表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/91

第9話 LOST!

秩父デートの続きです。

奥宮へ行ったあとどうなるのでしょうか?

昼食を食べ終え、俺達は三峰神社の奥宮へ向かっていた。ここから先はさっき来た道よりも険しい場所が多いので、行く前に入山届書を書くように言われている。俺達は注意書きが書かれた看板にしたがって、届書を書き、先へ進もうとした。すると…

「どうも!JBSテレビのワールドアカデミアです!インタビューしてもよろしいでしょうか?」

「いいですけど。」

「どうぞ、インタビューして頂戴!」

『ワールドアカデミア』とは、日本に住んでいる外国人をゲストに呼び、自国の文化や日本での生活ぶりなどを紹介する人気番組だ。ちなみに、俺もちゃっかり毎週見ていたりする。スタジオ内のゲスト以外にも街中の外国人にインタビューしたりしているが、まさか秩父で出くわすとは思わなかった。

「ありがとうございます。今回はパワースポット特集なので、この三峰神社まで参りました。」

「そうだったんですか。ご苦労様です。」

俺がレポーターを労ったところでインタビューが始まった。

「早速ですが、お名前お伺いしてもいいですか?」

「東京から来ました森拓人です。」

「ステイシー・バーネットです。」

「バーネットさんはどちらの国から来られました?」

「アメリカのシカゴです!」

「日本語がすごく上手ですね!因みに、お二人はどういう関係なんですか?」

レポーターが俺とステイシーを見ながら聞いてきた。まぁ、この二人で来ればみんな聞いてくるだろうなぁ。

「この子が今、僕の大学に交換留学で来ていて…」

「そしてこのイケメンは私の元ホストファミリーです。」

「ってことは、バーネットさんは大学入学前にも日本へ留学へ?」

「いえ、このイケメンが私の家にホームステイしてたんです!凄い幸せでした!」

「えっ?てことは森さんがアメリカ留学して、その時のホストファミリーと大学で再会したってことですか?」

「そうなんですよ。大学で会った時はマジでびっくりしました。」

レポーターが驚く。まぁ、こんな再会の仕方なんて滅多にないだろうしな。

「いやぁ、再会できてよかったですねぇ。ちなみにお二人はどうして今日秩父へ?」

「こいつがこの間あんま元気なかったんで、パワーをもらうために来ました。」

「なるほど。森さんはそう仰っていますけど、バーネットさん、パワーはもらえましたか?」

「神社から沢山もらえました。でも、このイケメンといるだけでも沢山パワーがもらえますけど。」

カメラの前で俺をイケメンイケメンと褒めまくるステイシー。嬉しいが、やっぱ恥ずかしい。

「なるほど。確かにお二人とも凄く美形ですね!」

「そうですか?」

俺が聞くとレポーターは…

「はい!今まで街頭インタビューした中でもトップクラスの美男美女ですよ。」

「そうなんだって!あたしたち絵になってるってよ。タクト!」

ステイシーがさらにご機嫌になって俺にしがみついてくる。え、笑顔が眩しすぎるぜ。

「お二人はこれからどうされるんですか?」

「これから僕達二人で奥宮まで行こうと思います。」

「なるほど!お時間ありがとうございました!いい休日を過ごしてください。」

「はい、こちらこそ。」

「Thank you very much!」

レポーターたちはそのまま次の人へインタビューに向かい、俺達は奥宮を目指した。山道を登っていると、木が少ないところからは遠くの景色を見ることができるのだが…

「タクト、見て!あんなにいい景色が見えるわ!」

「ホントだ!さすが秩父!」

この日の天気は快晴だったこともあり、山の間から見える景色は最高に綺麗だった。

さっきよりも狭くて険しい山道をひたすら進み、ようやく奥宮へ到着した。正直ここは奥宮以外は何もないのだが…

「すごい!今日見た景色で一番綺麗だわ、タクト!」

「そうだな。今日来れて本当によかった。」

後ろにある山々の景色が最高に奇麗なのだ。今は4月なので青々とし始めた山と澄んだ青空が見えるが、雪が降った後来ると、惚れ惚れするような雪景色が見える。どちらにしても、絶景が好きだという人には是非お勧めしたい。しばらく二人で景色を眺めた後、俺達は下山することにした。今から下りれば遅くとも夕方ぐらいには三峰口の駅に着くだろう。そう思っていたのだが…

ガサッ!

「「!!!!」」

後ろから何かが来るような音がした。俺達が後ろを振り返ると…

「「イノシシ!?」」

俺とステイシーが声をハモらせて驚く。何せ結構デカいし、牙も長い。

「タクト、大丈夫かな?」

「気にするな。刺激しなけりゃ無害だ。」

そう思っていたのだが、ドドドド…え?

「タクト!こっちに来るわ!」

「マジか!に、逃げるぞ!」

俺達は全速力で山道を駆け降りるが、イノシシはまだ追いかけてくる。追いつかれたら終わりだ。あんな牙でやられたら一溜まりもない。

「まだ追いかけてくるわよぉ!」

「しつこいぞ、このイノシシ野郎!」

走り続けてバテかけてきた。このままでは追いつかれてしまう。そう思った時だった。

「え…?」

「!!!」

ステイシーが足を滑らせて斜面に投げ出されていた。や、やばい!!!

