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第28話 4つどもえ

おはようございます!

さぁ、タクトくんとヒロインズ、ついに対峙です!

有希子先輩から告白を受けてしばらく経っているが、相変わらず俺は振り回されっぱなしである。有希子先輩は俺に会うたびにいじっては猛アプローチとも言える程ハグしたり腕を組んだりしてくるし、他の女子や先輩からは冷やかされ、寶藍やステイシーは怒り出すしで正直言うともう心理的にはフラフラになっていた。いつまでこんな日続くんだ?そして先程授業が終わり、精神的な疲労で早く家に帰りたかった俺だったが…。

「タクちゃん、よかったら立川に買い物でも行こう!」

「タクトー!この後暇?宿題で分からないところがあるから教えて!」

同じ授業に出席していた寶藍とステイシーが例によって俺に擦り寄ってくる。なんかもう、慣れすぎて恥ずかしさも突っ込む気力も失せていた。すると…。

「あら、三人ともごきげんよう!」

今回の全ての元凶である有希子先輩が現れた。

「あ、先輩どうも。」

俺も先輩にとりあえず挨拶をする。気のせいか横にいる寶藍とステイシーは先輩に露骨に敵意を込めた目で睨んでいるように感じた。

「森くん元気なさそうね?今日私に会えなかったから?」

「違いますってば。」

「もう、ごまかしてもだめよ♡顔真っ赤だよ!」

「誰のせいですか…。」

お約束通り、先輩は俺を弄ってくる。そして先輩は俺に笑顔で言ってきた。

「森くん、今週末デートしよう!私とデートすればあなたも気が変わるはずよ!」

「いえ、今週末は家族で野球見に行くので勘弁してください。」

これはごまかしでもなんでもなく本当である。親父が今週末休みが取れ、お袋も予定が無かったので三人で東京ドームまで行くことになっていた。

「じゃあ別の日でいいわよ。」

先輩はサラッとそう言った。すると横にいた寶藍が口を尖らせて言った。

「いい加減にして下さい先輩。タクちゃんが元気無いのはあなたのせいなんですから!」

怒ると怖い寶藍だが、今日はいつになく機嫌が悪かった。一体どうしたんだと言うんだ?すると、今度はステイシーまで…。

「もうこれ以上タクトを苦しめないで下さい!家族としてこれはもう許せる範囲ではありません!」

青い瞳に怒りを込めて先輩を睨みつけながらそう言い放つ。いくら韓国やアメリカの女性は気が強いとは言え、日本人女性で先輩にここまで言える人はいないだろう。しかし先輩は臆するどころか怒りのオーラを纏いながら二人に言った。

「苦しめる?私のせい?冗談じゃないわ!あなた達にそんなこと言われたくないんだけど。」

そして先輩は更に付け加え…。

「どうやら腹割ってゆっくり話す必要がありそうね…。三人共付いてきなさい。」

そう言われた俺達は、そのまま先輩に付いていった。


「ここなら邪魔が入らないからゆっくり話せるわ。」

先輩が俺達を連れてきたのは学校近くにある小さな喫茶店だった。俺は初めて来たが、先輩はここがお気に入りらしく、よく来ているらしい。お客さんもあまりいないし、うちの大学の学生は一人も来ていないため、余計な心配をする必要はなさそうだ。

