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4話 国家魔導士と闇

 


 奴の説明になっていない説明に、俺は襟首を絞める力を更にこめて喚いた。


「さっぱり意味がわからんが、とにかく俺を元に戻せ!!その後俺の剣で予定どおりにお前の人生を終わらせてやるよ!」

「元に戻ることなんて考えてなかったんだ、そんなこと研究もなにもしていないから不可能だ。」

「なんだとぉぉぉぉっ!?」


 このやろう、今なんっつった!?

「この術式自体が偶然の産物であり、完成にも何年もかかったんだ。僕の力で物質の質量を全く別のモノに変えてしまうことが成功するなんて、本当に天文学的な奇跡としかいいようがないんだ!!」

「俺を元に戻せ!!奇跡ならもう一回起こしやがれ!!さもなくばお前を衛兵に突き出して、国の魔導士に引き渡すぞ!!」


 サルバンは顔面蒼白になり俺の腕をつかんで震えだした。

「このことが魔導士中枢部に知られたら、僕は処刑という名の人体実験に使われて一生死ぬことが許されないまま切り刻まれることになってしまう!!」

「おう、魔道の発展とやらに大いに貢献しちまえっ。」

俺はヤツの腕を振り払い言い放った。


「君もだよっ!!クライン、君も珍しいサンプルとして国家魔導士に合法的に身柄を拘束されて、非人道的ないろいろな実験を受けることになるんだよ!?」


 なんだ、そのとばっちりはっ!?


「いいかい、クラインよく聞いてくれ。一般に魔導士は人体実験が禁止と知られているけど、実際は国家魔導士は罪人を人体実験に使っているんだ。」

「なんだその裏の情報は!?っていうか、国の極秘事項を俺に漏らすな!!」


 いかん、どんどん深みにはまって抜け出せなくなる予感がめちゃくちゃする。

俺は本能的な恐怖を感じ、これ以上聞かないために耳をふさいだ。


 そんな俺を深遠に引きずり込もうとするようにサルバンは両腕にしがみついてくる。

「過去に自分を猫に変えて戻れなくなった魔導士がいたんだ。罪にはあたらないからそのまま猫として寿命を終えたといわれてるけど、国の研究機関に回収されて実験に使われたという噂のほうが多いんだ。」

「俺は魔導士でなく一般人で、お前に巻き込まれた被害者だ!」

サルバンの汗ばんだ手を振り払って叫ぶ。


 じわじわと薄暗いナニカが足元からからみついてくる気がして、叫んでいないと恐怖でどうにかなりそうだ。


「あの城下町に浮浪者がほとんどいないのはどうしてだと思う?施設や制度が充実しているから?それもあるだろうけど、身寄りのない人を人体実験につかっているという噂もある。」

「俺は傭兵団に所属している!俺がいなくなれば気づく奴はたくさんいる!」


「魔導士の中枢部は、国の要人らしいんだ。さっきも言ったけど合法的に君を拘束することは可能だよ。」

「全部が噂と憶測じゃねえか…」

もう俺の声に力は無い。もう聞きたくない、聞きたくない…。


「真実を知る者はこの世から抹消され、噂以上にならない権力があるから…」



 俺の心はバキボキと音をたてて壊れた。




 二人でこのままひっそりと暮らしていこうとほざきやがったので、ボコボコにしておいた。

途中で「幼女の暴力、ハァハァ…」とほざきやがったので、持ってきていた剣の鞘で気を失うまでボッコボコにしておいた。

殺すと元に戻れるかもしれない数少ない可能性が消えてしまうからな。


 もう精神は限界だった。

とにかく俺はこんな変なところを抜け出して、慣れ親しんだ日常に戻りたかった。

自分のベッドで寝て起きたら全てが元に戻っていて、あれは悪い夢だったんだって仲間と笑いあえる、そんな気がしてとにかく帰りたかった。


 城下町に帰るのは危険だ、敵(?)の中に飛び込むものだとヤツはわめいたがお前と死ぬまで過ごすなんて冗談じゃない。

俺は俺として最後の瞬間まで過ごす!そう言い切るとヤツはあきらめたようだ。

そもそもお前なんかに決定権なんざねえよ!!


 ならばもう日も暮れるから泊まっていけというまったくもってありがたくない身の危険を感じるお誘いをことわり、俺は町に帰ることにした。




 森を歩いてしばらくして街道に出たところで運良く、城下町にもどる優しそうなおじさんとおばさんの行商隊に拾ってもらうことができた。

歩いて行ったら小さな子どもの足じゃどのくらいかかるか見当もつかないので、本当に助かった。


 街道を一人でこんな小さい子どもがいるなんで物凄く怪しいが、見た目が小さい女の子なため警戒はされず逆に気を使ってくれる。

幼女もよしあしだな。

とりあえずひとさらいから逃げてきたとか、森の怪しい魔導士にさらわれたのかという質問には否定しておき心配要らないとだけ伝えて後は黙っておいた。



 おじちゃん、おばちゃん、寡黙な幼女ってことで許してくれ。



次は王都、の出入り口でてんやわんやします。

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