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「…目が黒い」
面をつけた大男が呟く。
僕は愕然として大男の背後の光景に釘付けになった。
血の海の上に何人もの人間が倒れている。
うっそうとしげっていた木や雑草が血の海を避けるようにそこだけ無くなっている。
「年寄りの伝書鳩か」
面の下で大男が鼻で笑う。
僕は大男を見上げた。
目のくりぬかれた穴の奥で恐怖を忘れそうなほどに綺麗な紫色の瞳が光る。
「生きていたくない程度に痛めつけてやろうか」
楽しげに大男が言う。
そして手に持っていた長い剣を振りかざす。
逃げなければ。
どうにかして逃げなければ。
僕は震えが止まらない足に力をいれる。
しかし腰が抜けて立ち上がれない。
「た…助け…くだ…」
歯の根が合わない。
「魔法が使えない奴は命乞いもまともにできねえらしいな」
大男は吹き出しながら剣を降り下ろした。