「ところで森くん、何度も聞いて申し訳ないけど、やっぱり気持ちは変わらないの?」

有希子先輩が俺に聞いてきた。

「はい、やっぱり本当に好きにならないうちに付き合っちゃだめだと思います。お互い好きにならなきゃ片方が辛い思いをして結局全部駄目になっちゃうと思うんで。」

俺はそう答えた。現に俺は先輩からのもうアタックにどうしていいのか分からず困惑している。

「私のことは好きになれなかったんだ…。」

有希子先輩は残念そうにうつむいた。そしてステイシーが口を開く。

「そういうことです先輩!だからもう諦めてください!」

追い打ちをかけるようにそう言い放つステイシー。だが、それで言い負かされる先輩じゃなかった。

「あなたはどうなの?すごく好きな人がいて、別の誰かに諦めろって言われて『はい分かりました』って諦められるとでも言うの?」

「そ、それは…。」

有希子先輩の言葉にステイシーが困っている。そして先輩は寶藍にも言い放った。

「ボラムちゃんも、好きな人がいるのにその人が何もしてこなければアタックするはずよ。それはごく自然なことだと思うんだけど。」

「そうですけど!でも先輩のは明らかにやり過ぎです!」

寶藍も負けじと先輩に言い返す。先輩は狼狽えるかと思いきや溜息をついて呆れたような口調で話し始めた。

「やり過ぎ、ねぇ…。本当にそうかしら?あなた達だって普段から森くんに引っ付いてきているじゃない。」

「それは…。幼馴染だし、昔からやってたことよ!」

「家族としてスキンシップを取ることの方が自然だと思うんですけど!」

寶藍とステイシーは先輩に負けじと言い返した。まぁ、こいつらのスキンシップは初めは恥ずかしかったが、それ以上のことはしてこないし、もう慣れているので最近はすんなり受け入れている。

「森くんはどうなの?嫌だと思った?」

「まぁ、こいつらとは腐れ縁みたいなもんなので、別に平気ですけど。」

先輩に聞かれたので俺はそう答える。一緒に過ごして仲良くなると気にならなくなるような事もあるもんな。しかし先輩は少し怖い顔でぼやいた。

「そう。正直言うと私はイライラして仕方なかったの。好きな気持ちがあるのにただじゃれ合ってるだけで何もしない。そして森くんも気持ちに気づくことなく平然としている。こんなじれったい状況、見ていられなかったわ。」

先輩の言葉に俺たち三人は黙ってしまった。どうしよう、なって言ったらいいのか…。

「ねぇ、寶藍ちゃん、ステイシーちゃん。告白する気はあるの?」

「う…。そ…」

「それは…。」

先輩の質問に寶藍とステイシーが完全に動揺している。告白?何のことだろう?

「ああ、そうか。二人の国には告白なんて文化は無いもんね。するほうが無理か!」

「バカ言わないで下さい!」

「だったら何なんですか?」

有希子先輩の挑発に寶藍とステイシーは立ち上がって怒り出す。びっくりして周りのお客さんがこっちを見ていて少し気まずかった。

「お、落ち着けよ二人共。」

俺は二人を落ち着かせようと説得した。それにしても、どうして今日の先輩はこうも喧嘩腰なんだ?

「森くんはどうなの?自分と仲が良くて、信頼している相手からの告白も『恋人作る気が無い』って全て突っぱねるつもりなの?」

先輩の質問に俺は悩んだ。確かに嬉しいことは嬉しいんだけど。

「そうじゃないんです。何というか…。自分がまだ誰かを好きになってないのもそうですし…。それにもう少し自分に自信を持ってからちゃんとした付き合いを本当に好きになった人したいんです!」

俺はそう言った。先輩は複雑な表情で俺を見て、寶藍とステイシーは黙って俯く。そして俺は気になっていたことを聞いた。

「一つ聞きたいことがあります。先輩はどうしてそこまで俺にこだわったのですか?電車での件は分かりました。だけど、先輩みたいに美人で頭良い人なら俺にこだわらなくてもいい人なんていくらでもいるでしょう?」

前に愛先輩と麗先輩から聞いた時に男運が無いとか一度も男性と付き合ったことがないと聞いたが少し俺は驚いた。俺も人の事を言えないが、どうして男性との縁が無く、俺みたいな男を選んだのかがわからなかった。

「確かに私は自分で言うのもあれだけどモテる方だったわ。告白もされたし、人を好きになったこともある。デートも何回かしたわ。」

「だったら何で?」

俺が更に聞くと、先輩は浮かない表情で答えた。

「告白してきた人はみんな私の顔だけ目当ての男ばかりだった。好きになった理由も『顔が好みだった』『キレイだった』とかの浅はかなものばかり。私が好きになった人はいい人だと思ってたけど、女を取っ替え引っ替えするようなろくでなしだと私が一方的に振られた後に知った。でも森くん、あなたは違ったわ!」

