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第40話 出会えてよかった

こんにちわ!

さあ、7月になりましたね。

暑いですけど、頑張ります!

6月も終わりに近づこうとしているある日の午後、俺はいつも通り必修科目の授業を受けに行っていた。昼食後の午後の授業はほとんどの人がダルくて眠くなるだろうが、今日の俺はそんな事はない。むしろ上機嫌だ。なぜなら、放課後にはお楽しみがあるからな。そんな気分で教室に入り、時間まで本を読んでいると、幹夫が入ってきた。

「モリタク殿、ご機嫌でござるな。」

「おっす、幹夫!」

午前はお互い違う選択授業を受けていたので、今日幹夫に会うのはこれが初めてだ。幹夫は俺の隣に座り、そのたるんだでかい腹を揺らしながら俺に話しかける。

「なにかいいことがあったでござるか?」

「いや、別に。まぁ、この後俺にはお楽しみがあるからな。少しテンションが上がってるかな?」

「えー、なんでござるか?」

「秘密!」

俺はそう言うと、幹夫が更に興味深そうに聞く。

「もったいぶらないで教えて欲しいでござる!」

「まぁまぁ落ち着け。後で教えてやるから。」

幹夫に言った直後、後ろからいきなり声が聞こえた。

「デートか?」

そう言ったのはいつの間にか後ろにいた翔太だった。

「何だよ翔太。いつからいたし?」

「さっきからいたぜ!で、誰とデートするんだ?ボラムちゃんか?ステイシーちゃんか?」

「だからデートじゃねぇって!」

俺が突っ込むと、幹夫が不思議そうな顔で聞いてきた。

「うーん、デートじゃないとすると、もしかして何かの発売日でござるか?」

「いや、違う。」

俺が否定すると、橋本が首を突っ込んでくる。

「何だよモリタク。もう2年の6月だぜ。いい加減彼女作れよ。」

「できるならとっくにやってるわ!」

「まったく、見た目の持ち腐れだなぁ。ホントに。夏には海でも行ってナンパでもしてくれば?」

「俺はギャル男か?!」

そう突っ込むと、幹夫が笑顔で話し始める。

「去年サブカルの合宿で海に行ったときは、モリタク殿を見た女性グループ3組から逆ナンをされたでござる。故にナンパは不要かと。」

「さすが幹夫!モリタクの事よくわかってんな!取り敢えず、誰でもいいから声かけられたらついて行けよ!」

幹夫の言葉に悪乗りする橋本。知らない人についていったら駄目って幼稚園の頃に言われなかったのか?

「とにかく、このあと俺にはお楽しみがあるんだ!デートじゃないけどな!」

「まっ、じゃあ楽しんでこいよ!モリタク!」

「へいへい。」

俺がそう言った直後に先生が入ってきた。

「みんな揃ってるな。それじゃあ授業始めるぞ。」

眠くもダルくもないが、今は授業よりも放課後の事で頭がいっぱいの俺は、期待に胸を膨らませつつ、午後の授業に臨むのだった。


放課後…。

「ちょっと。狭いし暗いし、もう少しマシな方法無かったの?」

「文句言うなよ寶藍。これもあいつのためだと思って我慢してやってくれよ。」

「そりゃあ、私も今日を楽しみにしてたけど。」

暗い空間で寶藍が俺に愚痴る。一方で…。

「私はこういうの好きだわ。ワクワクするし。何せタクトとピッタリくっつけるし!」

「ちょっ、ステイシー!」

ステイシーはなぜか愚痴るどころかご機嫌だった。でも、こんな場所で密着されると正直ちょっと困るかな。自分でやっといてあれだけど。

「にしても、遅いわねぇ。いつまでこの状態でいなきゃいけないのよ!?」

「まぁ、焦るなよ。来るのは確実なはずだから。」

苛つく寶藍をなだめる俺。すると、ガチャッ!とドアが開く音がした。

「頼もう!安西幹夫、定刻通りに只今出席でござる…って誰もいない。何故でござるか?」

入ってきたのは幹夫だった。案の定、この状況が理解できずに戸惑っている。

「電気はついておらぬが、鍵は開いている。トイレでござるか?それならそろそろ誰か来るはずなのだが…。」

幹夫はそう言いながら電気を点けた。それと同時に俺のケータイにメッセージが届く。それを見た俺は寶藍とステイシーに言う。

「二人共、行くぞ!」

「オッケー!」

「オーライ!」

ガバッ!バサッ!バアン!俺達3人はさっきまでいたテーブルの下のデカいダンボールから思いっきり飛び出した。更に部屋の隅にある備品の山の中から健介先輩と双子、更に掃除用具入れから夏美先輩、外にある空のゴミバケツからは春菜ちゃんが飛び込んでくる。

