底から良かったって思えるようになって初めてイベントって言うのは成立するんだ。だから俺はそんな呪縛にとらわれずにいい学園祭にしたい。だから、頑張ろうぜ!」
俺は自分の気持ちを一気に吐き出すようにそう言った。すると、みんな笑顔になって…。
「さっすがタクちゃん!そうこなくっちゃ!」
「タクトの言うとおりね!とにかく頑張りましょう!」
「時間もあまりないようでござる。正直不安だが、最後まで全力を尽くさねば!」
「頑張れよ、みんな!お前らならきっとやれるって俺も信じてるから!」
全員が決意固め、俺達は学園祭迄日付が迫った中、改めて全力を尽くそうと誓ったのだった。
「よーし、みんないるな。授業始めるぞ!」
丁度そのあと先生が入ってきた。学園祭も大事だが授業も大事だしな。より結束が高まった中で俺達の一日はまた始まるのだった。
放課後。
「疲れたぁ。バイト行かなきゃ。」
授業をすべて終えた俺は荷物をまとめてバイト先へと向かおうとしていた。授業、学園祭、バイト、忙しいけどどれも頑張らないといけない。
「あ、タクちゃんやっほー!」
「おう、寶藍か。」
階段を降りた所で寶藍と出くわした。すると寶藍は笑顔で俺に聞いてきた。
「ねぇ、11月の末って暇?」
「うーん、別に今のところこれといった予定とかはないけど。」
俺がそう答えると寶藍は更に笑顔になって言った。
「あのね…11月の末なんだけど、パパとママとお姉ちゃんが日本に来るの。」
「え、マジで?!」
おお、これまたずいぶんと懐かしいな。俺も会いたいと思ってたところだし、是非一度挨拶したい。
「タクちゃんの事を話したら皆会いたがっていたわ。だから、来たら久しぶりに集まりたいって思って。」
「勿論だ!親父とお袋にも伝えておくわ!」
「ありがとう。所で今日はもう帰るの?」
「いや、今日はこれからバイトだ。」
「そう、頑張って!それと学園祭盛り上げよう!終わったらみんなと会う約束も忘れちゃだめよ!」
「安心しろ、忘れないから!」
「じゃあ、アニョン!」
「バイバイ!」
寶藍はそのまま笑顔で手を振りながら駆け足でその場を去り、俺もおじさんやおばさん、お姉さんに会えるとなると嬉しくなって、ルンルン気分のままバイト先へと向かったのだった。
こんにちわ!
前回は休載して済みませんでした。
もうすぐ学園祭本番なので全力で書きます!
寒くなってきたので、体調には気を付けてください。
それではまた次回!




