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第21話 拓人君、困る。

こんばんわ。

久しぶりに舞台を学校に戻します。

「あーあ、終わった。帰ろう。」

ゴールデンウィークが終わり、またいつもの学校生活に戻る。やっぱり連休後って少しダルいし、寂しく感じてしまうな。そう思いながらこの日最後の授業である一般教養の授業を終えた俺は、変える前にトイレに入った。必修科目じゃないので幹夫たちはおらず、この日は俺一人で帰る。いつも通り、教室を出て、購買でジュースでも買って帰ろうとしていた。そして、購買でジュースを買い終えて校舎を出た時だった。

「あの…。」

後ろから声を掛けられる。はて、何だろう?

「何ですか?」

俺がそう言って振り返ると、帽子を深々とかぶった男性学生が後ろにいた。

「あの…森拓人君だよね。やっと見つけたよ。」

男子学生はそう言う。俺は訳が分からないままその人に近づいた瞬間…。

「森くぅん!」

「うわっ!」

いきなり抱きつかれた。しかも抱きついてきた男子学生は俺の知っている人、それも俺の一学年上の野村勝のむらまさる先輩だった。

「何ですか?!」

「僕ね、森くんのことずっと好きだったんだ!だから僕を森くんの彼氏にして!」 

いや、まて!俺は男だし同性愛者じゃないから正直困る。

「無理ですう!」

そう言って俺は先輩を引き剥がし、猛スピードでその場から走り出す。しかし…。

「待ってえ、森くぅん!」

野村先輩はまだ追いかけてくる。そしてさらなる悲劇が…。

「俺達も!」

「モリタクの!」

「彼氏にしろー!」

後ろを振り返ると、更に三人の男性が俺を追いかけてきていた。

「ハァっ?何で増えてんだよー!」

俺はそう叫んだ。増えた三人も全員俺の知り合いで、一人はワイルド魔人の異名をもつマッチョな町田先輩、もう一人はウインク王子の異名をもつ爽やか系の清瀬先輩、更にもう一人はメガネハイパーの異名をもつインテリ系の小平先輩だ。因みに四人とも結構イケメンで女子からは人気である。とりあえず、俺は逃げ回ったが、校舎裏のゴミ置き場まで追い込まれてしまった。そして…。

「モリタクぅ!」

「逃げても無駄だ!」

「諦めて俺達を…!」

「彼氏にしてえ♡」

四人は俺に飛び掛かり、俺に抱きついてあちこちを撫で回す。ちょ…そこはやめてくれ…ぎゃぁぁぁぁ!


「うわぁぁ!」

俺は大声で叫びながら飛び起きた。あれ…?

「ゆ、夢か…。」

また変な夢を見てしまった。もう嫌…。最近俺本当に変な夢ばかり見るよな。この間テレビで腐女子特集をやってるのを見たけど、にしてもこの夢はないだろ。

「もういい。起きる。」

時刻は午前5時半。普段起きるよりも少し早いが、二度寝して寝坊するよりはマシなので、俺はそのまま起きてリビングに向かったのだ。


その朝、学校についた時。

「おっはよー!タクちゃん!」

「グッドモーニング!タクト!」

幹夫と並んで教室に向かっているときに、いつも通り寶藍とステイシーが飛びついてくる。

「ああ、おはよ…。」

「何よ、元気ないじゃない。」

寶藍が俺の顔を覗き込んでくる。

「さっきからずっとこんなんでござる!」

「タクトどうしたの?元気ないならアタシのを分けてあげるわ!」

幹夫の言葉に反応し、ステイシーは更にギュッと抱き締めてきた。

「変な夢で目が覚めて寝不足なんだよ。」

「ほほぅ、どんな夢でござるか?」

幹夫が聞いてくる。

「いや、イケメンの先輩たちに告白されまくって追いかけられてあんな事とかされる夢だ。」

俺がそう言うと寶藍とステイシーは顔を真っ赤にして言った。

「な、あんたそんな趣味があったの?」

「タクトは女の子が好きだって信じてたのに!」

「う、うるせぇ!夢の話だ!それに俺はホモじゃない!」

二人が騒いだので、俺は慌てて取り繕う。

「しかし、イケメンならモリタク殿とのカップリングは絵になると思うでござる。」

「「いちいちうるさい!!」」

勝手なことを言う幹夫を一喝する寶藍とステイシー。やれやれ、今日のことが正夢になりませんように。そう思いながら俺と幹夫は必修の教室、寶藍とステイシーは留学生クラスの教室へ向かったのだ。