「こ、これは何事でござるか?」

幹夫がマジで驚いた表情でその場に立ち尽くしている。そして俺達は笑顔で顔を合わせながら幹夫に精一杯言葉をかけた。

「「「幹夫!」」」

「「誕生日!」」

「「「おめでとう!」」」

その祝福の言葉の直後に、パァン、パァン、パァンとみんなが持っているクラッカーの破裂音が心地よくサブカル研究会の部室に響き渡ったのだった。


「そうでござったか。モリタク殿のお楽しみというのがまさか某の生誕を祝う事だったとは検討もつかなかったでござる。」

「へへへ、だってサプライズだもん!大成功だぜ!」

まだ少し驚いている幹夫に対し、俺は笑顔でそう声をかけた。そう、今日6月20日は幹夫の誕生日だった。俺は何かサプライズでもやろうと、サブカル研究会のメンバーに提案し、少々強引だったけどこのサプライズパーティーを行うことにした。因みに、さっき俺のケータイに届いたメッセージは、健介先輩が幹夫以外のメンバー全員に一斉送信した「今だ!出るぞ!」というメッセージだった。

「どうだ幹夫!俺達のサプライズは!」

健介先輩が嬉しそうな顔で幹夫に尋ねた。

「びっくりしたが、非常に嬉しいでござる!忝ない、健介先輩!」

「良いってことよ!」

健介先輩は満面の笑顔で幹夫の肩をポンポンと叩きながら言った。

「でも、安西くん中々来ないからちょっと心配しちゃったわ。掃除用具入れの中、狭くて暑いし。」 

「すまぬ、夏美先輩。ちょっと授業後に事務所の人に呼び出されてしまったでござる。」

ホッとした表情で顔を扇ぐ夏美先輩に詫びる幹夫。そして、後ろの冷蔵庫から春菜ちゃんが何かを出してきた!

「幹夫先輩!私、これ作ってきたんです!どうですか?!」

満面の笑顔で春菜ちゃんがテーブルの上に置いたのは、なんとも立派なデコレーションケーキだった。生クリームをキレイに塗られ、様々なフルーツで飾り付けられており、真ん中には「Happy Birthday 幹夫先輩!」とチョコレートで書かれている。

「おお、春菜殿!これはお主が作ったでござるか?」

「はい!もちろんです!拓人先輩から話を聞いて、ぜひバースデーケーキは私に作らせてくださいって頼んだんです!さぁさぁ、ロウソクに火を付けますんで幹夫先輩、頼みますよ!」

春菜ちゃんはニコニコとご機嫌な様子でチャッカマンを手に予め刺しておいたロウソクに火を点けていく。そして、みんなでお誕生日の歌を歌い、誕生日でおなじみのあのイベントの時が来た。

