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「馬鹿なことしてないでさっさと案内しなさいよ!会長が危篤寸前なのわかってるでしょ!」


箱のような部屋の扉がいつの間にか開いており、よれた服を忌々しげに直す観月さんの隣には女の人がいた。


観月さんと同じ赤い目をしした女の人で、両手を腰にあて唇を尖らせている。


「はいはい…ちょっと遊んでただけだよ」


うんざりした様子で観月さんが女の人を見下ろす。


「あ…失礼しました。お客様、こちらへ」


女の人が僕の視線に気づき、尖らせた唇の両端をきゅっと引き上げる。


「はぁ…」


僕がおずおずと箱の部屋から出ると、長い廊下が左右にのびていた。


「わたくし会長の第二秘書をしております皐月と申します。こちらの観月はわたくしの兄でして…日々色々な方の心を読んでしまうので少々すさんだ性格をしております。どうかお許しください」


皐月さんは僕に深々と頭を下げた。


「え…」


僕は怒ってたのだろうか…

胸元を圧迫されて苦しかったけれど…


「お客様はお怒りでないそうだ。行くぞ」


読心魔術とやらで僕の心を読んだように観月さんはきっぱりと言い切り、颯爽と廊下を右に進む。


「わざわざ読まなくてもあなた様の顔を見ればわかります」


今度こそきっと読心魔術を使ったらしい観月さんが立ち止まり、振り返らずに言った。


「兄さん!」


皐月さんが肩を怒らせた。


「あの…喧嘩は…僕は気にしてませんし…」


皐月さんは僕を睨みつけたかと思うと、すぐに泣き出しそうな顔になる。


「まったくいい子なんだから…お姉さんがヨシヨシしてあげようか?」


「ええ!」


僕が驚くと皐月さんは嬉しそうに笑い、本当に僕の頭を優しく撫でた。



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