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観月さんが心配そうな表情を浮かべ、黄色い目の人を僕越しに見る。
「は、はい!あの、背中を斬られて…えっと、魔法の薬で症状を抑えてますが、あの、副作用?で…」
「承知いたしました」
片手を上げて僕のつたない説明を止め、観月さんは耳の穴を指で少し押すとぼそぼそと何やら呟く。
「お客様、ご心配はいりません」
ぱっと僕の方を向いた観月さんは笑顔で言い、並んでいる人達の一人に目配せをする。
観月さんより頭ひとつ背の高い男の人がこちらに歩いてきて、「失礼いたします」と、一礼して黄色い目の人を簡単に抱き上げた。
「あっ!あの!」
僕は戸惑い男の人を止めようとした。
観月さんが素早く僕と黄色い目の人をどこかへ連れて行く男の人の間へ割り込んで、微笑む。
「一刻を争うご様子ですので手順を少々はぶかせて頂きますがご安心を、クエンジーの専属魔法医師はこの世で一番の腕を持っております」
「…た、助かりますか?」
この人達は僕の知っている魔法使いと違うことは、ずっと感じていた。
まず、顔を隠していない。
そして、僕が偉い人のような丁寧な対応。
今にも襲ってきそうな気配はない。
とは言っても手放しには信用できない。
しかし、信用できないとは言っても、僕にはこれ以上なにもできないのだ。
「あの方の病状はわたくしには分かりかねますので不用意な発言は控えさせていただきます。しかし、希望はある、と断言はさせていただきます。最新の設備、最高の医師がこのホテルクエンジーにはあるのです」
「……」
「お客様、この誇りに免じて今はわたくしどもにあのお方をお預けくださいませ」
観月さんはさっきよりも深いお辞儀をした。
その言葉、仕草、姿勢、伝わる想いが全てきっちりとして乱れがない。
僕は心を打たれた。
僕よりはるかに上等な人だ。
頼るしかない。
こうして僕が納得するように説得してくれている。
僕なんかに…
驚くくらいに誠実に。




