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僕は向こうから見えないように、さらに木の陰に身を隠した。
こんな至近距離で争いに出くわしたのは初めてだ。
感じたことのない気配が僕の思考を支配する。心が凍りついた。
これが殺気…
もう、殺されるしかない。
それしか考えられない。
諦め、失望、そんなものじゃない決定的な確信だ。
神様、神様。
僕は必死に心の中で叫んだ。
背後から怒声や魔法の爆発音が絶え間なく続いて、僕は息が荒くなり口を手でふさぐ。
誰かの断末魔が響き、誰かが狂ったように笑う。
血の匂いが鼻をつく。
僕の足元に血が流れてきていた。
その血があまりにも多量で思わずしりもちをついてしまった。
何か折れる感触がした。枝が落ちていたのか。
騒がしい背後が突然静かになる。
まさか…気づかれた?
僕は口に当てた手を握りしめ息を止めた。
神様は息を止めると気配が薄くなると教えてくれたのだ。
不自然な静寂が続く。
早くどっか行ってくれ!
心の中で叫んだ瞬間、僕の頭上に木が飛んだ。
爆発音と木が上げた悲鳴に僕の頭は真っ白になる。
飛んだ木は僕の目の前に生えた方とは逆に落ちる。
僕は振り返った。
振り返る勇気も、つもりもないのに、振り返っていた。
僕が隠れていた大きな木は僕の頭のすぐ上から無くなってしまっている。
鉄製の面をつけた大男が木の向こうから僕を見下ろしていた。




