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SF短編集

Dye Dream System

作者: 井鷹 冬樹

 短編です。 久しぶりのSF系の物語を書いてみました。少々SFなのかなぁ?っと感じてしまったりしまわなかったり、読んでいただけたら幸いです。

 神父は目の前の新郎に向けて言った。

「汝、ジェラルド・ハンガーは、この女、メアリー・マクリーンを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」

 ジェラルドは綺麗な笑顔で神父に答えた。

「誓います」

 神父も綺麗な微笑みを浮かべながら新婦であるメアリーに向かって言った。

「汝、メアリー・マクリーンは、この男、ジェラルド・ハンガーを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

 新婦は笑顔で答えた。

「誓います」


―――――――――――――――――――――――


 ハンガー家の自宅


 ジェラルドの家では新婚夫婦を祝うパーティが開かれていた。

「結婚おめでとう。二人共似合っているよ」

 ジェラルドの父、ブルースが夫婦として息子と新妻を祝福する。

「父さん、ありがとう。必ずメアリーを幸せにしてやるさ」

 ブルースはメガネを上げて、微笑み、メアリーに言う。

「メアリー、うちの息子が世話になるが、共に歩んで行ってやってくれ」

「勿論! ジェラルドは私が出会った中でも素敵な人だから……」

 ジェラルドとメアリーは互いに見合って笑っている。

「ちょっと失礼するよ」

 ブルースは、ジェラルドとメアリーに言って二人の場から外れる。

「ああ」

 ジェラルドはブルースに軽く反応した。

 ブルースは、二人の姿を後ろ目ながら微笑ましく見ながら歩き、家の外を出て近くの黒いセダンに近づいていく。

 黒いセダンから、灰色の縁メガネをかけた黒いスーツの男が、降りて、ブルースに話しかける。

「いかがですか?」

「最高の結婚式だったよモリガン先生。息子の幸せな顔を見れて良かった。夢だった。長年の……」

「それは良かったです。我社が誇る最高のシステムですから、お気に召されてなによりです」

 ブルースはある事をモリガンに訊いた。

「一つ訊きたいのだが、この夢の効力は?」

 モリガンはブルースに微笑みながら、答える。

「そこはご安心ください。半永久的です。土葬されても、海底葬になっても、効力は落ちません。ジェラルド様の脳波は活発ですので、これからも生き続けるでしょう」

「そうか……ならば良かったよ。ちなみにあと、どんなサービスがあるんだね?」

 モリガンはブルースの質問に答える。

「ご安心ください。結婚サービス後の後、夫婦生活を予定通りの規定で生活します。内容は、日常の普通業務、一般生活も含め、約30年。老後サービスシステムも導入しています」

 ブルースはモリガンの答えを聞きながら、目の前のジェラルド達を見つめている。

「仮に、この夢で死ぬ事を体験する事はあるのかね?」

 モリガンはブルースの質問について首を横に振って否定する。

「いえ、それはありません。死ぬ体験を受けるシステムは導入していませんので、仮に死ぬ体験をするとしてもこの夢の世界での睡眠行動の夢内容の一つとして人間の死を体験するという事になります」

「なるほど、夢の世界での睡眠内容で死を体験するわけだ」

「もちろん人生の終点を体験していただく為、死ぬ夢をご子息には味わっていただきます。ですが、その後はもう一度、若返って人生をループする形となりますので、ご了承を……」

 モリガンは指を鳴らし、合図をする。するとブルースの目の前の家やクリフ達の姿はなくなり、黒い壁が現れた。


 そう全て映像だった。先程までの結婚式やパーティは全て偽物だったのだ。


「ゴーグルを外してください」

 ブルースは、言われた通りにゴーグルを外し、辺りを見た。黒く冷たい壁。四方を見ても同じデザインで、同じ色の壁だった。

 後ろからドアが開く音が聞こえ、ブルースが振り返ると後ろのドアから白衣を着た男性が入ってきた。首に引っ掛けている社員証にはモリガン《Morrigan》と記されてある。

「お疲れ様でした。これが死後脳波と夢提供用チップとのリンクで提供される夢。Dye_Dream_System 通称DDSです。夢の中で、一生を過ごせる。画期的なシステムです」

