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目をひらくと朝焼けなのか夕焼けなのかわからないくらい空が燃えていた。
身体を動かそうとすると、きしんで痛かった。
重い……
身体がとてつもなく重い。
鉛でも詰められたみたいに重い。
「くっ………」
あんまり空が不穏な色なので、僕はたまらずどうにか起き上がった。
そこはただ荒れ地が広がる平原だった。
地平線の向こうに夜がいる。
時間の感覚がつかめない……
空気は寒くも暑くもない。
重い身体を引きずるように立ち上がると浴衣姿の自分に気づいた。
そうだった……
そうだったよ……
皆、無事なのか?
空を見上げホテルクエンジーを探すが、浮かんでいるのはちぎったような雲だけだった。
「……はぁ……」
ため息をはいてもちっとも軽くなんかならい。
僕はこれからどうすればいいのか……
しばらくすればこの足は、目的地へと勝手に進むだろう。
失った荷物もたいした物は入ってなかった。
服は……少し不便だけど、大丈夫。
食料の調達がこの下駄ではキツイ。
でも、まあ魚なら……下駄、関係ないし
「…………………」
流れ出した涙は大量でぬぐってもぬぐっても追いつかない。
自分が何でこんなに泣くのかわからなかった。
一人でこの広い平原の真ん中で……
「……っ……っ……」
さみしい
さみしいよ
スミレ様
レイモンドさん
皐月さん
観月さん
「……りん……」
その名を口にした途端、凛さんとの時間が一気に僕の頭の中で鮮明によみがえる。
不幸って本当はこういうことなのかな?
幸せを知ってしまった僕の今までの不幸なんて不幸じゃない。
孤独で心がかきむしられるほど誰かに焦がれるのは…………しんどすぎる……
『やっと呼びましたね』
「………」
僕の中に声がした。
神様がしゃべった……?
でも、神様はいつも声はださない。




