番外編 寶藍と拓人の出会い
せっかくなので書いてみました。
私は尹寶藍。韓国ソウル出身だけど、今は日本の東京都八王子市内にある西東京国際大学ヘ交換留学に来ている。私が何で日本に来たのかというと、元々日本の文化に興味あったのもそうなんだけど、日本は私にとって第二の故郷だし、日本に行けば私が昔から想いを寄せていた大切な人…そう、タクちゃんこと森拓人に会えるかもしれないと思ったから。まさかあんな形であんなにあっさり再会できるなんて思いもしなかったけど。役所の手続きの日、自己紹介をした時からよく似ているなぁと思ったけど、「森拓人です」の言葉を聞いてタクちゃんだと確信した。元々顔立ちが整っていたのは知っていたけど、14年ぶりに見たタクちゃんはあの時の面影を残しつつ、物凄い美男子に成長していた。そして私はあの時の思い出がどんどん湧き出してきて、タクちゃんへの想いもかなり強化されて蘇った。恋敵が現れたのは予想外だったけど。そんな私とタクちゃんの出会いは今から17年前に遡る…。
−17年前、9月某日、韓国ソウル市内−
「寶藍、お話があるからちょっと聞いて。」
当時、幼稚園に上がる直前だった私はママとお姉ちゃんと夕飯を食べながら話を聞いていた。
「な~に、ママ?」
私がそう言うと、ママが口を開いた。
「お姉ちゃんには昨日話したんだけど、パパのお仕事の関係で、みんなで日本にお引越しすることになったの。だから、寶藍は日本の幼稚園に行くことになるわ。」
「日本?日本ってどんな所?」
私はまだ当時3歳になったばかりで小さかったため、日本がどこにあるのか、どんな所なのか全くわからなかった。まして、外国に行くという考えすらなかった。普通の旅行感覚だったと思う。
「大丈夫。きっと良いところよ。お姉ちゃんも寶藍も楽しく過ごせるように、ママもパパも頑張るから。」
ママは笑顔でそう言った。お姉ちゃんは私の4歳年上で、小学校に上がると同時に日本の学校に通うことになっていたが、その分私よりも不安だったと思う。それから私達は日本への引っ越しの準備と並行してパパが休みの日にひらがな、カタカナ等簡単な日本語の勉強をしていた。まぁ、小さかった私はそれが外国語だとは思わず、ゲームをしているような感覚だったけど。そして時間はあっという間に経ち、私達一家は日本に飛び立ち、私は日本での家の近くにある幼稚園へ入園した。そして、入園初日、ママに幼稚園まで送ってもらった朝に私は入り口の前で言った。
「ママ。お友達できるかな?」
「大丈夫よ寶藍。きっとできるから。行ってらっしゃい!」
「うん!行ってきまーす!」
私は手を振って幼稚園に入って行った。そして、みんなで遊ぶ時間になったけど、一つ問題が出た。
「안녕하세요! 나는 윤보람!잘부탁해요!(こんにちわ!私は尹寶藍!よろしくね!)」
「ん、何言ってんの?」
「わかんなーい。」
そう、勉強したが日本語が口から出てこない。ひらがなはかろうじて読んだり書いたりは出来なくはなかったが、聞き取りがさっぱりだった。周りに韓国人はおろか、外国人自体私しかいなかったので、他の園児たちと意思疎通に困り、初日から壁にぶつかってしまった。中々誰とも話せず、困り果てていた時だった!
「ねぇ!」
後ろから肩を叩かれながら誰かが話しかけてきた。振り向くと、顔立ちがとても整っている可愛らしい男の子がいた。
「一緒に遊ばない?」
「アソ…バナイ?」
「うん!遊ぼ!」
「アソ…ボ」
「ありがとう!じゃあ行こう!」
私は彼が何を言っているのかよくわかってはいなかった。だけど、ニコニコ笑顔で話しかけてきたので、悪いようにされないのは分かった。彼は私の手を引いて、部屋の真ん中の方に移動した。そこには積み木が散らばっていた。
「一緒にお家作ろう!」
彼は積み木をそのまま積み始めた。みるみる家ができている。そこで私はようやく彼が私と積み木で遊びたいのだと理解し、自分も積み木を積んで建物を作った。
「すごーい!お城みたい!お姫様になりたいの?」
彼は笑顔で何か言っている。でも嬉しそうだったので褒められているのがわかった私は…
「うん。」
と答えた!
「へ~!じゃあ僕は王子様になろうかな?」
彼はそう言うと、私の手を取って笑顔でこう言った。
「お姫様、僕は王子です!お嫁さんになって下さい!…なーんてね!」
何を言っているかよく分からないまま手を握られて少し恥ずかしかったが、カッコイイ男の子に笑顔でお話してもらえたのは子供心に嬉しく思った。
「そーだ、お姫様!名前は何?」
男の子はそう言った。だけどどういう意味なのか初めは分からなかった。
「ナ…マエ?」
「うん、君の名前!」
ナマエ…なまえ。そういえば前にパパと一緒に勉強したときに聞いたぞ。そうだ!幼稚園のカバンと帽子に「なまえ」って言うのがあった。そうかイルムのことか!
「尹寶藍!」
「ボラムちゃん?可愛いね!俺、森拓人!宜しく!」
「モリ…タクト。」
「うん!」
「タクト…。アリガトウ!」
私は自分が使える精一杯の日本語で遊んでくれたことに感謝をした。そして、その彼=森拓人は子供心にすごく魅力的に写ったのだ。その後も彼は私と一緒に遊んでくれて、不安だった日本での幼稚園生活初日はなんとか楽しく過ごせた。そして、幼稚園から帰るとき、迎えに来たママと話をしながら家に向かっていた。
「寶藍、幼稚園どうだった?」
「楽しかった!」
「ほんと?良かった!」
「男の子が遊んでくれたの!」
「へぇ、どんな子?」
「優しくてかっこいい子!」
「良かったわね!名前は何ていうの?」
「お名前はねぇ~、森拓人!」
私は笑顔でママにそう言った。そう、これが私とタクちゃんの素敵な出会いだった。
どーもこんばんわ!
作中でも拓人君と寶藍の幼少期の思い出について何度か軽く触れましたが、この番外編にて出会ったきっかけを書いてみました。
次回は本編です!
お楽しみに!