第二章 【昌子】
放課後…
けだるい午後の授業が終わり、私は事件の調査を再開した。
これから私が話を聞きに行く相手は、神尾和樹という今年からこの学校にやって来たテニス部の顧問をしている若い先生だ。ただ、二年生の担当であるため、三年生である私には全くと言っていいほど接点はない。おそらく一年生の康時にも。
会った事もない先生だけれど、やっぱり教師が居るのは職員室だろうと思い、私は急いでそこに向かった。
居てほしい…もしも居なかったとしたら部活に行ったのだろうけれど、そこにはあの男もいるだろうから…グラウンドから運動部の部員達の威勢のいい声が聞こえてくる。それが私の不安を一層駆り立てて、足を速めさせた。
職員室の前まで来た。私は目を閉じて、扉に手を掛ける。神尾先生…どうか…
「うわっ」
開こうとしていた扉が引いてもいないのにいきなり開いたため、私は驚きのあまり、情けない声を上げてしまった。反対側にいた誰かが私よりも先に扉を開いたからである。
「大丈夫か?オイッ」
扉を開けたその人物が、心配そうに声を掛けてきてくれた。若い小柄な男性教員である。ジャージを着ている事から運動部の顧問で、これから部活に行く所なのだろう。
「いえ、大丈夫です…それより、神尾和樹先生はいらっしゃるでしょうか?」
こんな所で時間を食う訳にはいかない。私は時間を短縮するために、その男性教員に神尾先生の所在を聞いた。
「神尾って…俺の事だが」
「えっ?」
私は驚くと同時に、どっと安堵に浸かった。良かった…居てくれて。
「俺に何の用だ?」
「はい。仲山さんの件をちょっと調べてるんです」
「ああ!竜一から聞いてるよ。でも調査してるのは霜田っていう男子生徒だと聞いたが」
「私が彼に協力してくれるよう頼んだんですよ」
「そうか、調査を協力してやってくれって言われてるからな。協力してやるよ」
康時が手を回してくれたのだろうか?お陰で赤城の時の様な、めんどくさい交渉がいらなくてすむ。
「ありがとうございます。それでは…」
「言っておくが俺は犯人じゃないぞ。だって、あの事件があった時刻、俺にはちゃんとしたアリバイがあるからな」
「どういったアリバイが」
先生は通行の妨げにならない様に、少し体を横へずらした。
「俺が受け持ってるクラスに一人、不登校の奴がいてな。そいつの家へ行ってたんだよ。一日でもいいから学校に来いってな」
「家庭訪問ですか」
口は赤城と同様に良くはないが、根はいい人のようである。
「他に聞くことがないならもう行くぞ。皆、俺を待ってるだろうし」
そう言って先生は小走りで行ってしまった。
「………」
この事件が解決したら、私もその不登校の人の家へいってみようかな…