「さぁ幹夫!」

「火を消して!」

寶藍とステイシーが幹夫を促し、幹夫は思いっきり火を消した。それと同時に俺達は拍手で幹夫を祝福する。

「おめでとう幹夫!これは俺からのプレゼントだ!」

俺は幹夫に鮮やかな包装紙で包まれた箱を渡した。

「開けてもいいでござるか?」

「勿論!」

俺がそう言い、幹夫は包を取りながら中を取り出す。

「こ、これは…!」

「可愛いだろ?魔法少女コスモプリンセスのルナージュちゃんのフィギュアだ!」

「うんうん!最高に嬉しいでござる!モリタク殿!誠に忝ない!」

「良いってことよ!親友!」

満面の笑顔の幹夫。それを見た俺は自分の事のように嬉しく思えた。友達が喜ぶところを見るのってやっぱり気分いいよな。

「おお、やってるねぇ!」

「よっ、おめでとう幹夫!」

そう言いながら誰かが入ってきた。翔太と橋本だった。

「よぉ、遅かったじゃねぇか。」

「すまん、モリタク。」

「来るタイミングミスったわ!」

俺が言うと、翔太と橋本は笑いながら謝った。

「翔太殿と橋本殿もこのサプライズを知ってたでござるか?」

「勿論だ!」

「どうだ、嬉しいだろう?」

驚いている幹夫に対し、翔太と橋本はドヤ顔でそう返した。

「俺が呼んだら二人共快く引き受けてくれたんだぜ!」

俺も自信満々でそう言う。そして幹夫は更に笑顔で叫んだ。

「おお、モリタク殿!そして皆も!本当に忝ない!もうなんて感謝していいかわからないでござる!嬉しすぎておかしくなりそうでござる!」

「ハハハ、親友のためなら当然のことよ!」

俺はハイテンション過ぎて大はしゃぎの幹夫を少し落ち着かせつつ、そう声をかけた。すると、寶藍が聞いてきた。

「そういえば、二人って随分仲がいいけど、最初知り合ったときってどうだったの?」

「私も聞きたいわ!タクトと幹夫の出会いを!」

ステイシーも笑顔で食いついてきた。

「まぁ、そうだな。入学式の次の日くらいだったよな?」

「そうでござる。」

俺と幹夫がそう答えると、今度は双子か食いついてきた。

「どんな感じですか?教えてください!」

「僕も気になります!モリタク先輩と幹夫先輩の馴れ初め!」

双子がそっくりな目をキラキラさせながら聞いてきた。

「おいおい、馴れ初めって…。夫婦じゃないんだから、優太!」

「いえ、僕は蒼太です!」

「優太は僕ですよ、モリタク先輩!」

「ごめん、また間違えた。」

俺は双子に詫たあと、その時の事を思い出しながら話始めた。

「あれは確か…入学式の翌日にあった奥多摩のオリエンテーションのときだったかな…。」


−1年前、4月、東京都奥多摩町内の旅館−

大学に入ったばかりの俺は、新入生全員が参加するオリエンテーションに参加した。この日はまず、学校で説明を受け、午後にバスで奥多摩へと出発する予定だった。

「はぁ、何か色々つかれたなぁ。」

昼間から履修だの単位だのの説明を受け、その上バスで奥多摩まで行った俺はすっかり疲れ切っていた。荷物を下ろしながら旅館へと入り、一度クラス別にロビーへと集められる。

「新入生のみなさーん!部屋割はこのプリントに書かれていますんで、一度そこで荷物を置いてから、19:00の夕食時までそこで待機してて下さい!遅れないでくださいね!」

その当時学生アシスタントを努めていた有希子先輩が新入生全員にそう言った。俺達はぞろぞろと上の階にある指定された部屋へと向かった。部屋は五人一部屋の和室で、結構きれいで広かった。

「おお、いい部屋だな。」

俺はそう言いながら荷物を置く。そして他のルームメートもぞろぞろと入ってきて、荷物を置いていった。

(これからこの人たちと一緒に勉強するのか。挨拶したいけど、何話したらいいんだろう?)

人見知りの俺は当挨拶していいか分からず、軽く会釈するのが精一杯だった。まぁ、入学式の次の日なんてこんなもんかと思いつつ、夕飯まで時間があったので俺は持ってきたラノベを読み始めた。すると…。

「おお、お主も読んでおったか!某も大好きでござる!」

突然の大声にびっくりした俺がページから目を離し、顔を上げると、アニメのロゴが入ったTシャツの上に軍服風のジャンパーを着ており、天然パーマに丸メガネの風貌の少年がいた。

「うん、好きだぜ。面白いし。」

「お主のような美男子がこの様なラノベ好きとは驚いたでござる!」

「ラノベファンに見た目は関係ないだろ。まぁ、君はこういうの好きそうだと思ったけど。」

「見た目は関係ないってさっき言ったばかりでござる。お主の口で。」

「ハハハ、そうだな。」

最初、見た感じ危ないなと思いつつも、こいつとは中々気が合いそうだと思った。

「紹介が遅れたな。俺、森拓人。みんなからよく、モリタクって呼ばれてるぜ。」

「某は川越の歩く辞典と呼ばれた安西幹夫と申す!下の名前で呼んでいいでござるよ!」

「ハハハ、なんだよそれ?取り敢えず、これから宜しくな!幹夫!」

「ソナタとは良き友になれそうでござる。宜しくでござる、モリタク殿!」

俺達はガッチリと握手した。これが俺と幹夫の最初の出会い、そして交わした言葉だった。


「てな感じだったな。」

「へぇ〜。」

俺が当時の状況を言うと、寶藍がそう返す。

「でも、某はモリタク殿と仲良くなれて良かったと思うでござるよ!」

「俺もだよ、幹夫!お前と出会えたお陰で大学生活を楽しく送れてるぜ!」

幹夫の言葉に俺は笑顔でそう返した。出会いっていうものは偶然なのか必然なのかよく分からない部分が多いけど、何か不思議な力が互いを引き付けた。そういう部分もあると改めて思った。俺はこれからも出会いを大切にしたいし、仲良くなったみんなと今後も上手くやっていきたい、心からそう思っている。

「さぁ、皆さん!ケーキ切りますよ!悪くなっちゃいますよ!」

「お、そうでござった!」

春菜ちゃんがナイフを取り出し、みんなにケーキを切り分ける。そして改めてみんなが幹夫にプレゼントを渡したり、美味しいケーキを味わったりしてその日のサプライズバースデーパーティは大成功に終わったのだった。

こんにちわ!

前回は少しギスギスした内容だったので、今回は楽しい話にしました。

出会いって本当に大事ですよね!

私も今までの出会いを大切にしていきたいと思います!

さぁ、いよいよ作中でも夏に突入します!

果たして拓人達はどんな夏を過ごすのか?

今後にご期待願います!

それではまた次回!

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