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第41話 やっぱり一緒にいたくて…。

こんにちわ!

季節は7月、作中でも7月突入です!


季節はとうとう7月になり、本格的に暑さが日本列島に襲いかかる。テレビを点ければ毎日ニュースで最高気温更新だの、熱中症に注意などの言葉を聞く。俺の地元、日野及び大学がある八王子地区も例外ではなく、毎日うだるような暑さで参りそうだった。教室にはクーラーがあるので授業中は何とかなるが、通学時の移動が本当にキツい。道を歩けばサウナのような熱が俺を襲いかかり、クーラーが効いているはずの電車内も混雑でエアコンが意味をなさなくなっている。俺は小学校から高校まで夏場は野球の練習をしていたので暑さに弱いわけではないが、ものには限度がある。今年は異常なほど気温が高いので、いくら暑さに強い人でも間違いなくバテるだろう。家にいる時も、クーラー無しでは生活できなくなってしまった。寝るときもクーラーをつけっぱなしでないと暑さで寝不足と熱中症の最悪なダブルパンチを食らうだろう。そんなある日の午前、俺はパッと目が覚めた。

「うう〜ん、今何時だ?」

そう言いながら時計を見ると、時計は午前8時半を表示していた。

「もう一眠りするか。どうせ今日暇だし。」

俺はそう言いながら、再び布団の中に潜り込む。今日は土曜日で授業もサブカル研究会の活動も無い。最近色々忙しかったから、たまにはダラダラするのもいいだろう。再び眠りについて夢の続きでも見ようと目を閉じてそのまま俺は仰向けになった。段々と意識か遠のいて、また眠りにつく俺。夢を見ているかまたは現実なのか分からないが、頭の中は完全に寝ぼけている状態だった。そんな状態が暫く続いた時、ふと耳元に声が聞こえた。

「朝だよ!起きて!」

女性の声だ。お袋が、あるいはアラームのアニメキャラの声なのか判断できないほど寝ぼけていたが、誰だかわからないまま俺はその声に返答する。

「う~ん、うるせぇ…。もっと寝かせてくれぇ…。」

そう言い返したが、その声は「はぁ…」とため息をついてから再び俺に話しかける。

「起きてよ!ねぇ、天気いいんだからいつまでも寝てないで外に出なさい。」

声の主は今度は俺の体を揺すってきた。なんだかめんどくさくなった俺は、狸寝入りを決め込み、声が聞こえなくなるのを待ったのだが…。

「もう!いい加減起きなさい!私が起こしてあげてんのに!」

「ぐへぇ!」

怒鳴り声とともに俺の腹にものすごい衝撃が走った。痛え!これはジャンプしてから踏みやがったな。誰だ、こんなことをする不届き者は?!

「何しやがんだ!!」

まだ痛みが走る腹を抱えながら俺はガバッと起き上がる。すると、俺の目の前に見覚えのある顔がいた。

「おはよう、タクちゃん!」

「おはよう、寶藍…。ってぇ!なんでお前がここにいんだよ!?」

俺はベッドの上にニコニコと笑いながら座る寶藍を見て、驚きのあまり一気に目が覚めた。

「うふふ♡美人な幼馴染が起こしに来てあげたわ!どう、嬉しいでしょ?」

「お前なぁ、もっとマトモな起こし方出来ねぇのか?」

「何?ほっぺにチューとか?」

「どこのバカップルだ?!」

「あたしにチューして欲しかったら、뽀뽀(ポッポ) 주세요(ジュセヨ)(韓国語でチューしての意味)って言ってくれたらしてあげるわ!」

「そんな恥ずかしい事言えるか!」

「何よ?あたしのチューが不満だって言うの?」

「そんな事軽々しく言うもんじゃない!はしたないぞ!」

起きて早々こいつと夫婦漫才を繰り広げる羽目になるなんて誰が想像できただろうか?いや、まだ夢なのか?でもさっき腹にくらったドロップキックの痛みがまだ残っている事から、間違いなくこれは現実世界だろう。

