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観月さんの目と口が切り裂いたような形になる。
笑っているんだ……
この笑顔が観月さんの本当だ。僕をもてなした微笑みは仕事用なんだ。
そう直感した。
観月さんが僕の胸元を掌で押しつける。
もちろん僕は抵抗しようとしたが力が強すぎて腕さえ上げられない。
たぶん、音はしなかったけれど魔法で動けないのだ。
「あなたは孤独を嘆くけれど、孤独がゆえに今まで生きてこられたのです。そんなに素直では誰かの食い物にされていたに違いない」
観月さんが嬉しそうに切り裂いた笑顔で僕を見つめる。
胸が押さえつけられて苦しい…
どうして観月さんはそんなことを言うのだろう…
「やめて…やめてくれ…苦しい…」
「無知ゆえに無垢。いろんな人の手垢がつけばあなた様も汚れるのか…」
観月さんの茶色い目が溶けて血のように赤い目が現れた。
この人は何なのだ。
僕をどう思っているのか。
「観月兄さん!なーにやってんだ!」
この重たい空気を弾くような高い声が響く。
僕の胸元を圧迫していた掌が外れ、観月さんの身体が後ろに引っ張られた。




