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ガンサバイブオンライン ~コミュ障の元箱入り娘。職業、キラーのおじさん~  作者: くろぬか
4章

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第99話 欲望との向き合い方


 早乙女さんがお泊りに来たその日。

 私の部屋を使ってもらって、こっちはお兄ちゃんの部屋にお邪魔したのだが。

 翌朝、なんだかキリッとした雰囲気で出社して行った二人を見送り……そこから、普通~に数週間ほど経った。

 この期間は特に何事もなく過ごし、ガンサバでも賞金首イベントの話は特になし。

 たま~にお仕事として、賞金首本来の活動が入る程度で、特大戦闘イベントなんかはまだ発生していない。

 と言っても、プレイヤー側の方では他の行事が発生しているみたいで。

 私もサブキャラで他の皆と一緒に参加してみたりもしたのだが。

 よく分からないアイテムとか、武器とか。

 そういうのを手に入れつつ、ここ最近は遊んでばかり。

 リアルの方でもこれと言って変わった事も発生せず、とても平和な日常を過ごしていた訳なのですが。


『今日から、その銃を使って訓練してくれ』


「お、お、おぉ?」


 その日の“6key”での訓練中、兄から急に新しい銃を貰いました。

 コンバートしてみれば、この前お兄ちゃんがくれた“新しいモデルガン”と同じ形のヤツ。

 でもコレ現実でも新商品な上に、トイガン限定のモデルだって言ってなかったっけ?

 だとすると、今度からガンサバでも実装されたりするのかな?

 テストに使うって事は、データ自体は出来上がってるって事だもんね。

 とかなんとか思ってしまったのだが……やけに、真四角なカスタムパーツが装着されているではないか。

 こう言ってはなんだけど、ダサい。

 銃は格好良いのに、追加パーツがとても格好悪い。

 というか、とにかく四角い物体をくっ付けましたって見た目だ。

 バグってココだけグラフィックが表示されてない? とか思っちゃうほどに、四角い。


『気持ちは分かるが、今はソレで我慢してくれ。“向こう方”が今必死にデザインしてくれてる所だからな。一応重さや長さは、予定のソレに合わせてある。性能面でも似た様な仕様になるはずだ』


「あ、もしかして……前に言っていた、私の新しい武器?」


 これに関しては、兄に頼り切りでは不味いと思ったので。

 あの後も色々映画を観て、気に入ったモデルをリストアップしたり。

 こういうカスタムモデルは格好良いと思いました! みたいな意見交換はしていたのだが。

 どれも私の感想をいうだけで、“こういうのを作ってくれ”というハッキリした意見は出せなかったのだ。

 どうやらそれが、私の知らない所で徐々に形になって来ているという事で良いみたいだ。

 流石です、お兄ちゃん。

 とはいえ既に、このハンドガンその物だけでも格好良いんだけどね。

 貰ったモデルガンも、毎日弄り回しているくらいだし。

 やっぱり普段の私には大きいけど、それでも前の銃より握り易くて好き。

 なんかもう作業する時に近くに置いたまま、手が止まる度にカチャカチャと弄っている程だ。

 気に入った玩具を放さない子供みたいで、ちょっと恥ずかしいけど。


『お前の新武器、俺としてはそんな雰囲気で行こうかと思ってるんだが……思う所があれば、早い段階で言ってくれ。特に“使い心地”に関しては、6keyでは初めての銃になるからな。なにより、完成品が届いてからリテイクってのが一番不味い。デザインに関しては、届き次第共有していくから。細かい所でもリクエストがあれば、遠慮なく言ってくれ』


