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13話 帰還

 涙ぐんで別れを惜しむ奥さんに、おやっさんから命令され「また帰ってくるからね、ママ。」と頬にキスをさせられた。

奥さん手縫いの衣服や焼き菓子などのお土産を山ほどもらい、お世話になった皆に礼を言いおやっさんちに別れをつげた。


 別れは寂しいが、ようやく傭兵団に戻れるってことで俺はテンションが上がりっぱなしで、走っていこうとしておやっさんに頭をはたかれた。

「ばぁか、その足でどんだけかかると思ってやがる!馬車で行くにきまってんだろ。」


 俺とおやっさんは馬車に乗り込み屋敷を後にした。

「いいか、お前の素性を知ってんのは俺とキースだけだ。知ってる奴が多いほど話は漏れやすくなるし、知らなければ嘘をつく必要もねぇ。」

俺はおやっさんの向かい側に座り話にうなずく。


「平民街への根回しはできているから、子供のお前でもできるような仕事の依頼はぼちぼち来ると思う。しばらくは寮で掃除なんかの下働きをしとけ。」

「うす。」

 

 傭兵団で新入りは寮の掃除や洗濯などをして下積みをした後に、おやっさんによる能力検査を受けて許可がおりると初めて依頼を受けて仕事にでるようになる。

能力検査といっても合格・不合格とかはなく、弱い奴が警備や体力のない奴が土木作業の手伝いなどしないようにそいつに合った仕事をおやっさんが振り分けるための措置だ。

ベテランになってくると自分の得意・不得意も心得てくるので、自分である程度仕事を選ぶことが許される。


 そんな打ち合わせをしているなか、馬車はとうとう傭兵団の本部に到着した。

本部は平民街と商人街の中間にあり、周囲の店や家屋より二周りほどでかくて厳つくて目立つ。

おやっさんがつくってくれた俺ら傭兵団員の自慢の家だ。


 俺は歓喜で震える体をおさえつつ馬車からおりようとすると、先に降りたおやっさんが抱きかかえて降ろしてくれた。

ん~、大事な俺の第一歩だったんだけどな…。


 建物の外にキースがいて出迎えてくれた。

「元気になったようで安心しました。城門であったときはひどい顔でしたからね。」

キースはそう微笑むと俺の手をとり、中へエスコートした。


だから、俺はお嬢さんじゃねぇっての!




 あぁ、建物に入ると慣れ親しんだ風景がおれの目に飛び込んでくる。


 ギシギシいう木の床。

待機所と市民との交流所を兼ねた4、50人は入る広間。

俺とサイスが取っ組み合いをして穴を開け、適当に木の板を貼って応急処置をした壁。

雑多におかれた机と椅子。

依頼を受け付けるカウンター。

入り口からは見えないが、奥には俺が住んでいた独身寮へと続いている。

そして野郎どもの熱気。


 俺は景色がにじんでいくのに気付き、慌てて鼻をすすった。



 野郎どもはすでに毎朝恒例の朝礼のために整列しており、俺はおやっさんとキースに連れられて一段高くなっている壇上にあがった。


 おやっさんは上から野郎どもを見回すと、広間に響き渡るような大声で話し始めた。

「お前ら待たせたな!コイツが話していたクラインの妹のクランだ。部屋はクラインの部屋を使う。しばらくは寮やここで下働きをさせるので遠慮なくこき使ってやってくれ。」

「団長、ちょっといいかい?」


 おやっさんより歳が上で団の中でも最年長のデルトが手を挙げている。

「何だ?」

「思っていたよりだいぶ小さいお嬢ちゃんだが、本当にこの野郎どもの中に入れて大丈夫なのかい?自分の生活費は自分で稼ぎたいって話は聞いたが、まだ大人の世話になって当たり前の歳じゃねえか。大変な目にあったんなら尚更だ。おやっさんとこで過ごしたほうがいんじゃないかい?」

デルトは傭兵団で数少ない所帯持ちでガキもいる。自分とこのガキと俺を重ねてみてるんだろう。


 俺はその気使いを受け取りつつも、おやっさんが口を開く前に腹から声を出して宣言した。


「大丈夫っす!こう見えて根性には自信があります。今までも働いて生活してきたので遠慮は無用っす!クラインにここの流儀は教えてもらっています。どうぞよろしくお願いしまっす!」

言い切ると俺はビシッと頭を下げた。


 広間にどよめきがはしる。

「チビクラインだ…。」という声も聞こえてくる。

つかみはバッチリか?


「ばぁか。お前、自分の名前を名乗ってねぇじゃねえかよ。」

「あれ?」

俺の熱い心意気を伝えようとして、肝心なところを忘れていたようだ。

ビシッと決めたつもりだったのにしまらねぇ!!


 俺は顔が熱くなるのを感じながらさっきより弱々しい声で自己紹介をした。

「…あの、名前はクランといいます…。…よろしくお願いします…。」


 再度どよめきがはしる。

「恥ずかしがる幼女、萌え…。」

おい、今の声だれだよ!? 傭兵団の連中は皆巨乳派だったろうが!


 その後いつもどうりにおやっさんが仕事の振り分けを行い仕事がある奴は出かけ、仕事が無い奴や非番の奴は待機所で世間話をしたり訪れる平民や商人から情報収集など行う。

俺はとりあえず荷物を自分の部屋に運び、軽く荷を片付けてからおやっさんの指示を受けることになった。


 そうして俺は、晴れて新入りとして傭兵団に戻ったのだった。




 やっっっと戻ってきたぜぇぇぇぇぇ!!





最後まで読んでいただきありがとうございました。

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