「きゃぁぁぁぁ!」

「ステイシーィィィ!!!」

そのステイシーを助けようと俺も斜面に飛び込み、ステイシーを抱き寄せる。そしてそのまま俺達は斜面の下に転がり落ちていった。


「いってて…ここはどこだ?」

どうやら気絶していたらしい。見た感じどこもけがしていないように思えるが…

「ス、ステイシー!大丈夫か?」

俺の横でステイシーが横たわっていた。体をゆすって起こすと…

「いったぁい…何なのよあのイノシシ。あ、タクトおはよう!」

よかった、大丈夫だった。だが問題は…

「ここどこよ?」

「…わからん。」

転げ落ちた上に気絶までしていた俺らはもはや自分がどこにいるかもわからない状態だった。ケータイを見ても案の定圏外なのでGPSも使えない。

「とにかく下りるしかない。」

俺はそう言ってステイシーを立ち上がらせ、ひたすら下を目指した。だが、いくら進んでも森の中で、人気のあるところに出れる気配がしない。どうしよう、もうすぐ日が暮れるのにこれはまずいぞ。

「ねぇ、タクト。」

「どうした?」

「無人島の話知ってる?」

「いきなり何?」

無人島?まぁ、今の俺達も似たような場所にいるが…

「無人島でね、男女が一人ずつしかいない状況になるとどうなると思う?」

「どうなるって…そりゃあ助けを呼ぼうと協力するだろう?」

一体ステイシーは何を言いたいのだろう?全くわからない。

「そういうことじゃないわ。生き残った者同士、子孫を残そうとするの。」

「子孫?」

もはや何の話をしているのかわからない…するとステイシーは口元をニヤつかせて…

「つまり、あたしとタクちゃんは今、二人しかいない中、生き残るために必死になっている。」

「まぁ、そうだな。」

「だからタクト!あたしたちの子孫を残しましょう!」

そう言ってステイシーは上着脱ぎ始めた。な、何!

「ば、馬鹿!今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!」

「いいじゃない!誰も見てないし!この大自然の中、生まれたての姿でアタシ達結ばれるなんて最高じゃない!」

「やめろ!落ち着け!」

俺は全力でステイシーを押さえつけて服を脱ぐのをやめさせる。

「離して!そしてタクトも脱いで!」

「ダメだっつうの!気温が低い山の中で服なんて脱いだら四月とはいえど凍え死ぬぞ!」

何とか説得して脱ぐのをやめさせ、俺達は下山を続ける。空を見ると、もう日が沈みかけてすっかり薄暗くなっている。このまま夜になったら間違いなく遭難だ。何とか道路でも何でもいいから人が通る場所に出たい。折角留学しに日本に来たのに、遭難してエラいことになったなんて、シカゴの両親に報告できない。

「なぁ、ステイシー。」

「どうしたのタクト?」

「俺がシカゴにいた時のことは忘れていないって前に言ったよな。」

「うん。当たり前じゃない!」

「俺もだよ!あの時俺…結構悩んでたからな。」

俺はアメリカ留学時代を思い出しながら話し始めた。

「なんで?タクト最初の時点で英語凄く上手だったし、そんなに苦しんでいるように見えなかったけど。」

違う、言語の問題じゃない。もっと他のことだ。

「俺、あのとき初めて海外来たから不安でしょうがなかった。お前やお前の家族とも上手くやっていけるかなんて分からなかった。だけどお前やお義父さん、お義母さん、そしてお前の弟は外国人の俺を温かく迎えてくれた。」

「家族に優しくするのは当然でしょ!」

「そうだ!俺達は家族だ!だから、今度は俺にお前を助けさせてくれよ!」

恩があれば必ず返せ。親父がよく俺に言い聞かせた言葉だ。今、シカゴ留学中の俺を助けてくれたステイシーを助けて、恩を返さなければな!

「う、うん…ありがと…」

薄暗くてよく分からなかったが、ステイシーの頬が少し赤くなっているように見える。しばらく歩くと…

「ん?おい、やったぞ!道路だ!」

「ホントに!?やったぁ、助かったのね!」

俺たちは抱き合いながら喜び、斜面から道路に降り立った後そのまま駅を目指した。行きに来た方向とは離れた方向だったので、駅に着くまで時間がかかり、やっと到着したときには既に夜の九時半だった。

「帰ろうか。」

「うん!」

俺達は電車に乗り込み、疲れていたので椅子に座って身体を休めた。

「すまなかったな。折角の休日にこんなことになって…」

「いいの!タクトといっぱいお話しできたし!」

「今度はみんなでもっと楽しい所行こうぜ。」

「OK!」

なんてことを話しながら、家を目指す。そして八王子駅に着く頃には既に日付が変わっていた。

「じゃあな、ステイシー!」

「Good bye!タクト、今日はありがとう!」

八王子駅で俺たちは別れ、それぞれの家に向かった。

とにかく疲れた。早く帰って寝よう。

そして俺は家に着き、そのまま部屋に行き、着替えないままぐっすりと眠りについた。

今回は今のところ一番長い話だったと思います。

皆さんも山に出かけた時はくれぐれも注意してください。

僕も注意します。

前回、前々回は寶藍が登場しなかったので次回出そうと思います。

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