第42話 私、参上!
こんばんわ!
いやぁ、暑いです(泣)
もう汗だくで辛いです!
でも書きますんでご安心下さい(笑)
7月ももうすぐ半ばを迎え、多くの大学生が前期のテストに向けて励んでいる。単位を落とすと進級に多大な影響が出るために、この時期は大学生にとって試練の時期でもある。そしてそれはここ、西東京国際大学でも同じだった。連日の猛暑で学生の多くは暑さと戦いながら教科書やノートを手放さず、テスト勉強と格闘している。図書室はクーラーがよく効き、涼める環境だけあって普段より利用学生も多くなっている。そんな勉強モードになりがちな山間のキャンパスに一人の女性がやってきた。女性は丁度キャンパスの入り口にあるバス停留所へと止まったバスから降り、木々が生い茂ったキャンパスへと降り立った。
「はぁ…。やっと着いたわ。」
黒いセミロングの髪をポニーテールにし、ぱっちりと開いた大きな二重瞼の目、やや日焼けした肌に白いTシャツとデニムのショートパンツを身につけた活発そうな少女は、背中のリュックから予め買っておいたミネラルウォーターを取り出し、手で顔を仰ぎながら水分補給をする。
「やっぱり遠いわね。こんな山の上まで毎日通うのはキツイかも。でも、キャンパスの風景は悪くないし、まぁ、いっか。」
少女は水を飲み終えるとバス停から校舎の方向へと歩き出す。しかし、バス停の所を抜けると木がなくなるので、強い日差しが少女を襲う。
「ああん、もう!山沿いだから涼しいと思ったのに!何なのよこの暑さ!」
この日の八王子の気温は33度。強い日差しに対して愚痴を言いながらも、少女はキャンパス内の散策を続けた。緑が多い西東京国際大学の校内はまだ夏休み前の平日、それもお昼前というだけあってそこそこ賑わっている。
「えーっと…着いたのはいいんだけど、どこにいるんだろう?連絡先聞くの忘れちゃったし。」
少女は戸惑いながら辺りを見回す。すると…。
「取り敢えず、あの人に聞いてみよっと!」
少女は駆け足で、キャンパス内を歩いている大学生のもとに駆け寄った。
「あの、すみません。」
「どうしたでござるか?」
声を掛けたのは、天然パーマに丸メガネ、アイドルアニメのキャラクターTシャツを来た侍言葉の男子学生だった。その学生とは、紛れもなく安西幹夫である。
「この人知りませんか?もし知ってたら呼んで欲しいんですけど。」
少女はスマホに映し出した写真を幹夫に見せた。その写真には色白に鋭い目をした、モデル顔負けの美少年が写っていた。その写真を見た幹夫は…。
「おお、これはモリタク殿ではないか!お主、お知り合いか何かでござるか?」
「あ、知ってるんですか?良かったぁ!」
そう言うと、その少女もパッと笑顔になった。少女が映し出したのはモリタクこと森拓人のものだった。
「モリタク殿は今一般教養の授業でござる。某は午後からなのでこれから昼食を共にし、一緒に午後の必修に向かうつもりなので、お主も昼食をご一緒するでござるか?」
「いいんですか?ありがとうございます!」
幹夫はその少女と共に学食へと向かうのだった。
「あー、疲れた。暑いしテストダリぃ。」
「どーせそう言ってまた満点取るんだろ、モリタク。」
午前の一般教養の授業を終えた俺と翔太は午後の授業に備えて腹を満たす為、学食へと向かっていた。早く行かないと混むし、急ごう。
「えーっと、幹夫はもうじき来るんだっけ?」
「ああ、あいつは授業午後からだしな。飯食おうって言ってたから学食で合流するつもり。」
翔太に俺はそう答えた。スマホをチェックすると幹夫から「もう着いたでござる。」とメッセージが届いてたので、学食ですぐに合流できるだろ。そして無事に学食に到着し、席を確保したところで…。
「あ、おーい!モリタク殿!」
すぐに幹夫と合流できた。俺と翔太は鞄を下ろしながら幹夫を呼ぶ。
「よぉ、幹夫!」
「幹夫〜こっちこっち!」
俺と翔太の声に幹夫が近づいてきた。幹夫も椅子に荷物を置く。
「モリタク殿!お主にお客さんでござる!」