「ねぇ、タクちゃん!早く起きて朝ごはん食べよ!」

「まだ食ってなかったのかよ!」

「うん、出かけるときに食べるの忘れちゃった。」

「子供か!」

俺の腕に手を回しながらニコニコと下へ誘導しようとする寶藍に対し、相変わらずツッコミを入れる俺。すると、ガチャっとドアが開き、誰かが入ってきた。

「おーい、タク!ボラムちゃんが起こしに来てくれたんだぞ、休みとはいえ、いい加減起きろ。」

親父だった。親父は部屋に入るやいなや、俺と寶藍を見た後、立ち尽くす。ん?何か嫌な予感が…。

「す、すまん二人共…。」

「い、いや…親父、これは違うんだ!」

ヤバい。こりゃ完全に誤解された。親父は黙って部屋を出て行くと、「母さん!初孫だ!我が家に初孫が出来るぞ!」と叫びながら階段を駆け下りていった。いや、その…どうしよう、この状況?寶藍は相変わらず俺の隣でニコニコしている。はぁ。もういいや。そう思いながら俺は下に降りていった。


俺は眠気が残ったまま下の食卓に向かい、寶藍と一緒に朝ごはんを食べていた。時刻はもう9時半を回っているので少し遅めの朝食だな。

「ボラムちゃんありがとね!タクの事起こしてくれて!」

「いえいえ!でもなんか懐かしい感じですね!」

お袋が寶藍にお礼をいい、寶藍の方も食べながらニコニコ笑顔で返す。そういえば、幼稚園の頃もあいつに起こされたことが何回かあったような。

「にしても、どうしてわざわざこんな時間に起こしに来たんだ?」

俺は一番聞きたかった事を聞いた。今日は別にこいつを含め誰かと約束なんてしてなかったし、完全にフリーの俺だったのに。すると寶藍は俺の顔を覗き込んできて言った。

「もう、タクちゃん!今日の重大さがわからないの?」

「今日って何かあったか?」

俺が聞くと、寶藍だけでなく、親父とお袋までため息をついた。

「タク、お前ってやつは…。」

「ごめんね、寶藍ちゃん。鈍感息子で。」

え、俺なんかまずい事言った?状況がホントに理解できない。一体どうなってるの?教えて!

「ごめん!本当にわからないんだ!教えてくれよ!」

俺は三人にそう言うと、寶藍がカバンからチラシのようなものを一枚取り出してきた。

「これ!忘れたの?」

そう言って寶藍が取り出してきたチラシには、「第27回、町内会7月祭り」とデカイ字で書かれていた。

「7月祭り今日だったっけ?」

「そうよ!一緒に行こ、タクちゃん!」

「そりゃあいいけど、開始時間夕方だぜ。まだ午前じゃねぁか。」

「暇だから遊びに来た。」

「そ、そうか…。」

「だってみんないないんだもん!」

寶藍は頬を膨らませながらそう言った。そう言えば、ステイシーはアメリカから友達が来るとか言ってたし、幹夫も大阪までライブを見に行くとか言ってたし、翔太もディズニーデートに行くとか言ってたしな。夏って意外とみんな忙しいんだな。

