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「あっ!もしかして傷が痛い?ごめんね!重かったね!」
黄色い目の人が慌てて頭をどける。
「救ったって言っても保障魔法があったからだけどね。時間がかかるけど傷口もふさがるんだよ。完全自己満足だね!へへ…」
「それでも!」僕は黄色い目の人の手を握った。
「それでも…僕はあなたがいてくれて…よ、よかった…」
勢いで握った手がおもいのほか柔らかくて、また僕は恥ずかしくなる。
言い終わると僕はすぐに手を離した。
…つもりだった。
黄色い目の人が離してくれず、もっと手の柔らかさを思い知った。
「へへ…うん。分かったよ」
熱い手だ。
燃えるように熱い。
あれからずっと声も身体も震えているし、具合が悪いのかもしれない。
「あの…」
「ごめんね…伝書鳩くん…もう……」
手を握ったまま黄色い目の人が僕を避けて地面に倒れる。
「え…」
黄色い目の人の服の背中が縦に斬られたように破けていた。
「え?え?…あの…」
僕は混乱して黄色い目の人の身体を軽く揺さぶる。
どういうことだ?
どうしてこの人は傷も無いのに服だけが破けているのか。
その部分を凝視していると、破けた部分から見える肌に赤い線が縦に走る。
「!?…」
驚いているうちに、線がぱっくり割れた。
鮮やかな赤い肉。
どういうことだ?
どうして急にこんなことになった?
僕は立ち上がり、辺りを見回す。
ここは僕が斬られた場所だった。
血の海は土に染み込み、赤黒く地面の色を変えていて、殺されたままの格好で倒れていた人は胸の上で手を組み寝かされている。
僕を斬った大男は、真後ろから離れた木に縄でくくりつけられ頭を垂れていた。
「…………」
考えろ。
何が起こったのか。
どうすればいいのか。
神様、神様…
「くっ…!」
僕はしゃがみこんで黄色い目の人が針と糸をしまっていた腰元の袋を開ける。
袋の底を持ち上げ、中身を地面にばらまいた。
針と糸が入った入れ物を手に取る。
濃い茶色の木箱で、蓋を開けると中でばらけないよう仕切りにそって入れられていた。
取り出そうとして気づく。
僕の手は自分の血と土で汚れていた。
自分のカバンから水筒を出して手をゆすぐ。
視線をずらし、黄色い目の人の背中の傷を見ると、血が溜まっている。
この人に保障魔法とやらはかかっているのだろうか?
でも、この人の仲間は死んだ。
じゃあきっとこの人にもかかっていない。
「はやく!」
自分に言い聞かせ、針と糸を手に持つ。
針の穴に糸を通す。
「………」
傷の端の針を刺した。
「うっ……」
気を失っている黄色い目の人がうめいたが、身体は動かなかった。
僕には痛みを取る魔法なんて使えない。
ましてや、溢れてきている血を止めることもできない。
でも、この傷をふさがないと、この人は…
「ごめんなさい…」
僕は意を決して縫い進め始めた。
自分の服を繕った経験すらない、ただ、この人が僕にしてくれたことを思い出してできることを……