「俺に?」
はて?誰だろう?アポ無しで俺にお客さんとか珍しいな。すると、そのお客さんとやらが、無駄に横幅が広い幹夫の背中からひょっこりと現れた。
「やっほー!タク兄!」
「ちょっ!え?何でお前と幹夫が一緒にいるんだよ?」
「この子が迷っているときに某に声を掛けてきて、連れてきたでござる!」
「そ、そうか。わざわざ済まなかったな。幹夫。」
俺は幹夫にそう言う。そして俺はその客人に話しかけた。
「春香。来るなら連絡してくれよ。声かけてくれればいつでも相手してあげるのに。」
「いやぁ、びっくりさせようと思って!それにタク兄のLINE知らないし。」
「そういえばそうだったな。まぁ、腹減ったろ。一緒に飯食おうぜ!」
「うん、ありがとタク兄!」
俺は翔太と幹夫と共に客人の女の子=春香を引き連れて食券を買いに行った。
注文を終えてメニュー
「春香。こいつは俺のクラスメートの高木翔太。そしてお前を連れてきてくれたのは同じく俺のクラスメートの安西幹夫だ。」
「よろしく。俺は高木翔太。モリタクの友達だよ!」
「某はモリタク殿と仲良くさせてもらっている安西幹夫と申す!暑い中遠くまでご苦労でござった!」
翔太と幹夫がそれぞれ自己紹介をし、俺は春香に話を振る。
「こいつは俺の従妹の栗原春香だ。春香。自己紹介しろ。」
「はーい!」
春香は元気よく手を挙げながら立ち上がり、自己紹介をした。
「はじめまして。タク兄の従妹の栗原春香です!東京都江東区の亀戸から来ました!今は千葉県市川市の北総学院高校3年生で部活は吹奏楽でトロンボーンやってます!タク兄がお世話になってます!」
春香は俺のお袋の妹の長女で、現在高校3年生。歳も近く、家は少し遠いけど主に親戚の集まりの時によく一緒に遊んでおり、一人っ子の俺にとっては本当の妹のような存在だ。昔から活発でたまに鬱陶しく思う部分もあるけど、人当たりもよくみんなから好かれやすいタイプだ。それにしても、このクソ暑い日に亀戸から八王子の郊外まで来るとは、行動力の凄さは相変わらずだな。
「にしても春香。今日平日だろ?授業バックレた訳じゃないよな?」
「失礼ね!今日は創立記念日だから休みなの!」
「ああ、そうだったのか。悪ぃ悪ぃ。」
まだ夏休み前の筈なのに、なんで何もない平日日中に高校にいないのか疑問だったが、そういう事なら納得いった。
「春香ちゃんだっけ?モリタクに用があるって聞いたけど、今日はどうしてここに来たの?」
翔太が聞く。それは俺も知りたかった事だったし、丁度いい。
「タク兄、今日って忙しい?」
「いや、この後は午後に授業が一コマあるだけだし、サークルも活動ないから暇だけど。」
俺がそう言うと、春香は急に両手を合わせて頭を下げてきた。
「お願いタク兄!少しでいいから大学を案内して!」
「ど、どうしたんだよ急に?」
俺が聞くと春香が話し始めた。
「私、今年受験じゃん?それで色々どの大学にしようか考えてたんだけど、タク兄の学校も面白そうだしちょっと興味湧いたから見てみたくなったの。」
「何だ、そんなことか。一応、オープンキャンパス来週にやるけど。」
俺はスマホから大学のホームページへアクセスし、オープンキャンパスの日程を表示して春香に見せる。
「私も調べたわよ。でもその日野球部の応援行かなきゃなんないから無理よ。だから今日来たの。」
「そうだったのか。別にいいぜ。」
「ええっ?いいの?」
俺がオッケーすると、春香は顔を上げてでかい目をさらに剥きながら聞いてきた。
「うん。せっかくだし、俺の次の授業から見ていけよ。その後は暇だから色々案内してやる。」
「本当?タク兄サイコー!ありがとー!」
春香は嬉しそうにバンザイした後に、食べかけのカレーライスを一気にかき込んだ。
「ゲボッゲホッ…。」
「あ〜あ、一気に食うからだよ。」
俺はむせた春香にそう言う。
「ごめん、水持ってくるわ!」
春香はそう言うと、空になったコップを持って給水機へと向かった。
「モリタク殿。こう見ると、本当にいい兄上の様でござる。」