先輩がピッと俺を指差して言った。

「何がですか?」

「私は別にさっきの件で男嫌いになったわけでもトラウマを植え付けられたわけでもないの。だからいい人がいれば一緒になりたいと思ったのそこであなたが現れた。あなたはこんなにイケメンで頭よくて完璧な男だったのに、恥ずかしがりやで少し自分に自信なさ気なのは残念だと思ったわ。でも自分に素直な所、優しい所、いいところがいっぱいあるじゃない。しかも猫かぶりじゃなく、素でね。」

「はぁ、まぁ…。ありがとうございます。」

照れ臭かったのだが、褒めてくれたので俺はお礼をした。

「あなたも一度も交際経験が無いって聞いて私は驚いたわ。よっぽど周りの女性が見る目がなかったのか、オタク趣味をマイナスに捉えていい部分を見ようとしなかったのかは知らないけど、こんないい男、誰もいらないなら私が彼女になってあげたいって思ったの。」

先輩がそう言うと寶藍とステイシーは再び怒り心頭で先輩に詰め寄った。

「私はタクちゃんのいいところを誰よりも知っているわ!伊達に幼馴染やってなんかいないわよ!」

「そうよ!私をタクトを見向きもしないような世間知らずと一緒にしないで!」

詰め寄られたが、先輩は割りと冷静に返す。

「でも、告白する文化が無いとは言え、真心から気持ちを伝えなかったのはあなた達よ。それで本当に好きって言えるの?」

先輩の追求に二人は完全に黙り込んでしまっている。ってゆうかさっきから好きとか何とか言っているが、状況がよく分からなくなっていたぞ。

「ああ、そうか。二人共失敗して今までの関係が崩れるのが怖いんでしょ?」

先輩が不敵な笑みを浮かべてそう言った。その言葉に二人は青ざめながら言った。

「違うわ!先輩みたいに人の気持ちを無視したアタックが嫌いなだけです!」

「アメリカではお互い好きになってから初めて恋愛が成立します!だから私は本当に好きになってもらえるようにしてるだけです!」

二人は必死に主張した。でも、二人がそこまで好きになっている人って一体誰なんだろう?

「そう、それがあなた達の今の気持ちなのね。」

先輩はふぅ、と一息つきながらそう言った。そしてこう付け加えた。

「わかったわ。確かに私が行き過ぎた部分もあったかも知れない。そこは謝るわ。それと森くん!」

「はい、何でしょう!」

いきなり話しかけられが俺は驚きながら返事した。

「もうしつこくアタックしたりはしない。今回の告白は無かったことにする。付け回したりして悪かったわ。あなたは本当に心の底から好きになった人と幸せになりなさい。でも…その…その選択肢の中に私も入れてもらえると嬉しいな。」

「は、はい。ありがとうございます。」

とりあえず、先輩はわかってくれたようでこの件は一見落着。そしてみんなが頼んだコーヒーやらお茶が運ばれてきた。そして俺は、もう一つ聞きたいことを聞いた。

「そういえば、ステイシー、寶藍。」

「What?」

「何、タクちゃん?」

「お前ら、好きな人いたんだな。どんな人なんだ?うちの大学の人?」

俺はそう聞いた。すると二人はプルプルと震えながら拳を握り…。

「このぉ…!」

「朴念仁!」

「グヘッ!」

俺の顔面に強烈なストレートを叩き込んできた。痛え。

「全く…本当に鈍感。」

その横で有希子先輩がコーヒーを飲みながら呆れ顔でそう呟いたのだった。

こんにちわ!

有希子の件、何とか落ち着かせることができました。

あんまりズルズル引っ張りたくなかったのと、これ以上拓人くんを悪循環に追い込みたくなかったので、うまくまとめられて良かったです。

次回からはまた新編です。

新キャラとかも出す予定なので、よろしくお願いします!

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