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一秒も待たされていないのに、と思っていたら浮き上がる身体に圧力がかかった。

地上がさらに速く遠くなる。雲を突き抜け、突然の寒さが身震いをさせる。


雲が内海に浮かぶ島のように点在する空中で僕の上昇は止まった。

「何がなにやら…」

踏みごたえのない足が心もとない。

黄色い目の人の様子が気になり、振り返ろうとしたと同時に頭上の太陽が激しく光った。


目を開けてられない。

白い閃光が僕らの姿を消し飛ばす。


次に目を開けると、眩しさの余韻に視点が定まらなかった。


「ようこそいらっしゃいませ!」


「え?」


やっと視点が定まると、僕は驚きのあまり黄色い目の人を落としそうになった。


僕の左右には同じ服を身につけた人達が頭を下げて、ずらりと並んでいる。

キラキラと光るくらい磨かれた床、所々に飾られている壺はきっと使う為の物じゃないことがわかるくらい高価そうだ。




「ようこそ、ホテルクエンジーへ」

目の前の階段から誰かがおりてくる。

僕らの左右に並んでいる人達とは色違いの服を着ている。

姿勢よく、颯爽とこちらに歩いてくる。

しかし、血のように赤い目が不用意な行動を押さえつけるような威圧感があった。


僕の三歩手前で歩みを止めると、赤い目の人が丁寧なお辞儀をする。


「わたくし、当ホテルのコンシェルジュを担当しております、観月と申します」

「こん?」

聞き慣れない言葉に戸惑うと、観月と名乗った青年が微笑む。

「お客様の希望をかなえるよう尽力いたします。それがわたくしの仕事です」


はっきりとした発声で、僕に理解させてくれようと言ってくれた、と伝わった。


でも…ホテルってなんだろう?お客様のご希望をかなえるって、魔法の一種なのか?


「お客様、失礼ですが…後ろの方は具合がお悪いのでしょうか?」

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