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『おや、わかっていたのですか?今まで伝言魔法を管理、補給していたのがあなたの先生だったと』





「え……僕の、先生?」




『やっぱり、覚えてませんか……あなたの先生は負荷がかかる記憶を片っぱしから消して……私は甘やかしません。これからあなたの経験は全て消さない』




「…………」





『もう子供のままではいけません』




観月さんが爽やかに微笑む。




僕が何も知らなかったり、覚えてなかったりするのは、先生、が意図的にしていたことだった?




必要な知識だけ残して、それに付随する思い出みたいなものは消されていたのか





『と、いっても……あなたには一億件以上の伝言魔法があってですね……』





「い、いちおく!!」





それほどの伝言、どうやって集められたのか……僕にその記憶はない。




『あなたの脳ミソが燃えてしまう量の伝言です』




観月さんは真剣につぶやく。





「燃える………」




『この楠瀬凛の記憶、これは必要ですか?』




どこからかノートが観月さんの手元に現れ、彼はそこに何やらペンで書き込んでいた。




「んん?ん!あ、はい!ひ、必要です!!」




大慌てで観月さんにすがりつく。




幻影なのにちゃんと感触があった。





『……ちっ……では、これまでの旅の経験を消しましょう。しばらく山歩きなどはやりにくいかもしれませんが、身体がだいたい覚えてますから大丈夫です』





舌打ちした……





『まあ、負荷がかかりそうになったらこうやって相談しますから、勝手に好きな女の記憶は消しませんから』




「っ!」



顔に火がついたみたいに熱い。






『やれやれ、若いですね』





観月さんが困ったように肩をすくめ、ノートとペンを上着の内側に仕舞った。







『では、私はこれから滅多には出てこれません。あなたの一部になり、自我を二の次三の次にして仕事をしますので、話しかけないでくださいね。絶対に答えませんから。さっき言ったように負荷がかかりそうになった時だけ出ますから』






「……さ、さみしいですね」





『あなたは一人です。でも、これからは私があなたの中に居るのを忘れないでしょう?』





観月さんは僕の頭に手をのせる。




『……では、私はこれで、たっぷりとあなたの透明を堪能してきます』





言うと同時に観月さんの幻影が消えた。





「………」



胸に手をあてる。




僕の中に観月さんが居てくれる。





こそばゆい。





真新しい兄さんができたみたいだ。




「ふふ……」





思わず笑うと、乾いた涙で頬がうまく上がらなかった。





今までの先生はどうなったのかな?



まあ、次、観月さんに会えたとき聞こう!



自分の勝手な約束さえも嬉しい。




一人じゃない。










「よかったね~~~~」






目の前に、顔中血だらけの凛さんが押し迫っていて僕は天地が反転している現実に気がつく。







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