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4:隠密行動がしたいんです


お気に入り、評価、ありがとうございます!

励みにさせていだきます!


※まだまだエセ方言です。




 はっ!!

 恐ろしい夢を見ていたような気がした。

 そう例えば、私はヤンデレな乙女ゲームの百合な攻略対象として生まれてしまい、その上、主人公は現れず、なぜか私が攻略対象とイベントを消化している夢。

 そんな恐ろしい事……って、ここはどこだ。

 白いカーテンに蛍光灯のある天井。微かに香るエタノールの匂い。そうか、保健室だ。

 私は起き上がろうとして、起き上がれずに何かに体を拘束されているのに気付いた。


「夢じゃないのかよ」


 げんなりとした私の呟きに、熟睡しているらしい鶴織は無反応だった。どうやらあの後、私が意識を手放したのをこれ幸いに抱き枕として活用してくれたらしい。気持ちよさそうに眠る鶴織の額にデコピンをお見舞いしてやった。


「ふがっ…」


 くくく、眉を寄せてる。

しかしなんかこれはこれで悩ましい表情に見えなくもない。チャラ男ポジションのはんなり優男だけに、色気を全面に押し出されたキャラデザなせいだろうな、今も乱れたシャツから鎖骨見えるし。

 その無駄に溢れる色気をこちらにも分けてくれよ、特にこの自己主張の少ない胸元に……とまで考えてハッとした。

 今の私の体は、香波濠ハカナである。

 前世とは違い、胸元は自己主張が少ない所か、男装時にいつも苦労している部分だ。男装キャラのくせに脱ぐと胸元の自己主張が半端ないのである。

 ヤバイ。

 慌ててベストで潰している胸元を手で撫でてみる。取りあえずは平らっぽい。

 これなら抱き枕にされてても、バレてないよね?

 そう自身を納得させて、鶴織の腕を外し、そぅっとベッドから抜け出そうとする。

 が、


「ふぎゃっ!?」


 シーツに足を引っ掛けて、転んだ。

 が、どうにか白いカーテンに掴まり、顔面から床へのダイブは防いだぞ。

 はぁはぁと一人ホッとしていると、背後で「ん…」という声が聞こえた。


「あれ…? 俺、寝てたん?」


 このセリフ、聞いた覚えがあるぞ。

 ヤバイ。ヤバイ!!

 そうだ、確かこの抱き枕にされるイベントには、鶴織が主人公を意識し出すきっかけがあったんだった!!


「君、優秀な抱き枕なんやな」


 笑い混じりに久々にちゃんと寝れたわ、と付け足される。

 私は固まった。

 これは……どういう事だよ。

 このイベントにおける選択肢がないぞ。鶴織に添い寝しないか、と聞かれるどころか問答無用で抱き枕にされた。

 イベントの内容に、間違いはないのに、勝手に選択肢が選ばれる…?

 

「なぁ、これから、ずっと俺の抱き枕になってくれへん?」


「!!」


 私の思考は、背後からの抱擁と甘ったるい囁きに停止させられた。

 

「は、は、は、離せえぇええ」


「うわっ」


 全力でもがくと、どうにか鶴織の腕の中から逃れられた。はぁはぁと荒い息のまま睨みつけると、ニィィと鶴織の唇が弧を描く。

 あ、ゾワッとしたぞ。


「君、ええな」


 添い寝イベントで、断った主人公はどうなった?

 強引に抱き枕にされた後、鶴織がよく眠れたという理由で、主人公という存在を気に掛けるきっかけではなかったか?

 不眠気味という設定がある鶴織は、主人公を抱き枕にしたら、なぜかよく眠れた。そこから主人公が気になり、どんどん惹かれていき、病んでいく…。

 鶴織の病みの、最初の分岐点。

 それがこのイベントの断る、という選択肢だった筈だ。

 私、選んでないのに、強引に病みルートに連れていかれようとしてる!?

 ああああ!

 鴉渡の馬鹿野郎! なぜ私をここに寝かせた!? お前はヤンデレルートの回し者か何かか!? 陰謀か!?

 

「う…」


「うん? どうしたん?」


 思わず頭を抱え込み、髪を掻き毟る。鶴織が怪訝そうに何か言ってくるが頭に入ってこない。

 いや、落ち着こう。クールだ。クール! クールゥゥウウウ!!!

 大きく息を吸い込んだ。

 そしたら咳き込んだ。


「ゲホッ…ゥ」


「大丈夫か?」


 鶴織が背中をトントンしてくれる。ありがたい。いや、ありがたくない。元凶はお前だから!

 少しトントンして貰い、ようやっと咳も頭も落ち着いてきた。

 そうだ、まずはここを離れよう。

 私は香波濠ハカナだ。ここはクールに去ろう。


「触るな」


 意識した低い声。冷たい眼差し。

 鶴織がやや目を見開いた。


「不快だ」


 私は香波濠ハカナらしいセリフを吐き捨て、保健室を去ろうとした。


「……君、さっきとキャラ違いすぎやない」


 鶴織の鋭い指摘が耳に刺さる。

 抱き枕にされる前後は、油断していたから素の自分そのままな反応になっていたのだ。あんな事されるとは思っていなかったのだ、どうしようもない。

 慌てて取り繕った私は、当然、普段からチャラ男っぽく自分を作っている鶴織には簡単に、見抜かれてしまったようだ。

私は、ギクリとしたが答えずそそくさと保健室を後にした。

もう逃げるしかない。戦術的撤退だ。





≪とてもどうでもいい補足≫


鶴織の言葉づかいに関しては、

ゲーム制作陣が京ことばをそのままストレートで

使うと女言葉っぽくなるため

いろいろ改変した結果このエセ京ことばが誕生したのです。

〇都のみなさん、お許しください!



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