「わ、分かった! 何か気付いた事があったら、すぐ言うね!」


 そんな訳で、これまた新しいハンドガンをゲーム内で握る事になったのであった。

 とはいえリアルでは見慣れた形なので。

 私としては、既にしっくり来ている状態なんだけど。

 でも凄い、銃って本当に色々考えられてるんだなって分かる。

 リアルの私でも、ちゃんとグリップに指が引っかかってるって感じられたのに。

 6keyを使いながら掴んでも、しっかりと指で包み込めて手に馴染んでいるのが分かる。

 むしろ男性サイズで作られているけど、そういうのを拘っていたからリアルの私でもちゃんと掴めたって事なのかも。

 ほへぇ、すげぇ……なんて、間抜けな声を上げつつ新しい銃を弄り回していると。


『夢月、戦闘準備』


「ご、ごめん! 分かった!」


 お兄ちゃんの言葉と共に、ソレを構えて訓練の準備を始めるのであった。

 似た様な銃で訓練を続けていたから、近い性能や特徴だって事は分かっているんだけど。

 なんかやっぱり、新しい物ってワクワクするよね。


 ◆


『second(セカンド)、新しいイベントの企画書には目を通して頂けましたか?』


「えぇ、一通りは。しかし今回は結構時間が空きましたね? 間に他の賞金首イベントを挟まなくて良かったんですか?」


 担当サポーターと話しながら、自室のパソコンに向かって笑いかけてみると。

 相手からは、非常~に大きなため息が聞こえて来て。


『勘弁してくださいよ。“賞金首”のイベントは主軸がどうしたって皆様になるんですから、一回やるだけでも裏方だって滅茶苦茶忙しくなるんですからね? プレイヤーには、それこそネットゲームらしいイベントも必要と言うものです。ついでに言うと、今回は皆様の要望を叶える方にリソースを割いてますから。そっちでもずっと社内はバタバタです』


「ハッハッハ、これは申し訳ない。それで、どんな様子ですか?」


 ユーザーを飽きさせない様にする為の工夫、というモノを常に強いられるネットゲーム。

 しかもプレイしてくれる人たちが多いと言う事は、それだけ責任も重いと言う事。

 なので、こればかりは本当に頭が下がる思いだけれども。


『色々と難点っていうか、そういうのがちょこちょこ発生しましてね? 武装のカスタムとか、デザインを変えるだけって場合はそれほどでもなかったんですけど……問題なのは、銃そのものの新規から実装、他の会社まで巻き込んだコラボ。挙句の果てにはこれまでこのゲームに無かった装備の実装やらバランス調整。“数名”程、厄介な案件が持ち込まれましてね?』


「おっとっと……これは、もしかして私の“回復銃”も含まれていますかね」


『否定はしません。とはいえ、元からあった企画の“切っ掛け”として使わせてもらいましたから。貴方のはそこまで、と言った感じですかね? 問題なのはエイトやファイブの新機能とも言える道具の実装やら、他の面々の他社を巻き込んだ新武器ですよぉ……まぁたプレイヤーからは、アプデが長いとか容量重すぎとかクレームが来ますよ……はぁぁ、終わった後も辛い』


「私で良ければいくらでもお話を聞きますから、今度お茶にでも行きましょうか。お酒でも良いですよ? 存分に愚痴を吐き出して貰えればと思います」


『先生の仕事は賞金首達のメンタルをモニターする事で、我々ではありませんよー? 余分な仕事を、無報酬で受けるのは如何なモノかと』


「失礼な。仕事ではなく、仲間として相談に乗りますよと言っています。ストレス発散の為に騒ぎたい! と言うのなら妻も連れて行きますから、存分に皆で騒いで良いと思いますよ? 日々お疲れ様です、此方としても感謝が尽きません」


 などと雑談しつつ、今回の企画書に今一度目を通す。

 新しい賞金首のイベント、そのプロットとも呼べる議事録。

 やはり今回の目玉は、我々賞金首の新武装のお披露目となる様で。

 コレを一番目立たせる形で……“タッグ”を組んで戦う事になるそうだ。


「まだペアは確定していないという事みたいですね」


『そっちはまぁ、個人にも確認してって工程を踏みませんと。あくまでも仕事ですし、くじ引きで適当にって訳にはいきませんから。学校の行事とは違います。この結果次第で、皆様の“価値”を大きく左右するイベントになりますので。我々も、かなり慎重に動いておりますとも』


