第54話 刻一刻と…
こんにちわ!
九月ももうすぐ終わり!
本格的に秋になってきましたね!
9月の後半という時期は大学生にとって実は結構忙しい時期である。下級生は後期の勉強、上級生は就職の準備など理由は様々だ。だが、俺達みたいな部活やサークル活動者には共通して忙しくなるイベントがある。そう、学園祭の準備だ。ほとんどの大学が10月位に学園祭を開催しているのでうちの西東京国際大学も例外ではない。各サークルは皆屋台や点字で使う材料や小道具の買い出し、装飾や看板などの作成に追われており、普段と比べて部活棟は緊張感に包まれている。言うまでもなく、それは俺達サブカルチャー研究会にも当てはまっていた。
「よし、みんな揃ったな!じゃあ、早速ミーティングを始めるぞ!気合入れて聞け!」
サブカルチャー研究会の会室の中で、健介先輩は備え付きのホワイトボードをバックに俺達にそう言い聞かせた。学園祭の開催は10月20日から三日間にわたって行われる。もう本番まで一カ月を切っているので正直言うとあんまり時間がないのだ。
「まずはモリタク、この間は会議出てくれてありがとうな!屋台の場所の変更に関しては俺が書類を出しておいたし、実行委員会の許可も正式に下りたからもう心配はないぞ!」
「ありがとうございます。」
とりあえず、俺がこの間先輩に代わって会議に出たことは無駄ではなかったようだ。よかった。足を引っ張らずにすんで。
「あと、展示に関してだが、進行具合はどうだ?」
「先輩。心配ご無用です。私は大分完成に近づきました。」
そう答えたのは夏美先輩だ。去年もそうだったが、この人はレジュメといった展示物に関するものをつくるととにかく早い。得意のパソコンを使い、Webデザイナーも真っ青になるくらいの完成度の展示資料を作成し、見に来た人たちを驚かせていた。今年も順調ってわけか。
「そうか。他のみんなはどうだ?」
「私はちょっと行き詰ってるいる感じですね。」
寶藍がそう答える。確かにはた目から見ていると発表内容こそはっきりしていいるものの、どうまとめればいいか迷うっているような感じはあった。
「そうか。まあ、本番までに完成させてくれればいいからあんまり焦らなくていいよ。」
「すみません。」
珍しく少し弱気な寶藍。俺も手が空いたら少し手伝った方がいいかな?
「他のみんなはどうだ?」
「私は…まぁ普通ね!」
そう答えたのはステイシー。確かにこいつはマイペースな性格の分あまり周りが気にならずに集中できるタイプだしな。
「「僕達は多分本番間に合うので大丈夫です。二人で力を合わせられているので。」」
下川の双子は息ぴったりでそう言う。先輩が前に「お前達は考えてることも同じみたいだから二人でやれ」とか言ってたけど、功を奏したようだな。
「私も平気です!」
「某も!」
「俺も…多分大丈夫です。」
春菜ちゃんも幹夫も、俺もそう答えた。特に俺は「今までの活動記録を展示しよう」といった張本人なので、これで自分が一番遅れてたら皆に下げる頭がないしな。頑張ろう。
「よし、展示は大きな問題はなさそうだ。困ってたりしたら俺でもだれでもいい。声をかけてくれ!こういう時にこそみんなでカバーし合うことが大事なんだ。」
先輩がみんなにそう告げる。流石会長だ。みんなの事を考えてくれると思うと有難くなるわ。
「それじゃあ、次は屋台に関してだな。」
話題は…時から屋台へと移った。
「屋台に関しては八王子祭りの時と同じで春菜ちゃん中心で回しているし、本番もそうするつもりだけど、どうだい春菜ちゃん?材料の手配は問題なさそうかい?」
「大丈夫ですよ先輩!私はこう見えても高校の学園祭のときも同じように屋台で食べ物を出しましたし、業者に初手がありましたから問題ありません。既に手配済みなので問題なければいっぱい用意できますよ!」
エッヘン!と春菜ちゃんは胸を張ってそう言った。さすが頼りになる後輩だ。八王子祭りですっかり自信を付けたのか、春菜ちゃんは屋台は自分を中心にしたいと自ら名乗り出てくれたのだった。うん、君が入ってくれたおかげで当分このサークルが安泰だと思うから安心だよ。
「よし!じゃあ八王子祭り同様、調理や接客は春菜ちゃんとモリタクをメインに。そしてステイシーとボラムは呼び込みもやってもらいたい!」
「え、いいんですか?八王子と同じ感じで?」
俺はポジション替えをしても別にいいと思ったので健介先輩に聞いた。
「美女が呼びこんでイケメンが接客するんだぞ!これに関してはうちのサークルがほかに負けるわけがない!それにあくまで中心ってだけなのでローテ回して適宜交替したりするから安心しろ。」
「某は展示オンリーがいいでござる。調理は苦手だし、ガスコンロの火の熱で熱くなるからあんまり好きじゃないでござる。」
