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赤の仮面  作者: 馬場悠光
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第二章 【康時】

「そろそろ帰るから、窓閉め手伝って」


「分かりました」


 僕は書きかけの原稿を鞄に詰め込むと、椅子から立ち上がり、昌子先輩が閉めている方とは反対側の窓を閉め始めた。


 文芸部に入って約一ヶ月…最初はよく分からなかったこの部活の活動も、昌子先輩のお陰でだんだんと分かるようになっていき、楽しくなっていった。特に、自分自身で世界や人間を創り、それを形にしていく小説の執筆が何よりも楽しい。完成までに時間は凄くかかるけども…


「これでよし…行きましょうか」


「ええ」


 僕達は学校から出ると、一緒に歩き出した。僕と昌子先輩の通学路は途中まで同じなので登校や下校は一緒にやっているのである。


「そういえば、先輩は学校を卒業しての進路はもう決まっているんですか?」


「まあね。どこかの企業にでも入社して頑張るつもり。あなたはどうするつもりなの?進学?それとも就職?」


「先輩と同じで就職ですかね。丁度、僕の家は仕立て屋をしているんで、そこで本格的に修行をするつもりです」


「へぇ…今度、遊びにいっていいかしら?」


 ゲッ…


「え…ええ。いつでもいいですよ…」


 僕は自分の部屋の状態を思い出しながら、無理矢理笑みを浮かべてみせた。


「そうだ。それと、今あなたが書いている小説は文化祭までには完成しそう?」


「ええ、もう三分の二を書き終えた所です」


 文化祭までに中篇の小説を二つと、短くても長くてもいいから詩を三つ作る事。それが僕に出された昌子先輩からの宿題だった。最も、文化祭までにはまだ相当の日数があるので、毎日少しずつ確実に書いていけば余裕で終わらせる事が出来るだろう。


 色々な事を話している内に、僕達は小さな公園に来た。ここでいつも僕達は登校のために合流したり、それぞれの家に帰るために別れるのである。


「それでは、失礼します」


「それじゃあ、また明日」


 昌子先輩の姿が細い路地に入って見えなくなると、僕はたった一人、その場に取り残された。


 ふと公園の桜を見てみると花びらはすっかり散って、緑色の若葉がおい茂っている。気がつかない内に、もうすぐ季節は夏へと変わろうとしていた。


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