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第2話 準備は万全?

予想外の再会を果たした拓人、寶藍、そしてステイシー。

こんな再会の形なんてあるかい!って思った人もいるかもしれませんが、そこは見逃してください。


俺は今、困惑している。

非常に困惑している。

今はどういう状況かというと、右手を韓国美女に握られながら、金髪碧眼の美女にハグされている。

何このシュールな状況?

ハーレムアニメでもこんなシチュエーション見たことねぇよ。

普通の男なら「やったー!両手に花だー!サイコー!」なんて喜ぶだろうが、今の俺には喜ぶ余裕すらなかった。

先輩達や他の留学生達も何が起こったのかよくわからない状況だったのか、ポカンと俺達を見ている。

「お、おい。嬉しいのはわかったが、そろそろ離れてくれないか、二人共!もうすぐ出発の時間だぞ!」

俺がそう言うと二人は素直に離れてくれた。

丁度そのタイミングで職員がみんなを呼びに来て、俺達一行は市役所目指して歩き出したのだった。


目的地である市役所は俺達の大学がある街にはない。なので電車で二駅乗らなければならなかった。まず寮から少し歩いたところにあるバス停からバスで駅を目指し、そこから電車に乗って市役所の最寄り駅まで行く。なんというか面倒臭い。

そのバスの車中、2年生の片倉愛先輩が俺に話しかけてきた。

「ねえ、あの二人と森君ってもしかして顔見知り?」

「実は、そうなんですよ。」

「うそ、マジ?詳しく聴かせて、お願い!」

愛先輩、どんだけ食いついて来てんだよ…

助けを求めようと隆先輩、麗先輩の方を見たが…二人とも(聞かせろ…)というのがテレパシーで伝わって来るような興味深々な目で俺を見ていた。

「えーっと、詳しく話しますと…寶藍(ボラム)は幼稚園の時日本に住んでいて、ほんで俺と同じ幼稚園で3年間一緒でよく遊んでいた仲です。」

「うっそマジ?幼馴染感動の再会じゃん!」

隆先輩が羨ましそうに大声で叫んだ。ここ、一応路線バスの車内ですよ…。

「で、ステイシーなんですが…」

「うんうん!」

「俺、通ってた高校の学科プログラムで3カ月だけアメリカのシカゴにホームステイしてたんですけど…その時のホストファミリーがステイシーの家族、バーネット一家だったんです。」

「えー、凄いじゃない!折角会えたんだから、これからもちゃんと仲良くしてあげなさい!」

「は、はあ…。」

麗先輩の言う通り、もちろんそうするつもりだ。

とりあえず、今は落ち着いてゆっくり話す時間が欲しかった。今日はそんな時間取れるかな?

俺はふと、寶藍とステイシーがいる方向を見た。

何か話しているぞ。

「初めまして。あたしは尹寶藍。韓国ソウルからきたの。」

「あたしはステイシー。ステイシー・バーネットよ。シカゴから来たわ。宜しく。」

「ねえあんた。さっきタクちゃんに抱きついていたけど…」

「ハグはアメリカじゃあよくある挨拶よ。いけなかったかしら?」

「どう見ても挨拶のハグって感じには見えなかったわ。なんか恋人にするようなハグに見えたんだけど…」

「貴女だってさっきタクトの手を握ってたじゃない。それも何かカップルが握る感じに見えたのは気のせいかしら?」

「うっさいわね!余計なお世話よ!」

何だろう…?二人の間で火花がバチバチしているのが見える。

「幼馴染として警告するわ。もしタクちゃんに変なことしたらあたしが許さないから。」

「ご忠告どうも。貴女もタクトにひどいことするなら覚悟しておきなさい。これは家族としての警告よ。」

「そこまでにしておけよ。二人共。」

俺は見ていられなくなり、二人の仲裁に入った。

「まったく、顔合わせ初日にバスの中で揉める奴があるか。せっかく日本に来たんだし、楽しい留学生活にしなきゃ意味ないだろ。」

「ごめんタクちゃん。ところでタクちゃんまだ同じ所に住んでるの?おじさんとおばさん元気?」

「タクト!あの時の約束覚えてる?私が日本に来たら一緒に素敵な思いで残そうって!今度遊ぼう!」

急にハイテンションになった寶藍とステイシー。さっきまでの火花はどこに行ったのだろう?