「文句言うな幹夫。将来のためにもいろいろ経験した方がいい。」
ぼやく幹夫に対し、健介先輩はそう釘をさす。まったく、お前ってやつはものぐさだな。
「とにかく、あと1カ月ちょいで本番だ。展示や看板の装飾がある者は続きをやってくれ。終わってる者はまだ終わってない人を手伝うように!以上、作業開始!」
健介先輩はそう言って、他に皆は自分の仕事に取り掛かるのだった。
「うーん、ここはどう書こうかな?」
「どうしたんだ。何を悩んでるんださっきから?」
首をかしげている寶藍に俺は声をかけた。
「あっ、タクちゃん!なんかこう…最後がうまくまとめられないっていうか、これでいいのか分からないっていうか…。」
「そうなのか?うーんそうだな。とりあえず、お前が入って半年、イベントに出たりしたんだから自分の感想って言うかどう思ったかで締めくくればいいんじゃないか?」
「そうね。ありがとう!さすがタクちゃん、頼りになるう!」
「お、おい。手を離してくれよ。俺も作業したいんだし。」
「えー、もうちょっといいじゃない。タクちゃんの手を握るといいアイディアが思いつく気がするし!」
「俺は能力増幅器か何かか?」
はぁ、と俺が寶藍に手を握られたままため息をついていると、ステイシーが横から噛みついた。
「ちょっとボラム!タクトの邪魔してんじゃないわよ!いい加減手を離しなさい!」
「邪魔なんかしてないわよ!ねぇ、タクちゃん!」
「ま、まぁ…俺はもうすぐ終わるしそんなに迷惑だとは思ってないけど。」
そうフォローしたが、ステイシーは目を吊り上げながら続ける。
「進まないんだったらとにかく手を動かしたらどうなの?」
「動かしてるわよ!」
「手じゃなくて口が動いてるじゃない!」
「あんただってそうじゃない、ステイシー!」
「私はほぼ終わってるからいいのよ!」
まったく、こんな大事な時にもめるなよ。春からこんな光景ばかり見てきたせいか最近見慣れている感じがするけれど。はあ、俺も自分の仕事進めよう。ふと外を見ると、他の団体も看板や装飾作りに必死になっている姿がちらほら見えた。そうだよな。みんな学園祭で成功したい思いは同じだもんな。俺達も頑張らないと。そう思いながら俺達は作業を続け、時間はあっという間に過ぎていったのだった。
「よし、みんなだいぶ進んだようだな!今日はこれで解散だ!お疲れ様!」
「「「お疲れさまでした!」」」
なんだかんだで今日の活動が終わった。ふう、まだ完成じゃないけど思ったより進んだからよかった。このペースでやれば多分次の活動で完成かな?
「それと、もう一つ俺から言わなくちゃいけないことがある!」
先輩は真面目な顔でそう言った。はて、何だろう?
「この間モリタクに代わりに会議に行ってもらい、会社の面接を受けたんだがな。」
ああ、あの時の会社か。
「先輩、結局どうだったんですか?」
あれから何も言ってこないけど、そう言えばどうなったんだろう?
「昨日結果が来た。」
「どうでござったか?」
幹夫も気になっているようだ。もう秋だが、先輩が内定を持っているという話はまだ聞いていない俺達だったけど、めっちゃ気になるな。だが、幹夫の言葉の直後に健介先輩はなぜかしゅんとした表情で俯いた。
「え、まさか…?」
春菜ちゃんが悲しそうな表情でそう言った。どうしよう。気まずい雰囲気になっちまうぞこれ。
「なーんちゃって!見事内定取ったぜ!すげーだろ!これで俺も来年から社会人だ!」
先輩は笑顔でそう言った!おお、ついにやったか!
「「おめでとうございます先輩!自分のことのように嬉しいです!」」
とユニゾンで喜んだのは双子。
「もう、びっくりさせないで下さいよ先輩!」
「ごめんごめん、ちょっとしたジョークだから!」
突っ込む夏美先輩に笑顔で答える健介先輩。まぁ、俺も心配したけど。
「とにかくおめでとうございます先輩!」
「チュッカヘヨ(韓国語でおめでとう)!」
「Congratulations!」
春菜ちゃん、寶藍、ステイシーも祝福の言葉を送った。
「皆ありがとう!俺も頑張るから絶対学園祭成功させるぞ!」
「もちろんでござる!これはみんなの願いでござる!」
「はい、俺も全力でがんばります!」
先輩に俺と幹夫はそう答えた。よし、時間は迫ってるけど絶対にいいものを出して見に来てくれた人に喜んでもらうぞ!そうみんなの思いが一つになり、サブカルチャー研究会は学園祭に向けて一枚岩になったのだった。
こんにちわ!
実は自分の母校の学園祭ももうすぐ近いので是非行きたいと思っております。
学園祭の準備は大変ですがそれを乗り越えて成功させることで皆成長していくんだと思います。
もうすぐ10月です。
皆さんも良い秋をお過ごしください!
それではまた次回!




