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36話 12番目



「よっ、お疲れさん!」


 建物の外に出ると、入り口の横で壁に背中を預けておやっさんが立っていた。

「あ、おやっさん?」

そしてその後ろには、異国の服装の兵士たちがずらりと並んでいた。

ゆったりとした服装は初めてみるが、状況からして砂漠の国の兵士なのだろう。


「げ!ばれてるよ…。」

俺越しに兵士を確認したオルンは苦い顔をして舌を出し、俺をチラリと見た。


「でも…いつもなら問答無用で踏み込んでくるはずなのに、こうやって僕たちが出てくるのをわざわざ待っていてくれたのは……君のおかげなのかな?」

「どうなんでしょうねぇ。」

俺はそ知らぬふりをして、頭の後ろで腕をくんだ。



 オルンは俺を見て微笑んだあと、正面に控える兵士たちに向かってよく通る声をあげた。

「皆のもの、役目ご苦労!私に自由の時間を与えてくれたことを感謝する。私はこれから戻ることにする。」

その姿は立派なもので、オルンがただのお気楽な貴族のボンボンでないことを俺は始めて感じた。

オルンはそのままのきりっとした態度のまま、ヴァルに声をかける。

「ヴァル、あれを。」

「はっ!」


 ヴァルは懐から綺麗な布の袋を取り出すと、何かを取り出しオルンに渡した。

オルンはそれを持ったまま俺の前に立った。


「その小ささでこの機転、とても感心したよ。君と僕がこの異国で出会えたことは、我らが父なる太陽神と母なる月光神のお導きによる奇跡なのだろうね。君に『トゥエル・リグ・ハレシャム』の称号を授けよう。」


 そういって俺の右手首に、小さな赤い石のついた銀色の腕輪をはめた。

銀色の細い輪が幾重にも重なり、揺れるたびにシャラリシャラリと涼しげな音がする。

赤い石も銀色の腕輪も、普段貴金属なんて見ない俺でもこれが安っぽい玩具なんかではないことが解る輝きがあった。

「子どもの私に、こんな高価なものを!?」

とまどう俺に、オルンはにこやかに微笑んで見せた。


「あなたがいずれ砂漠の国に来られることを、心からお待ちしています。」


 それだけ言うと俺に頭を下げるヴァルを引き連れ、兵士の後ろに待機していた馬車に乗り込み兵士たちと去っていった。



 俺は一団が去っていく様子を呆気にとられて見送るしかなかった。


「……まぁ、お疲れさん。本部に戻るか。」

呆けている俺に声をかけるおやっさんの顔は、なんだか笑いをこらえているように見えた。


「おやっさん……?」

「まぁまあ、本部に戻ったら全部説明してやるよ!…うぐっ!」

何がなんだかよくわからない俺の顔を見ておやっさんは顔をそらせ、声をおしころしながら肩を震わせた。


 …もう、何なんだよ!





 その後、歩いて傭兵団の本部に戻り、団長室に招かれた。

俺が椅子に腰掛けると、おやっさんはポツリポツリと説明をしてくれた。


 オルンは本当の名前をオルジャーンといい、砂漠の国の第7王子だったのだそうだ。

位の高い貴族の子どもだとは思っていたが、王子とは思いもつかなかった。


 国交の使者に社会見学としてお供し、隙を見て抜け出したところを俺が発見したのだそうだ。

王位継承権の遠い第7王子とはいえ、勉強などでスケジュールがビッシリつまっているなかのほんの少しの息抜きの時間だったそうだ。

迎えに来たお付きの人が、大事(おおごと)にせず王子に時間を与えた俺の対応に感謝していたそうだ。


 そんな説明をしてくれているおやっさんが、始終ニヤニヤしているのが物凄く気になる。

「んでな、お前が腕輪を渡されたあれな。」


 俺は外すのを忘れて付けたままの腕輪を見た。

俺の動きに合わせ、シャラリと涼しげな音を立てて腕輪がゆれる。


「お前を第7王子のハーレムに迎え入れますって儀式だ。」

「は?」


「『トゥエル・リグ・ハレシャム』ってーのは、直訳するとハーレムの12番目、つまり、お前は12番目のお妃ってことだな。あの国は一夫多妻制で王族なんて30人妻がいることがザラだからな、うぷっ!」

「はぁっ!? 」


 おやっさんは必死に笑いをこらえると、肩を小刻みに震わせながら続けた。

「いやいや、最近貴族のご婦人方に、数いるお妃候補を押しのけて王の寵愛を得るっていう恋愛本が流行ってるって聞いたばかりだったが…。くくっ!」

おやっさん、笑いをこらえすぎて涙出てんじゃんよ…。


「…お前も王の一番のお気に入りなるために、頑張ってみたらどうだ?女として一番の出世なんじゃねえか? いっちょ女の頂点を目指すのもありなんじゃねえかっ、て……あ~、もうだめだ!我慢できねぇ!!」

それだけ言い切ると、おやっさんは大爆笑を始めた。


「俺はハーレムを作りたいんですーッ!! ハーレムに入るなんて嫌だぁーっ!! おやっさんのバカァァアアアアッ!!」



 団長室から大声を上げて飛び出した俺を見て、傭兵団の連中から「クラン坊、パパに叱られたのかぁ?」とのんきな声をかけられたが、気にせず自室に飛び込んだ。

「ベティちゃぁぁん!! 俺を癒してくれぇぇぇええ!!」




 後日、悪ふざけがすぎたとおやっさんが、謝罪とともに巨乳美女に囲まれるハーレムものの本をくれた。

そうそう、男はこうじゃなくっちゃね!

オルジャーンにもらった腕輪は、防犯上のこともありおやっさんに保管してもらうことになった。



 一生そのまま保管されとくことを祈る!





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