「でもー!今夜はタクちゃんと楽しい時間が過ごせるからいいの!」

「まぁ、そうだな。俺も行くの久しぶりだし。」

「去年行ってないの?」

「うん、高校以降部活や留学とかあったし、足は遠のいてるかな?」

そう言われてみれば、最近お祭りとかあんまり行ってない気がする。去年はその日バイト抜けられなかったし、今思うとここ数年は本当にお祭り行ってなかったな。

「昔はよく家族ぐるみでお祭り行ってたわね。二人共覚えてる?」

お袋が俺達に聞いてきた。

「薄っすらとね。」

「私も何となく。」

そう答えた俺達に続き、今度は親父が口を開く。

「まぁ、二人共まだ小さかったし、そんなもんだろ。とにかく今夜は二人で楽しんでこい!」

「親父、お袋、行かないの?」

俺は両親に聞いた。するとお袋が笑顔で言った。

「だってえ、せっかくのデートを邪魔するわけにはいかないし、私も私でやることあるから!」

「デートって…。」

俺ははしゃぐお袋に半分呆れつつそう呟いた。そして親父も…。

「タク、時には親が入ってはいけない世界というものがあるんだ。今がそれだ。とにかく父さんと母さんはお前たちが楽しんでくれることが一番幸せなんだぞ。」

と説得した。やけに正論だから俺は否定もできず…。

「分かった。行ってくるよ!」

「おじさん、おばさん!ありがとうございます!」

納得した俺達は朝食を食べ終え、片付けを始めた。全部片付け終えたタイミングで、寶藍が俺の腕を引っ張る。

「タクちゃん、まだ時間あるしゲームしよ!そーねぇ、スマブラやろ!スマブラ!」

「おう、やるか!言っとくけど、負けないからな!」

「かかってきなさい!」

こうして俺達はゲームに明け暮れたり、積もる話を語り合ったりしているうちに、気がつくともう夕方になっていた。


「じゃあ、行ってくるわ!」

「行ってらっしゃい。人混みに気を付けるのよ!」

準備をした俺達にお袋がそう声をかける。因みに、祭りといえば浴衣を着る人も多いだろうが、今日の俺達は普通に私服だ。お袋が俺達に浴衣を着ることを提案はしていたのだが、人混みの中動きづらいとの事で俺も寶藍も普段着で行くことを選んだ。

「楽しい時間を過ごすんだぞ!」

「はい、わかりました!おじさん!」

寶藍がそういった所で、俺たち二人は祭りの会場まで歩き出した。幸い場所はそんなに遠くなく、俺の家から少し歩いたところにあるやや大きめの公園だ。

「しかしお前、よく祭りの事覚えてたよな。」

「当たり前よ!楽しい事はいつだって忘れないわ!」

寶藍は自信満々にそう言った。ごめんなさい、地元民なのに完全に忘れてました。

「今夜は楽しもうね♡」

「お、おい。暑いし恥ずかしいからあんまりくっつくなって。」

「別にいいじゃない!」

俺の腕にしがみついてきた寶藍にそう言ったが、寶藍は離れる気は無いらしいので、やむを得ずそのままにした。でも、何か恥ずかしいな。何せ祭りと言えばデートスポットと想像する人が多いように、会場へ向かう道には複数のカップルがいた。中には露骨にイチャついてるのもいたので、見てるのが少し恥ずかしくなった。そんなこんなで俺達は祭りの会場に到着。案の定、すごい人だ。

「混んでるなぁ。」

「予想以上ね。」

俺も寶藍も驚いている。ケータイがあるから心配ないとは言え、はぐれたら色々大変そうだぞ、これは。

「タクちゃん、トイレ行っていい?」

「おう、行ってこい!その間に何か買ってこようか?焼きそばでどうだ?」

「うん、お願い!ありがとうね!」

そう言って寶藍はトイレに行き、俺は焼きそばの屋台へ並んだ。定番メニューだけあって列もそこそこ長く、買えるまで少し時間を食った。

「すみません、焼きそば2つ下さい!」

「ヘイ、毎度あり!」

俺はおじさんから焼きそばを2つ受け取ると、寶藍がいる公衆トイレの前へと向かった。すると、寶藍の前に三人の若い男性がいるのが見えた。

「ねぇ、彼女1人?」

「可愛いねぇ!良かったら俺達とどう?」

「退屈させないからさ!」

なんだ、ナンパか。まぁ、あいつのルックスじゃあ、殆どの男は食いつくだろうな。寶藍の方はガン無視を決め込んでいるが、揉めると面倒なので、俺はあいつの所へ駆け足で向かう。

「おーい、寶藍!焼きそば買ってきたぞ!」

「あっ!タクちゃん!ありがとー!」

俺の声に反応した寶藍は笑顔で俺に手を振る。すると、ナンパ野郎三人組は急に青ざめて…。

「男連れかよ。」

「何だよあのイケメン!」

「やめよう、勝ち目ねぇよ!ずらかるぞ!」

そう言い残して去ってしまった。

「大丈夫か?」

「うん、それよりお腹空いた!早く食べよう!」

「おう!」

俺達はそのまま近くのベンチで焼きそばを食べた。食べ終えてからはとにかく色々回りまくった。綿菓子を食べ、たこ焼きを食べ、水飴を食べ、射撃では俺はエアガン、寶藍は猫の置物をゲットし、金魚すくいでは二人共一匹も掬えず、お化け屋敷では寶藍がお化けに逆ギレしたりと騒がしくも楽しい夜を過ごせた。

