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第3話 語るよマイメモリー

前回はドタバタした内容だったので、今回はゆったりした拓人君の日常を書こうと思います。

「お会計850円になります!ありがとうございました!」

留学生アシスタントの仕事を終えた2日後。

俺は去年からアルバイトしている駅ビル内の書店で普段通りレジ打ちの業務をこなしていた。

今は時給800円で週3日のシフトで働いている。やはり大学生ともなると金がかかる事も多いので、頑張って稼がないとな。

寶藍やステイシー達留学生は春休みの間は春期講習として特設クラスで日本語の授業を受けており、4月から語学力に応じてクラスが振り分けられ、本格的に授業をするそうだ。結構大変だな。

もうすぐ春休みが終わり、俺も4月から2年生へと進級が決まっているがうかうかしていられない。

勉強も難しくなるし、留年なんてかっこ悪くて絶対したくないからな。

そんなことを考えながら俺はその後も順調にバイトをこなし、帰る時間になった。

「お疲れ様でした、店長。」

「おう!お疲れ、森君!」

店を出て家に帰る途中、ポケットの中の携帯電話が鳴った。

「ん?誰だ?」

画面に表示される名前を確認すると、【村田宏】、高校時代の友達からだった。

「もしもし?」

『おう、モリタク!久しぶりだな!元気か?』

「最近色々あって疲れてるけど、まぁ元気だ!」

『そうか。ところでお前、金曜日暇か?』

「ああ、別に予定はないけど。」

『マジ?実は、健太郎や裕也達と集まろうって話になってたからお前もどうかなって?』

「お、マジ?行く行く!喜んで!」

『決まり!じゃあ時間と場所は追って連絡するから、じゃあな!』

「オッケー!サンキュー!」

そう言って電話を切った。

そういえば大学に入ってから去年の夏休みに1回会ったきりだもんな。楽しみだ。

期待に胸を膨らませて、俺は自宅へと戻ったのだった。


そして金曜日。

俺は待ち合わせの場所目指して歩いていた。

集合場所に近づくと…

「お、来た!おーい、モリタクー!」

宏が手を振って俺を呼ぶ。そして野球部のチームメイトだった鈴木健太郎すずきけんたろうと、吹奏楽部だった田村裕也たむらゆうやもいた。

「やっほー!お待たせ!みんな久しぶりだな!」

「モリタクこそ元気そうで良かった!」

「どうだ?進級できたか?」

「うるせぇ、お前と一緒にすんなよ健太郎!」

裕也はともかく、健太郎は勉強苦手だったからな。

「じゃあ、揃ったし行くか!」

宏に言われ、俺達は映画館を目指して歩き出す。

俺達四人は都立椿が丘高校国際科の同級生だ。椿が丘高校は元々普通科しかなかったが、その後国際科が新設された。俺達はその6期生である。普通科は難関大学を目指す奴が多く、国際科は普通科と授業自体はほぼ同じではあるが、どちらかと言えば英語力に重点をおいた専門課程に近いカリュキュラムをこなす。なので普通科に比べると偏差値が2〜3低い。

1年の秋には3ヶ月英語圏への留学が必修となっており、1クラス30人前後の小規模な学級となっている。

今はどうなったかよく知らんけど。

因みに俺ももちろん3ヶ月シカゴへ留学し、そこでステイシーに出会った。

そんなこんなで、映画館ヘ到着。今回みんなで見る映画は『劇場版:魔法戦士ブラックレオパルド』というアニメ映画である。

去年から放送が始まったこのファンタジーアニメは、その斬新なストーリーからカルト的なファンを獲得し、結構人気がある。

簡単にストーリーを要約すると、主人公のユーマはある日悪魔龍に襲撃を受けるが、その龍を退治しに来たモギィという名前の少女が戦闘中に落した剣を拾い、龍に立ち向かったところ、謎の魔法が発動し、ブラックレオパルドに覚醒。戦いに身を投じると言った感じだ。

俺達は席に座り、上映が始まると無我夢中でスクリーンに齧り付いていた。そして映画が終わり、外に出るともうお昼になっていた。

「いやぁ、面白かった!」

「まさかのラストだったよねぇ!」

俺達が映画の感想を語り合っていると、宏が口を開いた。

「よし、昼飯食ったらカラオケ行くか!」

「「「さんせーぃ!」」」

宏の提案に俺達は賛同する。こいつとは高1の最初に席が俺の前だったこともあり、よく話していた。部活は写真部である。国際科は1クラスしかない上に女子の方が多かったので、男子同士の結束は結構硬い。

