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あいにく私が使える魔法は共有と結界に特化している。




だからレイモンドとスミレの周りに結界の盾を作り出すのが精一杯だ。




盾の強度が足りなかったのか皐月の魔力が大きすぎるのか、刃物と化した風は僅かに軌道をそらしただけで結界を消し去りレイモンドとスミレの間を突き抜けた。




「レイ様!」




「スミレ!」





つないでいた二人の手が風の勢いでほどける。





二人の背後からまた次々と衝撃波が襲いかかろうとしていた。




私は躊躇した。




刹那より短い時だけ迷った。





今、二人を助けるにはありったけの魔力が必要不可欠で、そうしたとしたら私の望みは叶わなくなる。






魔力を戦争で傷ついた世界の修復の為に全て使う。



私の魔力も息子の魔力も、もちろん含まれる。



全ての人間をそっと息絶えらせ魔法を自然に還す、とても綺麗な終焉。




私の全て




私の何よりも大切な望み






でも…………





どうせ死ぬ、死ぬけれど、今は…これは…だめ。



だめよ。レイモンド。







もう私は母の備蓄魔法から全てを吐き出していた。





風の刃を結界で跳ね返し、皐月の身体を鎖状の魔力で縛りつける。






「母さんっ…」





レイモンドがこちらを振り返り、楠瀬凛の姿をした私を一瞬で見破った。





「レイ!皐月はもう止められない、スミレの魔法も弾かれる。私が逃げながら皐月の魔力を弱らせるから遠くへ避難しなさい!!」





「お客様が……!」



スミレを引き寄せながらレイモンドが周りの惨状に表情を歪める。





「半分以上は上の階へ逃げてる!レイはスミレのことだけ全力で守りなさい!」





こんな状況で何がお客様だ!


ババアにすっかり洗脳されて……



大事なものはたった一つだけなのよ。レイモンド…






皐月が鎖を巻いていくさきから身体をよじるだけでちぎっていく。




鎖の連鎖が止まらぬように意識を集中する。




「……母さん」





「行きなさい!」





もうレイモンドを見る余裕すらない。




皐月はとんでもない魔力の持ち主だ。





怒りと絶望が魔力を駆り立て、増幅、凝縮してゆく。





レイモンドはスミレと逃げただろうか?





集中が度を越えて神経回路が切断される音が聴こえる。









思えば私はレイモンドをまともに育ててこなかった。





いつも自分の研究が最優先で、孫には優しかった母に押しつけていた。






レイモンドに興味が持てなくて、彼も私に距離をおいていて、親子なんて名ばかり……





ごめんねレイモンド……





母さん、馬鹿だ。








「うおおおおおおおおん!!!!!!!」





皐月が咆哮をあげるとそれだけで声の反響した壁がひび割れ崩れ始める。






私は鎖を諦めて、ぽっかりと姿をあらわした夜空に向かって飛んだ。




ホテルは半分に割られ危ういバランスで何とか形を保っていた。



割れ目にそって夜空を目指す。




皐月がまた吼える。





反響の衝撃でホテル左側が崩れ落ちてゆく。





たくさんの瓦礫が人々と共に地上へ消えた。












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