 ブルースは、素晴らしいシステムを自ら体験した事に実感を得て、絶賛する。

「素晴らしいシステムだったよ! これでジェラルドに良い思い出を、夢を与えることができる」

「そうですか。では、契約は……」

「勿論だ。ジェラルドに夢を与えたいのでね。このシステムで頼むよ」

「かしこまりました。では、こちらに……」

 ブルースはモリガンに待合室へと案内される。そこに入るとブルースの妻でありジェラルドの母であるメリーナがハンカチで涙を吹きながら座って待っていた。

「すまんな。遅くなった。メリーナ」

「お待たせしました」

 モリガンは電子携帯PCを机に置き、契約話を始める。

「では、契約についての確認を。依頼者はブルース・ハンガーさん。対象者はジェラルド・ハンガーさんで宜しいですね」

「……はい」とブルースは答える。

 モリガンは電子携帯を触りながら続けた。

「プランはこのDDSシステム搭載のライフシステムSパックをご利用ですね?」

「ええ」

「では、こちらにサインと対象者の死亡証明、死因・死亡理由の確認をお願いします」

 ブルースは、心中、ジェラルドの事を思うと悲しくなりながらも、電子用タッチペンを使って契約書に記載する。



―――――――――――――――――



【DDSシステムSパック利用契約者 契約書 クラズ社】

 

 DDSパックをジェラルド・ハンガーに利用許可します。


 依頼者名:ブルース・ハンガー

 

 対象者 :ジェラルド・ハンガー

 死亡証明者サイン:国防軍第三グレゴリー大隊大佐 フィリップ・ストラス・ロビンソン


 対象者死亡理由:戦死

 対象者死因:弾丸を心臓に受け、死亡扱い。

 脳波状態:S 異常なし

 移植ドナー登録:なし


―――――――――――――――――


 ブルースはサインを終えて、モリガンにタッチペンを返した。

「これで、いいですかね?」

 モリガンは電子携帯の表示内容を確認した。

「はい。確認しました。契約成立ですね。後は我々にお任せ下さい。ご遺体の方は、1日経過してからお返しいたします」

「ああ、よろしく頼むよ。あと一つだけいいかな?」

「なんでしょう?」

「どうやってこの夢を起動させるんだね?」

 一般の人間には、この答えを説明する際、到底理解不能だった。

 だからモリガンは、簡単に説明できる様にしている。

「夢提供用チップを脳波に接続させます。対象者の脳波とチップのリンクに成功したら、死後でも夢の世界を体験することができます。ああ、ご安心を今では成功率という概念は薄れています。200%成功しますから、一生、死後安泰です」

「そうか……ありがとう」

「いえ」

 モリガンは首を軽く縦に振って反応し、待合室を出ていった。




――――――――――――――――



 クラズ社研究室


「成功だ!」

「対象者のリンク。成功しました!」

 クラズ社の研究室で研究者達は初の快挙に喜んでいる。


 初の快挙。それは死後、遺体の脳波で半永久的に、夢を見るシステムの製作だった。

 

 一人の研究者が成功を祝っているのを見つめながら言った。

「これであいつの夢が叶った。長かった……」

 会社の重役が実験の成功を聞きつけて研究室に入り、状況を一人の研究者の助手に訊いた。

「実験は成功か!? どんなの夢を対象者に提供したんだ?」

「夢は、このシステムを完成させて、他の人に提供している瞬間です。これで先生の苦労が報われる!」

 重役は笑顔になり、頷いた。 

「そうか! あいつも喜ぶだろう」

 研究室の映像の一つに対象者と呼ばれる遺体の映像と脳波、夢の映像が映し出されている。

 脳波の表示に対象者の名前が映し出されている。




 対象者の名前。



 そこにはモリガン《Morrigan》と表示されていた。




                       END


いかがでしたか?


死亡の概念もそれぞれで違いますよね。脳死が死亡だとか心臓が止まったら死亡だとか……今回は脳波が関係するので、心臓が止まった=死亡にしました。


死んだ後も夢って見るのでしょうか?

もしそんなシステムがあったらどう思いますか……?


まぁ、それは置いといて。

読んでいただきありがとうございました!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの二重トリックにしてやられました。バーチャルリアリティーの健全な活用法ですね。 そして科学が人を救う、という証明にも打ってつけな題材であったと思います。 きっとこの先生は幸福なのでし…
2014/11/03 20:38 退会済み
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