昼飯を食べ終えた俺達はその足でカラオケBOXヘ向かった。フリータイムでアニソンを中心に歌いまくった。歌い過ぎて喉が痛い…

そしてみんな歌い終わって外に出ると、もう日が暮れていたので、そのままチェーンのラーメン屋で夕飯を食べることにした。

「しっかし、久しぶりにこんなに遊んだな!どうだ、大学は?」

ラーメンを啜りながら俺が聞くとみんな笑顔で答えた。

「結構楽しいぜ!」

「テストさえなければ。」

「あともう少し可愛い子がいればなぁ…」

高校卒業後も俺達はみんな地元に残っているが、大学は全員違う所に行ったので、中々会う時間が作れない。だからこそたまに会ったときにこういう話をすると盛り上がるのかもしれない。

「ところでモリタク。」

「どうした?裕也。」

「お前、彼女出来たか?」

「ブフォッ!」

丁度麺を啜ろうとしたタイミングでの思わぬ質問に盛大に吹き出した。ゲホゲホ…

「いきなり何だよ?!」

「いや、お前やっぱりメチャクチャカッコいいし、いい加減アタックしてくる女の子も出てきたんじゃないかなーって思って。」

「ねぇよバカ。」

「でも不思議だよな。こんなにカッコよくて頭よくて運動神経抜群で性格いいのに、高校時代からずっと女っ気無かったもんな。」

宏が言う。その通りだ。たしかに俺は高校1年から野球部不動の正捕手としてやってきたし、勉強もほぼ学年トップ。街を歩けば「あの子超カッコいい」と言われたこともある割に、人生を通して俺が仲良くできた女の子はほとんどいなかったように思える。

「そう言うお前らはどうなんだよ?」

「俺か?俺はこれから同じ学科の子に告白しようと思っている。」

そう答えたのは裕也。そうか、好きな人いたのか。頑張れ。

「俺は前に告白して振られたよ。これで18連敗じゃないかバカヤロー!」

健太郎が半泣きで叫ぶ。なんか気の毒になってきたよ。マリーンズの記録を抜かないように次は成功させてくれ。

「俺はこの前バイト先の子に告白して、今返事待ち。早く答えが聞きたい。」

「結局みんな誰とも付き合ってないじゃないか。」

とは言ったものの、みんなの行動力に俺は少し驚いていた。これくらいが普通なのか?

「あ、そうだ!」

俺は、一番言いたかった話題を切り出した。

「お前ら、高校1年の秋に3ヶ月アメリカ留学したのは覚えてるよな?」

「そりゃあ…」

「もちろん覚えてるけど。」

「それがどうしたんだ?」

「いや、うちの大学にこの子が留学してきたんだけどな…」

案の定みんな疑問に思っている。俺はこの前アシスタントをやった時に取った写真をスマホのディスプレイに出した。駅前でステイシーが写真撮ろうって言ってきて撮ったツーショット写真だ。

「すげー美人!」

「この子がどうしたんだ?」

裕也と宏が食いついてきた。

「この子、俺のホストファミリーだった子だよ。名前はステイシー。」

「ええっ?マジで?」

健太郎がびっくりしている。そりゃそうだよな。

「俺もびっくりだよ。出迎えた留学生の中にまさかホストファミリーがいるなんて…」

「で、お前に会ったときにその子はどんな反応したんだ?」

「会いたかったー!って言われてハグされた…」

「ワォ。脈アリじゃん、それ!」

裕也が冷やかす。まぁ、別にいいけど。

「お前らはホストファミリーと今も連絡は取ってるのか?」

「俺は去年クリスマスカードが届いたぞ。」

と答えたのは宏だ。マジか。

「俺は時々Facebookでやり取りしてるよ。」

「俺も。」

健太郎と裕也もそう答えた。

「もしかしてモリタク、ステイシーちゃんだっけ?連絡取ってなかったのか?」

健太郎が俺に質問する。

「帰国したばかりの頃は時々メールしてたんだけど、パソコンぶっ壊れてデータ全部飛んで、新しいのに買い変えてメールアドレスも変わっちゃってから全然連絡取ってないや。」

「駄目じゃん!」

裕也に突っ込まれる。すんません。

「でもせっかく再会出来たんだから、これを機にいっぱい遊んであげればいいじゃん!」

「そうそう!こんな美人と仲良くできる機会なんて滅多にないぞ!」

「そして付き合っちゃえ!」

「はぁ…」

何かわからんけど応援された。これでいいのか?

でも恋愛かぁ。女の子の友達も少ないのに、彼女の作り方なんて分からないな。

とにかく、2年生に進級後はもっと学生生活を楽しくするぞ!

そう心に決め、俺達は再び談笑に戻る。やっぱり友達とこうやって腹割って色々話すのって面白いな。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、みんながラーメンを食べ終えて店を出た頃にはもう夜空には満月が輝いていた。

今回は拓人君とかつての同級生のボーイズトークに視点を当ててみました。

書いているうちに僕も学生時代の同級生に会いたくなってしまいました(笑)

さあ。

次回はいよいよ新学期編!

2年生に進級後の拓人君と、メインヒロイン達の明るいキャンパスライフがスタートです!

お楽しみに!

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