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テーブルにスミレ様が一口かじった焼菓子が落ちる。



顔をあげると、案の定、夕焼け色の目を涙でなみなみとひたしていた。


「すみません!ごめんなさい!」


僕は椅子からおりて、スミレ様の足元に跪く。



「うっ…うぅぅ……」


スミレ様は首を必死に左右に振った。


「……ごめん……」


どうしたらいいかわからず、もう一度だけ謝る。


「ううう!」


ついにスミレ様の夕焼け色の目から涙が大量にこぼれる。


僕は自分のハンカチをズボンのポケットから取り出した。


「あの…これ…」


スミレ様は身体をびくつかせ、僕のハンカチを見た。


「うっ………!」



「っ……」


甘い湿った匂いが降ってくる。


ぬるい温度としっかりとした重みは僕を一瞬で暖めた。



「わ、わたしっ……ごめ……おまえの……気持ち…わかって…やれなくて…自分のこと……ばっか、りで……」



僕の胸の中で、スミレ様の声が響く。


熱い息が服ごしに伝わる。



震える身体は僕にすっぽり収まってしまっていて、以外に思った。


しばらくスミレ様はそのまま震え続けた。


「スミレ様……」


ぎこちなくスミレ様の背中に手をあてる。


「……勝手に傷ついて悪かった……」



少し落ち着いたのか、スミレ様の声が波打たなくなっていた。



「いえ……取り乱した僕が……」


「もう謝るな」


スミレ様が顔をあげた。


涙はなかったが、頬が上気して鼻の頭が赤い。



「あの女は助かる。大丈夫だ。安心しろ」


僕の腕の中で眉間に力を込めてスミレ様が断言した。



「は、はい……」


死なない、あの黄色い目の人は死なない……


大丈夫、大丈夫なんだ。



スミレ様の言葉を反芻しながらそうやって自分に言い聞かせているうちに、どうしようもなく彼女に会いたくなってしまった。



ちょっと子供っぽいしゃべり方なとこ、なのにすごく優しい言葉が僕を安心させてくれた。


それにあのかわいい寝顔が僕の奥に焼きついてしまったみたいだ。



「おまえ……せっかく私が抱かれてやってるのに、気もそぞろだな」


「え!?」


スミレ様が僕の背中に両腕をまわし、ぎゅっと絞めつけた。



「あれ?お邪魔だったかい?」



突如、声がしたと思ったら、スミレ様が勢いよく顔をあげ、僕を突き飛ばした。



「レイ様!」


スミレ様が声の方へ走って行く。



僕は床に倒されて、したたかに後頭部をぶつけた。


起き上がると、胸元がスミレ様の涙と鼻水でぐしゃぐしゃに濡れていることに驚いた。

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