 この辺りは会社なのだから当然だろう。

 新しい武装、新しいイベント。

 だからこそ、全ての賞金首を目立たせ今後に繋げる。

 その為の組み合わせを検討し、よりユーザーを引き付ける“戦闘”を繰り広げる事が絶対条件。

 こうなってくれば、運営側は慎重にならざるを得ない。

 そして我々賞金首に“中身”が居るからこそ、データだけでは処理できない内容となって来るのだろう。

 こういう意味もあって、私には先に資料を見せてくれたと言う事なのだろうが。


「仮の予定表を見る限り……私とシックスが組む可能性が高い様ですね。こちらは私の要望を通して頂いたという形ですか?」


『それもありますが、当然それだけじゃありません。技術や戦闘能力的に見て、この組み合わせが良いのではないかと検討している状況ですね。先生ですから正直に言いますけど……second(アナタ)は、賞金首の中でも最弱と言っても良い』


「えぇ、自覚しております」


『しかし今回の新武器で、完全なるサポート役が可能になったんですよ。なので“生存”に特化しているシックスと組ませるのが、一番効率が良いのではないかと考えた次第です。放っておいても勝ち残りそうな賞金首ですが、回復役が居れば最後まで最高の立ち回りが出来るのでは? と。そして新機能である先生の武器は、ハッキリ言って存在そのもので目立ちますから』


 なるほど、そういう考え方もあるのか。

 6keyの生存力という意味では、他の面々に比べても突き抜けた才能と言える部類だ。

 例えボロボロになろうとも、絶対に最後まで立っているキラー。

 映像にすれば主人公の様に映るが、それが実際に戦場へと現れれば死神に代わる存在。

 その傷さえも私が新武器で癒し、他の様々なサポートも受けて、より戦いやすい戦場を作る。

 これが叶えば、確かに最強のタッグとなり得るかもしれない。

 タッグ戦だというのに、攻撃役を全てシックスに任せてしまう情けない状況にはなってしまうが。


「ちなみに……シックスの新武装。こちらは彼女本人が、ちゃんと“我儘”を言った結果ですか?」


『え? あぁ~いえ、違うと思います。6keyさんのサポーターは、御存じの通り彼女のお兄さんですから。しかも滅茶苦茶凄腕で、最近は気持ち的にも凄いんですよ。あの雰囲気からして、多分サポーター側が全力で用意している感じだと思うんですけど……』


「そうですか……」


『先生? 何か気になる事が?』


「いえ、二人の関係性を詳しく知りませんから、私が口を挟む事ではないでしょう。しかし……」


 彼女本人が望み、これをサポーターであるお兄さんが叶えようとしている。

 この状況が、一番望ましかったのは確かだ。

 一度会っただけでは、やはり白川 夢月という少女の事を知るには情報が少な過ぎるが。

 彼女の雰囲気や、態度。

 そして視線の動きや仕草を見て……どうしても、思ってしまった事があるのだ。

 この子は、欲望を晒すのがとても下手な女の子なんじゃないかと。

 環境なのか、それとも本人の性格からなのかは分からないが。

 もしも今回の要望が、彼女の独断であるなら少しは安心出来た。

 それくらいに、強い意思を発揮できる場所があるという証明なのだから。

 しかしそうではなく、これすらもあの子のお兄さんが用意しようとしているという話なら。


「少しばかり……ゲームとは切り離して診てあげた方が良さそうですね」


『そうやってまた自分から仕事を増やして……奥さんに怒られますよ?』


「ハハハッ、それこそ耳が痛いですね。とはいえ、あんな若者が“勘違い”で自らを蔑ろにしていると思うと……とても、勿体ないと思ってしまうんですよ。おやじ臭いお節介ですけどね」


 そんな事を言いつつ、珈琲を口に運ぶのであった。

 よくある話だ。

 自らの魅力を否定してしまい、自らを貶める方向に思考が向かってしまう。

 しかし周りに気を使う事ばかりを意識して、覆い隠した心に自分自身で気が付かない。

 そういう人達程、私達の様な存在が必要なのだろう。

 アナタは素晴らしい人だと、ちゃんと教えてあげる為にも。

 そうじゃないと……本当に“勿体ない”って、そう思ってしまうのだ。


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