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頭が割れそうなほどの鐘の音が私の全身に響く。
魔力が勝手に発動し私の視界をズームアップさせる。
「…………」
落ちてゆく瓦礫の中に私がいた。
白衣を血で染めあがくこともしないであっけなく落ちている。
完全に意識をこちらに持ってきていたのでどうしてそうなったのかまったくわからない。
鐘は鳴り止み、私の命が終わりを迎えた。
「…………」
レイモンドとスミレが残った建物の際で客を脱出シェルターへ誘導していた。
まったく……
客どころじゃないのに……
私はこの身体に残った楠瀬凛の残りわずかな魂に魔力を注入する。
共有済みのこの身体が死体になるのも時間の問題だった。
お願い
もう少し、もう少しだけもってちょうだい
魔力を振り撒きながら残った建物の周りを飛び、結界を張った。
できるだけ脱出シェルターへ行き着ける為の応急措置だった。
結界にぶつかって落ちる魔法使いもいたがかまう余裕はない。
皐月が鎖を引きちぎって私を見上げた。
赤い、紅い……目……
ここまでか…………
伝書鳩が結界ごと落ちているのが見えた。
ほほえんでいる……
どうして?
私を見て黒い目で優しく笑ってる…….
「………あ………」
私は頭の中で弾けるように思い出す。
誰が言ってたのか……
伝書鳩……魔力を持たない人間は絶滅の危機を迎え生き延びる方法として………
私は向かってくる皐月めがけて急降下をはじめた。
皐月が私に拳を降り下ろし叩きつけようとする。
残りの魔力を全て使い皐月の拳をつかむ。
そして伝書鳩の結界へ皐月と一緒にさらに急降下した。




