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僕は、きっと壁であろう箇所に手をあてると…ちゃんと壁があった。


「わぁ…すごい…どうなってんだ?」


足元もその場で何回か踏みしめてみると、床の感触と音がした。


だんだん面白くなってきて周りの景色を眺める余裕もうまれる。


僕が最初に居た壺だけが飾られた所とは違い、上から下に流れる景色は見たこともない物であふれていた。


たくさん宝石がついて天井から吊り下げられているランプみたいなのや、思わずかじってみたくなる砂糖菓子のような机や椅子。

それに何よりも、様々な面や布で顔を隠した魔法使い達がどこか楽しげに談笑したり、ソファーに座ってくつろいだりしていた。


そして、観月さんと同じ色の服を着た人や、僕らを並んで出迎えてくれた人達と同じ色の服を着た人達が魔法使いの荷物を運んだり、案内をしている。


「すごいコミュニティーですね…」


呟き終わる前に壁や床の色が戻ってきて、さっきまで目に映っていた光景は僕の中にぼんやりとした余韻を残した。


「お客様、コミュニティーではありません。ホテルでございます」


観月さんが真剣な表情で僕を見る。



「このホテルクエンジーでは一時でも戦争を忘れ、日常を忘れ、お客様達に心からくつろいでいただきたい。その為に最高のサービスを提供させていただくのがわたくしどもの仕事でございます」


観月さんは言い終わると微笑んだ。


「……僕にはわからないことだらけですが…すごく、すごく、素敵な仕事だということは僕にもわかりました」


言ってるうちに照れてしまい、頬が熱くなる。


神様も仕事があることは素敵なことだ、と泣きたくなる夜に何度か言ってくれた。


その時はただの慰めだと思っていたけれど、観月さんはそのお手本のような人だ。



「……それは…どうも…」


不意に観月さんが驚いた顔をした。


ポカンと少し開いた口元が彼を幼く見せる。


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