12
血でぬめって指から針が何度も離れる。
魔法が使えたら…
魔法が使えたら…
傷口を左手でふさぎながら右手で縫う。
ひどくもたついて、きっとこの人ならもうとっくに終わっている。
絶え間なく溢れる血に、猶予のなさが現実味を帯びてきた。
この人は僕を襲った大男に斬られたのだ。
それでもどうにかして木にくくりつけ、自分は応急処置しかせず、僕を助けてくれたのだろう。
魔法なんてなければ、この人はこんな目に合わなかった。
僕なんかを助けずにすんだ。
そもそも、僕だって斬られなかった。
僕の両手が目の黄色い人の血にすっかり染まった頃、最後の一針をやっと縫い終える。
この人は助かるのだろうか?
座り込んで膝を抱えた。
手についたままの血が乾きはじめて粘りけをだす。
目の黄色い人は荒い呼吸を木の面の下で繰り返す。
のけてあげたほうがいいのかな…
今まで見かけた魔法使いは皆、面や顔のほとんどを隠す布をつけていた。
僕の知らない決まりでもあるのだろう。
僕はそんなのつけたことないし、神様だってつけろと言わない。
僕は目の黄色い人の面に触れる。
熱い息が顔と面の隙間から漏れていた。
苦しいだろうな…
面を少しだけ持ち上げた。
小さな顎があらわれ、半開きの唇が見えた。
唇の表面は乾燥してささくれだっている。
出しっぱなしの水筒を取ってハンカチを濡らす。
絞らずにそのまま目の黄色い人の唇を湿らした。
「あ…」
手の血が濡れたハンカチに滲む。