なんだかんだで俺達を乗せたバスは駅に到着し、そこから電車に乗って市役所に到着。

そこで担当職員の説明を受け、留学生達は必要書類に記入をしていった。

彼らの日本語能力には差があり、寶藍やステイシーみたいに理解できている子もいればほとんどできていない子もいる。

そんな子の手助けのために俺達が呼ばれたのだ。

「ココハ、ナニヲ書ケバイイデスカ?」

「ここは自分の名前を書いてね。」

「ココハ、ドースレバイイデスカ?」

「えーっと、これは学生証に書いてある住所を書いてね。これだよ。」

こんなやり取りだ。悪戦苦闘しながら何とか全員分の転入手続き、外国人登録証の発行手続きが終わった。

時計を見てみると既に昼の12時を過ぎていた。昼飯を食いたい…

「じゃあ、お昼休憩ね!1時間後またここに来てください。」

引率職員が呼びかけて、みんな好きなものを食べに散り散りになった。ちなみに場所は駅前のビルにあるフードコート内である。

「何食べようかな?」

俺が悩んでいると…

「タクちゃん、ラーメン食べにいこ!」

寶藍が俺の腕に手を回し、ラーメン屋へ向かおうとする。しかし…

「タクト、和食食べよう!あの店おいしそう!」

ステイシーに和食の店に誘われた。どうしよう…迷う。

少し周りを見回して、結局選んだのが…

「あそこいいんじゃないか?すいてるし、メニュー多いし!」

そのどちらでもない、オープンカフェだった。

「タクちゃんが言うなら…」

「私もタクトがそれでいいなら…」

俺達3人は店に入り、並んでメニューを注文。幸い結構すいていたので誰かに場所取りしてもらう必要はなかった。料理を持って席に着いた俺達はおもむろに食べ始める。

「しかし、こんな偶然あるんだな。世界って広いようで案外狭いな。」

「ほんと!でもうれしい、またタクちゃんと一緒になれるなんて!」

「タクトがアメリカにいた時は3カ月だけだったけど、今度は1年間一緒よ!うふふ…楽しい生活になりそう!」

まあ、そんなこんなでいろいろ話している内に、ステイシーがこんなことを聞いてきた。

「ねえ、タクト!」

「ん?どうしたのステイシー?」

「いま彼女いる?」

何だ?恋バナか…女の子って本当に好きだなこういう話。万国共通ってわけか。

「いや、いない。」

すると、ステイシーはホッと胸をなでおろした。

「じゃ、じゃあ好きな人とかいるの?」

今度は寶藍が聞いてきた。

「いないんだよねぇ、これが…。」

そう、俺は彼女いない歴イコール年齢の典型的なモテナイ男だった。なんでだろう?出会いがなかったと言えばそれまでだが…部活が忙しかったからかな?

「かっこいいからてっきり彼女作っているかと思った。」

寶藍がそう呟く。彼女なんてできる気配ねぇよ…。

「でもよかった!タクトも私もフリーってことね!」

エッヘン!とステイシーが胸を張る!何がそんなに嬉しいんだろう?

そんなこんなで昼休憩が終わり、今度は日用品などの買い物に出かけた。みんな結構買うので俺も持つのを手伝ったりしたのだが…重い。そして持てない。

みんなが買い物を終え、寮に戻った時にはもうすっかり夕方になっていた。

「じゃあ、みんなお疲れ様。留学生のみんなはこれから春期講習始まるからしっかり勉強するように!あと、アシスタントのみんなは本当にありがとうね!お疲れ様、気をつけて帰ってね!解散!」

職員に言われ、留学生達は宿舎に戻り、俺達アシスタントは家に向かって歩き出した。

はあ、もう疲れた。早く家帰って寝たい。

学校内にいた俺はバスに乗って駅を目指す。朝と同じじゃないか。

駅に着き、丁度来た電車に乗り込む。車内はあんま混んでなかったので空いている所に座った。

「あー、でもどうしよう?八王子でゲームでも見に行こうかな?」

結局俺は途中の八王子駅で下車し、家電量販店へと向かおうとした。その途中、改札口で…

「おや…?おーい、モリタク殿!」

聞き覚えのある声に呼び止められた。振り向くと…

「幹夫じゃないか!」

俺の悪友、安西幹夫あんざいみきおがいた。癖の強い天然パーマに丸メガネ、ぽっちゃり体系に軍服っぽいジャンパーにジーパンという、少し危ない見た目をしているが俺の大切な友達の一人だ。

