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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔王を倒したら用済みとか言われたのでプチっと来た俺は新しい魔王になりました。

作者: クロム



―――正直に言おう。俺は、この世界の住民じゃない。




今から二年前の事だ。

俺こと『藤堂(とうどう) (やしろ)』は、気付けばこの世界に勇者として召喚され、訳の分からないままに話を進められた挙句、俺を召喚した国である『ミルディアム』の駒として幾度となく戦わされた。


俺の居た所、日本にはそんな争いなんて無かった。


だからこそ俺は恐怖した。当たり前だ。命のやり取りなんだぞ?恐怖しない方がおかしい。


殺らなきゃ殺られる。


それがこの世界だった。

当然、不満だってあったさ。元の世界に返せって何回も掛け合った。

しかし返ってくる言葉は決まって『魔王を倒さなければ帰せない』の一点張り。正直うんざりだったね。


えぇえぇやったりますよ。だったらお望み通り魔王をぶっ倒してやろうじゃないの。


そう意気込みして、旅に出たのが一年前。

俺はその一年の間に打ち解けた仲間達と、遂に魔王討伐を成し遂げた(成し遂げたっつっても、魔王が女の子だったから殺してはないんだけどな......)。


そして帰ってきて言われた最初の言葉が......。




『よくぞやってくれた、勇者よ! そなたはもう用済みじゃ。 何処へなりとも行くがよい!!』




............は?


俺は、心底間抜けそうにそう言った。

は、ははっ。これ、なんの冗談?


軽く現実逃避していると、ふと思い出した事があった。だから俺は、クソったれな国王に言ったんだ。



―――俺を帰してくれる話は、どうなったのか?......と。



返ってきたのは返事ではなく、魔法の嵐だった。

あれだね。あの時は、マジでイラっと来たね。

一年かけて魔王倒して、帰ってきたら『用済み』。そして魔法の嵐。


だから俺は、『ミルディアム』を滅ぼした。


完膚無きまでにズタボロにしてやった。再建不可能までに、それはもう......ね。

俺だって元は勇者だったんだ。それぐらいの力は普通にある。

それにしてもあのクソったれな国王は、勇者が国の言うことだけを聞く玩具か何かと思っていたみたいだ。



だから一番最初に殺した。



無防備で笑っていたので、その顔面に魔力込めパーンチをお見舞いしてやった。顔が吹き飛んだね。おお、キモイキモイ......。




そうして俺は、各国から追われる身になった。





行く宛てを失った俺はそれから、各地を転々としている内に、魔界にたどり着いた。


魔界に来て最初に会ったのは、あの時の女の子の魔王だった。

あ、ヤバイ。戦いになる......と思って身構えたのだが、一向に攻撃が来ない。

不思議に思って魔王が居た方を向くと、そこには何故か顔を真っ赤にした魔王が......。



―――え? 俺なんかしたっけ?



そう疑問に思いながらも、このまま何もせずにと言う空間が到堪れなかったため、何故俺が魔界に居るのかを魔王に説明した。


すると魔王は、なんと上機嫌気味に『魔界に住みなさい!』と言ってきた。


俺もその案には喜んで賛同。

魔王の後を着いていき、魔王城へ。


そこで暫く過ごしていく内に、魔王が俺にある提案をしてきた。




―――曰く、魔王になってみないか?......と。




少しの間考え、俺はその提案を呑んだ。


何故かって? だってさ。あのクソったれな国王の笑い顔と、『用済み』って言われた時の事を思い出すと、プチっと来るんだ。

そうでなくとも、あの国に限らず他の国でもセコい事をやってる国王共は居る......。

そこで俺は閃いた。



だったら、そのクソったれな国王共に天誅を与えようじゃないか......。




それならば、魔王の方が何かと都合がいい。

そうして俺は女の子の魔王の提案を呑み、新たな魔王となった。

魔族の奴らも、女の子の魔王が公認した事と、何よりその魔王を倒した者との事で、すんなりと魔王になれた。


......あとなんか、女の子魔王が『これで妃になれるー!』とか言ってたけど、どうゆうことだ......?



まぁそんなこんながあった訳だ。

そうして今俺は、クソったれな国や国王共に天誅を喰らわし、貧しい人々を見つけては助ける、今までの魔王とは違った支配の仕方をしていた。




「次はあの国だアイリィ。国の税金を上げまくって国民を苦しませ、自分だけは悠々と暮らしいている。......まさしく、クソったれな国王だな」


「フッフッフッ。了解だよ、ヤシロ。元魔王の力と現魔王の力、存分にみせてやろうね」





それでも俺は、この支配の仕方が間違ってるとは思わない。

だって俺は......。








―――『魔王』なのだから。












やがてこの『魔王』の噂が広まり、貧しい人々に『救世主の魔王』と呼ばれるようになるのは、まだ少し先の話である......。





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