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僕は慌てて紅茶を流し込む。
「あちっ!」
紅茶はまだ熱く舌を火傷してしまった。
「大丈夫ですか?」
皐月さんが水をトレイにのせて部屋に入ってきた。
「どうぞ」
冷えた水を手渡され、僕は会釈もそこそこに水を飲み干した。
「…あ、ありがとうございます…」
「ふふ…どういたしまして」
皐月さんは微笑んで僕のコップに水を注ぎ足す。
「スミレ様のお菓子、甘いでしょ」
スミレ様が座っていた席に皐月さんが座る。
「……」
僕は正直に言っていいものか迷ってしまう。
「ふふ…」
皐月さんは僕の頭を撫でる。
「あんな嬉しそうなスミレ様を久しぶりに見ました。ありがとうございます」
皐月さんの顔が思いの外近くにあって僕はうつむいてしまった。
「…わたくしは観月兄さんみたいに心を読めません…もしかして無理なさってるなら言ってくださいね」
「あ、ち、違います…あの…ただ恥ずかしくて…」
僕は皐月さんの気を害さぬよう顔をあげたが、彼女があまりに綺麗だったので言っているうちにまた顔を下げてしまう。
「皐月!こいつに何をした!顔が真っ赤だぞっ」
部屋の扉を勢いよく開け放ち、スミレ様が入ってきた。
両手に持っているグラスに色とりどりのアイスクリームが詰められて…
とても甘そうだ…
「何もしてませんよ、ふふ…じゃあわたくしは九炎寺様のご葬儀の準備に行って参ります」
皐月さんは立ち上がり、スミレ様の頭を一撫でして部屋を出ていく。
スミレ様はムッとして目を伏せたまま、皐月さんが扉を閉めるまでその場を動かなかった。
おばあさんは死んだんですか?
そう訊きたかったけれど、さっきの今なので、僕は口を閉じた。
この少女はとても傷つきやすそうで、あまり泣かしてしまうと壊れそうな気がした。




