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43話 老将軍

 

 

 優越感ににやけながらヤギの乳に口をつけて、俺はふと我に返った。


 俺は巨乳を愛でたいだけであって、巨乳になりたいわけじゃない。

メイドさんの胸を堪能する下心も大いにあるが、ヤギの乳をガバガバ飲んでどうしようというのだ。


 …いや、巨乳を愛するものとして、理想の巨乳を己の身体で実現してみせるのが究極の巨乳愛好家としての真の姿なのか!?



 俺が巨乳愛好家としての深遠をのぞこうかとしていたとき、おやっさんが応接間に入ってきた。

いや、よく見るともう一人入ってきた。

あれがこの屋敷の貴族か。


 おやっさんが断れない相手なんて、どんだけギラギラと脂ぎったお貴族様かと思っていた。

だが予想と違い、ピシッとキリッと伸びた背筋、キッチリと後ろにまとめた髪は白髪でそうとうの年齢を思わせたが、その足さばきからは普段身体を鍛えている者のにおいがする。

壮齢男性がよく着るゆったりとしたローブを着ているが、その下はかなりの筋肉が踊っていると見た!

もう孫も大きいくらいの年齢だと思うんだが、「おじいちゃん」ていうよりは「かっこいいおじ様」もしくは物語に出てくる厳しい「老将軍」ていう感じだ。


 おやっさんと貴族の「老将軍」が二人並んで俺たちを見回した。

初めて見えた顔は想像通りのキリッとした顔で、白いあごひげが更に渋く格好よかった。

ますますその肉体を拝んでみたいぜ…。

俺はごくりと唾を飲み込みながら、老将軍を凝視していた。


「…っつ!! 」


 老将軍と目が合った。


 いかん! 俺が邪な目で見つめていたのがばれたか!?


 向こうは目を見開いて俺を見つめている。

傭兵団に幼女がいることに驚いたのか、それとも邪な視線の幼女に驚いたのか…。

老将軍は隣にいるおやっさんに何か話しかけている。

おやっさんがハッと目を見開いて俺を凝視した。


 え?なに? 俺ってそんなに変態な顔で老紳士を舐めまわすように見てた!?

おやっさんまでそんな顔で俺を見るなんて!!


 俺がわたわたしているのとは別に、野郎どもも応接間に入ったきりの二人にざわざわとしていた。

おやっさんがざわめく応接間に気付き老紳士に目で合図を送ると、老紳士も我に返ったのか俺から目を離した。


「待たせて悪かったな、こちらが今回の依頼者であるアネスト卿だ。俺が昔お世話になった方で、王宮で新人兵士を鍛えておられた。今はここの領主をされている。お前らのできる限りで、敬意を払った行動をとるように!」


 最後のひとことに応接間が笑いにつつまれる。

老将軍、いや、アネスト卿も一緒に笑っている。

一見厳しそうな雰囲気だが、おやっさんの言葉からも気さくな感じがした。


 おやっさんがアネスト卿に声をかけ、アネスト卿が一歩前に出てきた。


「王都からの遠い道のりを、我が領地のために来ていただいたこと、誠に感謝する。」


 歳相応の深みと威厳があり、でも穏やかながら広い応接間に響き渡るだけの声量と張りがある声だ。

この声でどやされたら成人男子でもちびるかもしれない。


「今回貴殿らに狼退治を頼んだのは、我が領地の民が猛獣の扱いに慣れていないためだ。しかし、貴殿らが危険ごとを仕事にしているとはいえ、己の安全を第一に考えて行動して欲しいと切に願う。」


 アネスト卿の言葉が終わり、静まり返っていた応接間がざわつく。

「何て言ったんだ?」

「今のは他国の言葉か?」

「あの爺さん、いい声してんな。」


 おやっさんがうなだれているのが見える。

正直俺も言ってる意味がわかんなかった。


 ざわつく応接間に、突然アネスト卿の豪快な笑い声が響き渡った。

おやっさんも俺たちも、笑うアネスト卿に注目して自然ざわめきはおさまった。

アネスト卿は笑いをおさめて俺たちを見回した。


「悪かったな、最初に決めようとして飛ばしすぎたようだ。俺が言いたかったのはだ…」

そこでアネスト卿は大きく息を吸い込んだ。


「お前らっ! 絶対に怪我するんじゃねぇぞっっつ!!」


「うおぉぉおぉぉおぉぉっつ!!」

一瞬の間のあと、歓声があがった。


「この領地は畜産、酪農、農業と豊かな土地だ。お前らが存分に飲み食いしても無くならないぐらいの蓄えはある。存分に楽しんでくれ。あとで仕事前の景気酒を準備しよう!」

アネスト卿の言葉に、応接間の連中も俺も興奮しっぱなしだった。


 その後、おやっさんから今後の予定を告げられた。

日没まで休憩と準備をして、日没から討伐を開始する。

灯りをつけずに牧場に10人ほど羊の中に隠れ、残りの10人が牧場の外で森のほうを監視。

狼を発見しだい笛を吹いて周りに知らせ、松明をつけて退治するという予定だ。

猟師から猟犬の貸し出しの申し出があったらしいが、闇の中では狼と区別がつかないので断ったそうだ。


 とにかく目標は誰も怪我をしないこと。

できれば牧場に来る狼は全部その場でしとめたいが、たとえ森に逃げられても深追いはしないこと。

今回の標的は狼の群れではなく、群れから出たばかりの若いオス狼たちなので、大々的に追い払い危険を察すればもう来ないのではという予測だ。

今夜の作戦の後、数日様子を見て来ないようであればそのまま帰還、懲りずにちょこちょこ来るようであれば全滅をはかる。


 以上の説明が終わり質問もなかったため、解散となった。

牧場に隠れる組みと、森の監視組みがそれぞれ集まって簡単な打ち合わせを始めた。


「お前は作戦中、屋敷内で寝てろ。」

「いや、連中が命かけてるときに、それはないですよ!」

「だからだ。子どもは寝る時間なんだから、気にせずに眠ってろって言ってんだ。」


 確かに深夜まで起きとける自信はないが、お子ちゃまには関係ないって言い方はどうなのよ。

俺は不満な顔を隠すこともなく、おやっさんに抗議の意味をこめて見つめ続けた。




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