「あー、食った食った。」

「次の宿題どう?」

「某はちゃんとやったでござるよ。」

昼食を終え、俺は幹夫と翔太と一緒に次の必修科目の教室にいた。俺がカバンから教材を出した時、何かが落ちるのを見た。

「何だこれ?」

見覚えがない封筒だったが、なぜか表には「森拓人君へ」と書かれている。

「モリタク、何それ?」

「分かんない。ちょっと見てみるわ。」

翔太が興味深そうに聞いてきて、俺は封筒を開ける。中には手紙が入ってあり、こう書かれていた。

【去年からあなたの事がずっと気になっていました。お話したいことがあるので、今日5/10の午後5時に記念館前の広場に来て下さい。】

はい。誰でしょう?俺の名前が書かれているから出し間違いでは無いのはわかるが、一体誰なんだ?

「ラブレターか?」

「おお、モリタク殿に春でござる!」

翔太と幹夫のテンションが上がる。しかし俺は…。

「いや、これはイタズラだな。」

冷静にそう分析した。

「なぜそう思ったでござるか?」

幹夫が聞く。

「こんなわかりやすいラブレターどう見ても怪しいだろ。多分これは岡村綾子の仕返しだろ。あいつこの間授業で当てられたの間違えて、俺が正解して正しく教えてやったのに『知ってたから!』ってキレやがって。その腹いせだろ。」

あの時の一色触発の雰囲気ヤバかったな。先生も顔が引きつってたし。

「で、どうすんだ?無視するのか?」

「いや、行って懲らしめてやる!こういう時はガツンと言わないと!」

俺は翔太にそう言う。とりあえず、イタズラなら許しておけないな。そう思いながら午後の授業が始まった。


放課後。俺は手紙に書かれていた通り、キャンパス内にある記念館前の広場にいた。ここは普段からあまり人が来ないが、ダンス部などが練習で使うこともある。午後の必修以降は幹夫たちとバラバラになったので、俺一人で来た。段々と約束の時刻が近づいてきたその時だった。

「だーれだ?」

「うわっ!何だ?」

いきなり両目を塞がれた。訳が分からないまま俺はその場に立ち尽くしかなかった。

「ざーンねん、外れ!」

両目を塞いでいた誰かの手がどけられ、俺は後ろを見る。すると、黒髪ロングで目のぱっちりした背の高い美人が笑顔で後ろにいた。

「何だ、綾瀬先輩か。」

「何だとは何よ。冷たいわねぇ。」

この人は綾瀬有希子あやせゆきこ。俺と同じ学科の1学年先輩である。一年のときからの知り合いだが、何故かこの人はやたら俺をイジってくる。顔が女優の本仮屋ユイカに似ていて、成績も良く明るい性格で友達も多い。因みに、9月からイギリスに留学するとか言ってたな。

「手紙、読んでくれた?」

「あの手紙先輩のですか!?」

「うん、君がご飯食べてる間に床に置いてあったカバンに入れさせてもらったわ。」

全く気付かなかった。にしてもどうしてだろう?

「俺に何の恨みがあって、こんなイタズラしたんですか?」

「イタズラじゃないわ…。」

俺は声を荒げたが、先輩は何故か頬を赤らめて俯いた。

「じゃあ何だって言うんですか?」

俺は更に問い詰めると、先輩は答えた。

「私ね、森君のこと…好きだったの。」

「はい…?」

意味がわからなかった。頭の中を整理しようと必死で考えていると、先輩は目を吊り上げながら俺に詰め寄ってきた。

「もう!鈍いわね!だから、私をあんたの彼女にしてって言ってるの!」

先輩はそう言った。いや、どうしよう?どうすればいいの、この状況?昨日の正夢ではないが、更に訳が分からない状況になってしまい、俺はもう黙り込むことしか出来なくなった。

こんばんわ。

今日からまた学校の話ですね。

最初の夢のくだりで「またかよ」って思った人、すみません。

つにい物語が動きましたね。

拓人君、この状況を一体どうするのか?

続きは次回です!

お楽しみに!

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