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この人は…

鼻がつんと痛み、視界が歪む。

袖で顔を拭うと僕は再度水筒の水で手を洗い、巻き散らかした荷物を片付けた。

なんとか目の黄色い人を背負い、歩き出す。



あの場に留まっていては危険と思い進んでいるが、僕は次のコミュニティーに行くしかできない。

着いた所で、この人は助かるかわからない。


それでも…

それでも!



目の黄色い人は全く目をさます気配がない。

僕が縫った背中の傷は痛々しく腫れ上がり、きれいな川の水で何度も洗い流したが、熱を持ち続けた。


僕の無力さ、いや、魔法が使えない人間であることが悔しさをつのらせる。

つのらせた所で何もできない虚しさが僕に諦めをちらつかせた。


やがて日が暮れて前に進むこともできなくなった。


野宿にちょうどいい奥の浅い洞穴に入る。

目の黄色い人を慎重に地面におろした。

仕立てのよい高級そうなこの人の服が、血と傷を洗った水と僕の大量の汗で無惨に汚れている。

僕は自分のリュックを身体の前から下ろし、あるコミュニティーでもらった使っていない毛布を取り出した。

「……」

服を脱がせていいものか迷う。

手が柔らかかった記憶がよみがえり鼓動が乱れた。

でも、濡れた服を乾かさないと、昼間は暖かかったが森の夜は冷える。

もう空が薄い紫に色を変え、この洞穴の中に闇をつくり始めた。


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