21:梟は嘱目する
梟首視点です。
今日もたくさん本を借りられてよかった~。
ボクはほくほく気分で、十五冊の本をカウンターに持っていき貸し出し手続きをして貰った。
ああ、何から読もう。迷うなぁ。
やっぱり、最初はあの伝記からかな。
せっかく香波濠君が譲ってくれたんだから、早めに読んで返却してあげた方がいいよねぇ。ボクだったら、やっぱり早く返却して貰いたいもん。
軽く流し読んだだけでも面白そうな伝記だったなぁ。
そういえば、この間香波濠君が読んだって言ってたあの本も面白かった。もしかして、ボクと香波濠君って本の好みが近いのかも。うん。
あの子は他にどんな本を読んでるのかな?
気になるなぁ。
今度おすすめとか聞いてみようかな。
うん、うんと頷きながら図書館を出ると、見覚えのある人物が走って来た。
「あ、鷹宮寺だ~」
鷹の一族の次期長、と言われている鷹宮寺だった。
ボクはあまり人には自分から声はかけない。興味もないしね。
けれども、鷹宮寺は別だ。鷹の一族の長から直々に学園内で彼に対して気を配れと頼まれている。ボクだって禽の一族内での主力勢力の鷹一族に逆らうのは怖いから、従っているだけだ。
「……梟首か」
「先生、ってつけてよ~」
鷹宮寺がめんどくさそうに眉をしかめて、止まった。どうやらランニング中だったみたい。こんな暑い中よく頑張るなぁ。
「ちゃんと水分取るんだよ~」
「はっ。たまには保健医らしい事を言うんだな」
「だから、ボクは保健医じゃないって」
香波濠君だけじゃなく、鷹宮寺までもボクを保健医だと思っていたみたいだ。ここはきっちり訂正を……って鷹宮寺はもう走り出していた。
まぁ、いいか。
鷹宮寺は保健室には滅多に来ないし。鷹宮寺だし。
保健室の常連の香波濠君にはしっかりと訂正できたし、今度会う時はしっかりと先生と呼んでくれる筈だ。また、保健医なんて呼ばれたらしっかりと説明し直してあげようっと。
そういえば、香波濠君ってばさっき名前を読んだら驚いてたなぁ。
本を読んでたからチラリと横目で見ただけだったけど、いつもは無表情な顔がちょっとびっくりしてて面白かったぁ。
女子生徒曰く美少年らしいけど、ボクはそういうのは解らない。
けど、あんな表情ならまた見たいかな。
他にはどんな顔をするのか気になるなぁ。
……あれ?
ボク、本以外には大して興味もない筈なのに。
どうしてか、香波濠君の表情や読んでいる本が気になってきた。
なんだろう、これ。
「う~ん。まぁ、いいか」
重要な事ならその内解るよね。
それより今は、借りてきた伝記を早く読みたいなぁ。
ボクはマンションへと急いで歩き出した。
梟首視点はなかなか難しいです。
もしかしたらその内少し直すかもしれません。