「よせやい、照れるわ!」
俺は幹夫にそう言う。
「なんか、モリタクの新しい一面を知ることができた気がする。」
「そうか?俺と春香は基本あんな感じだぞ。」
翔太に説明した所で、春香が水を持って戻ってきた。
「あー、苦しかった。じゃあ、食べ終わったらよろしくね、タク兄!」
「ああ。この後の授業の先生いい人だから、多分春香のことも歓迎してくれるはずさ。」
昼食を食べ終えた俺達は、そのまトレイをも片し、授業が行われる教室へと向かったのだった。
俺達は教室に入ると、それぞれいつも座っている席についた。因みに春香は俺の隣に座っている。うちの学生はゆるくておおらかなやつが多いせいか、一人増えたところでみんなあまり気にしていないようだった。ただ、橋本は興味を持ったのか色々聞いてきたので春香のことを紹介した。その時の橋本の目が少しいやらしく見えたのは…恐らく気のせいだろう。うん、間違いなく気のせいだ。そう信じたい。そう思っていると、先生が入ってきた。
「Hello、Everyone!」
そう言ってハイテンションで教室に来たのはジョンソン先生だった。ジョンソン先生は英会話だけでなく、必修科目であるこの国際教育論の授業も持っている。余談だが、寶藍とステイシーはこの時間は留学生用の日本語の授業があるので今は俺達と一緒じゃない。
「Oh,モリタ君!そちらの女の子はどなたですか?」
先生がそう聞くと、俺の隣で春香がクスクスと笑い始めた。
「ププッ…タク兄の事モリタ君って…ウケるんだけど。」
「おい、あんまり笑うなって!」
俺は恥ずかしくなったが、取り敢えずその恥ずかしさをこらえながら春香を紹介した。
「あー、この子は俺の従妹の栗原春香です。来年この大学の受験考えてて、見学したいって言ってたんで連れてきました。」
「初めまして、先生!栗原春香です。ちょっとの間だけお邪魔します。」
俺が紹介し、春香も挨拶する。するとジョンソン先生は笑顔になって言った。
「Wao、そうでしたか。春香さん。ここはグレートな学校ですよ!ゆっくり見学していって下さい!」
「はい、ありがとうございます!」
「モリタ君もしっかり案内してあげて下さい!」
「はい。」
「それでは授業を始めます!」
先生はがそう言うと、いつも通り陽気で愉快な授業が始まった。
「それでは今日の授業はここまでにします!See you again!」
無事に授業は終わった。それに合わせて先生や他の学生たちも教室を後にする。
「某はこの後あと2つ授業があるので行くでござる。」
幹夫がそう言った。そして翔太も…。
「俺もこの後彼女と約束あるからまたな!しっかり案内してあげろよ、モリタク!」
「分かってるって!」
授業が終わり、俺は約束通り春香に学校を案内する事になっている。春香はごきげんな様子で俺の横に立っていた。
「タク兄、あの先生授業面白かったね。ありがとう、見学させてくれて!」
「いいってことよ。」
俺が春香にそう言うと、春香は幹夫と翔太の方を向いて言った。
「安西さん、今日はタク兄の所まで案内してくれてありがとうございました!高木さんも仲良くしてくれてありがとうございます!」
「いえいえ。これくらいの事、某にとっては簡単な事でござるよ!」
「春香ちゃん、こちらこそこんな郊外の大学まで来てくれてありがとう。この後も楽しんでね!」
「はい!」
幹夫と翔太も春香に優しくそう言う。そして二人はそれぞれ次の目的の場所へと向かっていった。
「行こう、タク兄!早く案内して!」
「よし、行くか!最初は…あそこから行こう。」
俺は春香を連れて歩き出し、森拓人の愉快な(?)学校案内が始まったのだった。
こんばんわ!
新キャラ登場でした。
今回のキャラはユリナのような敵対キャラじゃなく、味方キャラでした。
今回はヒロインズは登場しませんでした。
楽しみにしてた人、ごめんなさい!
次回は学校見学の続きです!
面白くかけるよう頑張りますんで、よろしくお願いします!
それではまた次回!




