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32: 梟は解を冀望する

梟首視点です。





 どうしても読みたい本がなかったから、ボクは市内で一番大きな本屋に来ていた。ここは本の他にもゲームやCDも売ってるから、夏休みの今は結構混んでる。

 まぁ、ボクの読みたい本のコーナーは全然人がいなくて、すぐ目的の本は手に入った。会計を済ませた所で、ふとある人影が目に付いた。


「あれ~香波濠君だぁ」


 本のコーナーとは少し離れた出入り口付近のゲームコーナーに香波濠君がいた。

 学園の外で会うのは二度目だ。

 ボクは、あちこちの本屋や図書館に行ったりしてるけど……あんまり生徒と遭遇はしないんだけどなぁ。

 

「香波濠君、奇遇だねぇ」


 と、声を掛けてみたけれど、返事はない。

 何やら香波濠君は手に取ったゲームソフト二本を見比べて、唸っている。


「う~ん。どっちがいいか…」


 独り言を唸りながら考え込む香波濠君。

 どうやらこの二つの内どちらを買うかで悩んでいるみたい。両方買っちゃえばいいのに。

 

「お~い。香波濠君」


 彼の隣に立って再び声を掛けてみる。

 が、やっぱり返事ないよね。

 うん、解るよ。大好きな物に集中してる時って、誰から何か言われても全然気づかなくなっちゃうんだ。大声で叫べばさすがにこっちに気付くだろうけど、楽しいのを邪魔するのは可哀想だよね。

 う~ん。このまま去った方がいいかなぁ。

 でも、せっかく、会えたんだし、もうちょっといようかなぁ。


「両方買うという手もある……ああ、でも、今月の予算が」


 香波濠君があ~とかう~とか唸りながら、視線を下にしたり、上にしたり、棚にあるゲームを見てちょっと表情を緩ませたりしてる。

 …………面白いから、もう少し見ていよう。




 香波濠君を観察し始めて十五分。一向に香波濠君はボクに気付かない。

 ひたすら、RPGとシュミレーションゲームを眺めて悩んでいる。ソフトは新発売と棚の値札に書かれていて、どうやらどちらも話題のシリーズものの最新作みたい。ボクはゲーム詳しくないから、よく解らないけど。

 ……こんな事なら、ゲームもしとけば良かったかな。そうしたら、香波濠君の事、もっと理解出来ただろうに。

 あれ?

 まただ。

 前に、図書館で会った時みたいな気持ちになってる。

 ボクは、本さえあればそれでいい筈なのに。

 なんで、香波濠君をもっと理解したいと、もっと知りたいって思うんだろ?

 そもそもなんで、香波濠君なんだろ?

 同じ本を読んでいたから?

 ボクと同じく人に興味がなさそうで、本が好きだから?

 よく保健室に来る生徒だから?

 名前を呼んだら、いつもの無表情が崩れて面白かったから?

 なんで?

 どうして?

 ……どうしよう、解らない。

 今までたくさん、色々な本を読んできた。

 何人もの人間の知識をコピーしては、頭の中に入れてきた。

 梟の一族の中でも、ボクはかなりの知識を有している。

 そのボクが解らないなんて――――あっちゃいけない。いけないんだよ。

 きっと何かある筈だ。彼が、彼だけが、ボクの意識に引っかかる理由が。

 そうだ!

 この不可解な謎を解き明かす手がかりとして、香波濠君の知識を貰ちゃおう。

 そうすれば、彼がどういう環境で生きて、何を学んで来たのか、どういうゲームが好きなのか、どんな本を読むのかが解る。

 きっと、そこに、謎を解く鍵があるよね。

 そっと香波濠君の頭に手を伸ばす。

 梟の能力は、頭を触れた相手の知識をコピーして己のモノにする事。

 他の禽の一族に比べて、地味で攻撃力も身も守る力もないけれども、ボクは今日ほどこの能力に感謝した日はなかった。

 だって、こんなに不可解で気になる存在の頭の中が丸々覗けるんだよ?

 こんな気になる事、とことん調べなくちゃ、きっと帰ってからも気になってろくに眠れないよ。

 一度は放って置いた疑問も、二度目となれば、これはただの気まぐれでもその日の気分でもない。

 今日、偶然、久々に香波濠君を見掛けなければ、こんな疑問やモヤモヤなんか生まれなかった筈だ。

 こんなにボクの探究心擽る、香波濠君が悪いよ。

――だから、君の全部、覗かせてね?

 指先感じたのは、さらりとした柔らかな髪の感触。

 知識をコピーしよう、とこっそり禽を足元に創造しようとした時、


「よし、これにしよう……って、えっ?」


 指先から、髪がするりと離れていき香波濠君がやや驚いた表情でボクを見つめていた。

 ……結局、香波濠君の頭の中は覗けなかったけど、ボクは香波濠君と少し話をして、彼の事が少し理解出来た。

 ボクは家に帰ってから、何度もその会話を思い返した。

 なぜだか解らないけど、その会話を思い出す度にふわふわした様な、新刊の本を開く時みたいな気分になるんだ。

 ああ、早く、その理由が知りたい。答えが知りたい。

 夏休みが終われば、彼はまたボクのいる保健室に来るよね。そうすれば、彼の頭を覗く機会なんていくらでもある。

 そう、いくらでもね。

 だから早く教えてよ。ボクに、君の事を。

 



久々の梟首視点です。

なんとな~くやっと梟首の書き方が掴めてきたような…?


あと終業式という表記を変更しました(22話と32話)

天翼学園は二期制だったので

夏休み開始=終業式、ではなかったのですが

間違って終業式と表記してしまいした…すいませんでした。







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