「どうしたんだ、こんなところで何してんだよ?」

「モリタク殿、忘れたでござるか?今日は空色ヘヴンの予約解禁日でござるよ!」

「ん?あ!そうだった!」

「早くいくでござる!」

「よっしゃ、行くか!」

俺達は家電量販店目指してダッシュ!空色ヘヴンとは美少女天使がいっぱい出てくるファンタジー物の恋愛ゲームだ。18禁ではない。俺達は店のゲームコーナーに駆け込み、何とか予約することができた。危うく忘れるところだったぜ。

「助かったぜ、ありがとう幹夫!」

「友のためなら当然でござるよ。」

「にしてもお前、予約日知ってた割にはずいぶん遅かったじゃないか。もう夕方だぞ。」

「誠に恥ずかしながら、それがし、寝坊をしてしまい、しかも調子に乗って録画したアニメを見まくってたらこの時間になってしまったでござる!」

「ハハハ、マジか。」

幹夫とは大学の入学式の翌日に知り合い、なんだかんだで共通の話題が多く、すぐに意気投合した。こいつは見た目に似合わずあらゆる知識が豊富で、様々なジャンルに精通している。

だけど、かなりのロリコンなのが玉に傷である。

「モリタク殿はどうしてここに?」

「留学生アシスタントだよ。役所の手続きや買い物とか手伝ってた。」

「大変だったでござるな。だが、お主ならうまくやったであろう!」

「マジ疲れたよ、もう。」

そんな話をしながら俺達は八王子駅に到着した。

「では、さらば!今度また出かけようではないか!」

「ああ、じゃあな!」

帰る方面が違うので俺達はここで別れた。

自宅の最寄り駅に着き、へろへろになりながら家の玄関まで体を引きずった。

「ただいまぁ…」

ふらつきながら家に入ると…

「おう、お帰り!タク!」

親父がリビングでテレビを見ていた。親父の名前は森義和もりよしかず。45歳。近所で車の修理の仕事をしている。オールバックに濃いめの目鼻立ち、太いまゆ毛、マッチョな体系が特徴だ。普段は作業着で出勤、仕事をしているが、どう見てもあの某BLマンガの「いい男」にしか見えなかった。でも若々しいから45って感じはしないんだよなぁ。

「そう言えば、タク。留学生アシスタントはどうだったんだ?」

「マジ疲れた。」

「かわいい子いたか?」

「変なこと聞くなよ。まぁ、いたけど…」

「そうか。お前も早く彼女作ってみたらどうだ?イケメンなのにもったいないぞ。」

なんてはやし立ててくる。はぁ、今はそれどころじゃないって。

「私もタクが可愛い彼女連れてくるところ見たいなぁ。うふふ、2年に進級後は期待しているからね。」

お袋まで変なことを言い始めた。やれやれ…。

「大丈夫!俺とお前が結ばれてできた子だ!彼女が出来ない筈がない!」

「やだもう、義和さんたらぁ❤」

そう言って、親父とお袋は息子の俺の前だっていうのに勝手にイチャつき始めた。ほんと仲いいな。

そんなこんなで面倒なことは終了。風呂に入り、3人で夕飯を食べ、テレビを見た後俺は自室に入りベッドに寝転がる。

「は~あ、これで仕事は終わりだ。明日からゆっくりしよ。」

そう考えながら俺は目を閉じ、そのままぐっすりと眠りについたのだった。

拓人くん、大変な一日でしたね。

これからヒロインとどんな学生生活を送るのか?

それと、彼の友人の安西幹夫君をようやく出すことができました。

ずいぶん強烈なキャラなので注目してみてください。

今回は少し修羅場っぽくバチバチしたシーンがあったので、次回はもう少し緩やかなお話にしようと思います。

それでは、また次回お会いしましょう。

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