62
断片的な記憶のなかで、少年は私を懸命に看病してくれた。
少年の背中に背負われ、このまま死ねたらどんなに幸せだろうと、夢見心地だった。
少年と私は空を飛んだ。
もう残りわずかな意識で見たのは、空に浮いた建物だった。
意識を取り戻すと、細胞再生装置のカプセルの中だった。
世界最高の医療器具だ。
驚きながら外の様子を眺める。
何人かの人間が私のカプセルの周りを取り囲んでいる。
マスク姿で、目は皆、緑色だった。
空に浮いた建物
緑色の目
私が読んだ資料は本当のことを書いていたのだろうか?
だったらこの人たちは生命の共有ができることになる。
とりとめのない考えをまとめる前に私は再び眠る。
カプセルから出されると、何本かの注射と点滴で体調を整えられた。
魔力が強い薬剤なのか、私は両足で立ち上がることができ、食事も普通に食べられた。
ただ、魔力はまだ回復しておらず、変な感じだ。
医師には二、三時間くらいで元に戻ると説明され、そして、出来るだけ歩いて身体が覚えているダメージを「塗り替えろ」と言われた。
確かに背中に違和感は残っている。
一応、杖を渡され医療フロアの中をぎこちなく歩く。
五分もたたないうちに頭が重くなり、足が地を踏む感覚が怪しくなった。
壁にもたれて休んでいると、アナウンスで歩き続けろと医師の声がする。
私はため息をついて一歩踏み出すと、さっきよりも足がふらついた。
杖に体重を預けようとすると、バランスが取れず派手に転んでしまう。
背中に激痛が走り、私はたまらず身体をまるめた。




