お味噌を買いに!
味噌汁の話ではありません。
遥か昔、戦いに負け、森の奥に薄暗いところに静かな城があった。そこは、ツタが絡み窓は割れ不気味なところだったそうだ。
時は現代。そこは、ある老夫婦の持ち物であった。
「あなた〜ちょっとコッチへ来てくれませんか?」
おばあさんのルイーダさんがおじいさんのアルゲルダに呼びかける。
「なんだい、どうしたんだね。」
何ともない返事が帰ってくる。
「何だっけなぁ~ 忘れてしまったわ…」
「そうかい、思い出したら呼んどくれ。」
何もない、普通の会話が続く…
半年が過ぎ、
「おばあさんや。」
「誰がおばあさんや。いい加減にしときなはれ」
「………はい。」
この半年でルイーダは物忘れが激しくなり、時にはアルゲルダの事も忘れてしまうぐらいに悪化していた。
夜、はぁーとため息をつく。ルイーダを元に戻すにはどうすればいいのだろうか?
次の日、孫が遊びに来た。
「おじいちゃん、久しぶり〜」
今年で、中学一年になる女の子だ。
「元気にしてる〜」
「まぁね。」
この時にすでにどす黒い何かがあった。
「誰だね。この子は。」
「……」
「孫じゃないですか。」
「はて、このような子はいたかの。」
孫はうつむいている。ふと、こちらを覗き込む。
「もう年なんだよ。」
「誰が年じゃ!」
そう言うと去って行ってしまった。孫はコクリとうなづいたが、下をみたままだ。
「今日は泊まって行くのかい。」
聞くと泊まりはしないと返事があった。
夕方、孫が帰る頃
「駅まで送ろうか?」
「大丈夫。」
「まあ、買い物のついでだ。」
「ありがとう。」
単純な会話があった。
孫を送り、帰ってくると夜ご飯のしたくを始めた。
「ルイーダ、ご飯が出来たよ」
「分かりました。」
夕食は、ハンバーグのトマト煮込みに味噌汁というものだった。
「このハンバーグのお肉硬いね。あと、塩多過ぎ。」
「……」
「この味噌汁何?元気になる気がするわ」
「……」
どんどんルイーダが若返っていく。
「それはそうですよ。そのハンバーグは孫の肉でソースは血、味噌汁は脳味噌ですよ。」
「あらそう。やっと…久しぶりですよね。」
そう、この夫婦は戦いに負けたあの日から、若い人を食べて生きているのだ!