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夜空が堕ちてくる……




星が弾かれるように移動しては光を失ってゆく。




瓦屋根の平屋も塵になり、石段も地面も透明になる。




何もない白い空間に僕だけが居た。





「…………」




僕は涙を浴衣の裾で拭い、辺りを見回す。




ただ……白い、白いだけ。







キュルキュルと、何重にも音が聞こえだす。





その音は重なったりずれたりしていて、何人もの魔法使いがそれぞれに魔法を使い始めたようだ。




どぉん、と遠くで鳴り、白い空間が小刻みに揺れる。




やがて、轟音が近づき、人々の悲鳴が響きだした。




胸の奥がざわつく。





黄色い目の残像が鮮明さを取り戻して、僕は嫌な予感がした。




揺れが激しくなり、足がバランスを取れなくなった。



僕は床にしりもちをついてしまう。




どぉん!



どぉん!




音がすぐそこまで来ている。




白い空間の壁に黒い亀裂が走った。




「うっ……」



亀裂は枝分かれにこの空間すべてに行き渡り、ひび割れだらけになる。




立ち上がりたいのに、揺れてとてもじゃないが、膝さえ立てられない。




ついに亀裂の一つが外側から破られ、ぽっかりと黒い口を開けた。



たくさんの叫び声が一気に流れ込んでくる。



僕は思わず耳をふさいだ。



断末魔




命が無理やり剥ぎ取られた証。




僕は目も閉じて、暗闇に逃れた。




しかし、空気を感じることは逃れられない。



無機質なさっきまでの空気が、一気に血生臭いものに変わる。




身体が一瞬、浮いたように感じて思わず目を開けてしまった。



人が次々と落下していた。



地上へ………



僕のすぐ横の地面は存在せず、少し手を伸ばせば簡単に落ちてしまいそうだった。



上を見上げると、本物の夜空が月明かりに照らされて深い蒼をさらけだす。



あまりに大きな満月にぞっとした。




その満月に被さるように、このホテルの建物が半分、消滅している。



それぞれの階に逃げ散った人々が、右往左往しているのがここからはよく見える。



閃光がその周りを何回も飛び回っていた。




「………凛さん!」



まばゆい光の中には確かに凛さんがいた。




凛さんは逃げ惑う人々を攻撃するでもなく、魔法で攻撃されても避けるだけだった。



「凛さーん!」



僕は叫んだ。




しかし、風と魔法と叫び声で到底届きそうもない。




凛さんは旋回を止めず、攻撃の手は激しくなり、建物がまた一部崩れ落ちる。



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