「あー、食べた食べた!」

「ちょっと食いすぎたかな?」

「えー、こういう時はいっぱい食べるのがいいじゃん!」

「まぁ、そうだけどさ。」

はしゃぎすぎて少し疲れたので、俺達は近くの茂みで休むことにした。

「ねぇ、タクちゃん!」

「何だよ?」

「久々に私とお祭りに来れて楽しかった?」

「ああ、誘ってくれてありがとうな!」

俺はそう言うと、寶藍は少し俯きながら言った。暗くて表情はよく見えないが。

「タクちゃん!」

「ん?」

「私ね、ここに留学して本当に正解だったと思うの!」

「そうか?良かったな!」

折角の留学だしな。楽しんでくれていると友達として嬉しいぞ。

「タクちゃんにまた会えたから!」

「最初びっくりしたけどな。でも、まぁ、俺も良かったと思うぞ!」

そう言うと、寶藍はまた俯いた。一体どうしたんだ?

「私ね!韓国帰ったときにもうタクちゃんに会えないと思ったの。でもこうして会えた。だから…その…今から私の言うことをよく聞いて!」

「お、おう。何だ?」

薄暗かったが、再び顔を上げた寶藍は少し赤らんでいるように見えた。

「私ね、ずっと…ずっとタクちゃんのことが…!」

寶藍がそう言いかけた直後だった。

「Oh,it's good!」

「Yes,Japaniese festival is so fine!」

英語で何か聞こえてきた。ん、待てよ、この声何処かで聞いたような…?よく見ると、少し離れたところに屋台で購入したであろうたこ焼きを食べている外国人女性三人組がいた。その中の一人に目が合うと、大声で俺に声を掛けてきた。

「タクトー!!」

「「す、ステイシー!?」」

なんとステイシーがいた。アメリカからの友人と会っているのは知っていたが、まさかここに来るとはな。ステイシーは連れの二人の外国人女性と一緒に俺たちの所に近づいてきた。

「ステイシー、お前、どうしてこんな所に?」

「最初は浅草や渋谷とかで遊んでたんだけど、どうしても私が今いるところを紹介したくて連れてきちゃったの!紹介するわ!私の中学の友達で、サラとケリーよ!」

「Hi!」

「Nice to meet you!」

二人は俺達に挨拶する。そして、サラとケリーの二人は何か英語で話始めた。

「なにあのイケメン?」

「あんなカッコイイ日本人の男初めて見た。」

「いいなぁ、ステイシーは!」

「こんなカッコイイ男と友達なんて羨ましいわ!」

日本人だから英語が分からないだろうと大声で言っていたが、留学で英語力を鍛えられた俺には丸聞こえだった。何か恥ずかしい。

「二人はどうしてここに?」

ステイシーが聞くと、俺より先に寶藍が答える。

「私とタクちゃんはお祭りデートよ!ここは私達の思い出の場所だからね!羨ましいでしょ!」

寶藍は自信満々にそう言うと、ステイシー急に表情を暗くしてプルプルと震えだした。そして顔を真っ赤にして言った。

「何ですって!?デート?!しかもこんなに堂々とベッタリ食っ付いて…!二人共許さないわ!」

そう言うとステイシーはいきなり日本刀を取り出し、俺達に襲い掛かってきた。ちょっと!何でそんなもの持ってんだよ!

「何すんのよ!」

「やめろステイシー!そんなのやられたら死んじまう!」

「これは今日浅草で買った模擬刀だから死なないわよ!でも、二人共覚悟しなさい!」

「だぁぁ、助けてくれぇ!」

模造刀とは言え、あんな物で殴られたら痛いどころじゃ済まないぞ!俺達を追い回すステイシーをびっくりしながらも必死で止めるサラとケリー。今日のお祭りは良くも悪くも最後まで賑やかで騒がしかったのだった。

こんにちわ!

いよいよお祭りの季節ですね!

最近、作者もお祭りとか全然行って無いので今年こそ行きたいです!

寶藍ちゃん、告白出来ませんでしたが、この夏で寶藍とステイシーの恋に進展はあるのか?

まだまだイベント盛りだくさんの夏!

お楽しみに!

それではまた次回!

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