81話 俺もソレを奇跡と呼んだ
少女は至極まじめな顔で言った。
「君は国家魔導所に助けを求めず、さらに事態を隠そうとしていた。だから、君たち二人のそういうプレイだと思って手を出さなかった。」
「い、いや、それは国家魔導所が危ない所だと思っていたから…。それに、そういうプレイって何だよ…?」
「SMプレイをするとき、『嫌』とか『やめて』という言葉も制止の意味ではなく、プレイを盛り上げるための道具でしかない。君が幼女になって嫌がっているのも、そういうプレイだから邪魔をしてはいけないと判断した。」
「…どうやったらそんな変態的判断になるんだよ……」
俺は思わずその場に崩れ落ちた。
しばらくその状態でいたが、少女にうながされてしぶしぶ裸になった。
「あ、そうだ」
俺は大事なことを思い出した。
「儀式の間に変なことを考えても、失敗とかしたりしないか?」
「術式はすでに床に書き込んでいるんだ。君のくだらない思考など、毛ほども影響を及ぼすことはない。」
「さいですか……」
少女の冷たい視線に心が折れそうになりながらも安心した。
俺は魔法陣の真ん中に座る。
いろいろと回り道をしてしまったようだが、やっと元に戻ることができるのだ。
胸にさまざまな感情があふれ、俺はゆっくりと息をはきだした。
「…それにしても、敵だと思っていた国家魔導所にすぐに頼めば、どんだけ早く終わっていたんだろうな……」
つい苦笑がもれてしまう。
やがて魔法陣に淡い光がともりだした。
「幼女になったその日に救助を求めていれば、とても早く片付いただろうね」
「…は?」
だんだんと強くなる光の向こうで、少女が淡々と言い放った。
「君が幼女になってから王都に戻るとき、行商人に拾ってもらっただろ?」
確かにあのとき、運良く行商の馬車に乗せてもらって本当に助かった。
ひたすらに黙っていた俺に、いろいろ声をかけて心配してくれたおっちゃんとおばちゃんの顔が今でも目に浮かぶ。
少女の姿を探すが、すでに光は目を開けていられないくらいに強くなってきた。
「あれ、国家魔導所の監視員だから。」
「はぁ!? 」
「あの日、あのタイミングで、たまたま奇跡的にサルバンの研究所を監視していたんだ。あのとき監視員の質問に正直に答えていたら、馬車はそのまま国家魔導所に直行して君を保護し、早急に対策をとっていたのにね。」
「………」
すでに真っ白ともいえる光の中、少女の無情な声が止めをさすように俺の心を抉った。
「君は奇跡を無駄にしたんだ」
「俺の奇跡がぁぁあああああああああああああああっっ!!」
その一言を最後に、俺の意識はなくなった。




